◆◆<9>ピピナナ◆◆
しかし、金銀財宝の奪取も少しずつではあったが進んでいた。
網でひと纏めにされた財宝の一部は既に船上に積み出されている。
後はクレーンで引っ張って飛行空母に取り込めばよい。
「健!」
ジョーは健に目で合図した。
健は黙って頷くと、投げていたブーメランをパシッと手に取った。
「ジュン、甚平はここで財宝の奪取を食い止めろ!俺はG- 2号と船上に出る!竜はゴッドフェニックスへ戻れ!」
健は藪原と美美卯の手前、敢えてジョーの事をG- 2号と呼んだ。
「行くぞ、G- 2号!」
「おう!」
3人は脱兎の如く、駆け出した。
「待って!私も行く!」
闘っていた美美卯であったが、2人の後を追おうと身を翻した。
「あなたは駄目よ!危ないわ!」
ジュンが美美卯の腕を掴んで引き留めた。
「どうして?!あなただって私と同じ歳で闘ってるじゃない?!」
美美卯はジュンの手をふりほどくと、3人の後を追った。
「待って!」
ジュンもすぐに美美卯の後を追おうとしたが、そこへギャラクターの隊員達が襲ってきて邪魔された。
「俺が美美卯を止める!君達はここを守ってくれ!」
藪原は言うが早いか、駆け出した。
早くも美美卯の姿は見えない。
「全く、あのお転婆娘め…。」
藪原は呟きながら走った。
藪原は船上に出ると、辺りを見回した。
上空にはギャラクターの飛行空母があった。
そこから隊員達がわらわらと降りて来るかたわら、クレーンの触手が伸びていた。
見ると、科学忍者隊の3人は二手に別れていた。
一人は近くにあったゴッドフェニックスに飛び乗った。
たぶん、竜と呼ばれた若者だろう。
残る2人は財宝がクレーンに繋がれるのを阻止していた。
そこへ美美卯が駆け寄って行く姿が見えた。
「美美卯!」
呼んだが、振り向く美美卯ではない。
科学忍者隊の2人に加勢するとばかりに闘い出した。
「おめえ、何しに来た?!」
「私だって、あの女の科学忍者隊くらいには役に立つわ。」
自信満々に美美卯が微笑んだ。
「危ねえ!」
美美卯の後ろから襲おうとした隊員をジョーは羽手裏剣で仕留めた。
「言わんこっちゃねえ。」
ジョーは美美卯を睨み付けた。
「ありがとう、G- 2号。」
ふふふ…と、美美卯は含みのある笑いを洩らした。
「G- 2号、何をしている!財宝が取り込まれてしまうぞ!」
見ると、今まさに財宝を入れた網がクレーンで引き上げられていた。
健はブーメランを飛ばした。
同時に、ジョーもエアガンのワイヤーを伸ばした。
それは財宝を吊り下げている鎖の同じところに当たり、鎖がちぎれてしまった。
しかし、網も破れてしまい、金の延べ棒やら宝石類がバラバラと飛び出した。
それは空中にあったため、海の中へと吸い込まれていく。
「あっ!財宝が!」
健が叫んだが、後の祭だった。
キラキラと光を放ちながら財宝は海の中へと消えていく。
「綺麗ねー。」
美美卯が闘いの手を止めて、見とれながら呟いた。
「そんなのんびりした事を言ってる場合じゃねえぜ!」
ダダダダダッと飛行空母から機銃掃射が掛けられた。
ジョーはタックルするようにして美美卯を庇った。
財宝の奪取に失敗したカッツェが、この客船ごと科学忍者隊を海の藻屑にしようとしているのだ。
「G- 2号、ゴッドフェニックスに移れ!あの空母を叩くぞ!」
健が叫んだ。
トッブドームへと跳躍しようとしたジョーに美美卯がしがみついてきた。
「私も連れてって!」
「止めるんだ、美美卯!」
藪原がそれを制した。
「邪魔になるだけだ。」
「私だって役に立つわ!」
美美卯は頑として聞き入れない。
もしかしたら、先程会ったジュンにライバル心を燃やしているのかも知れない。
「じゃあ、美美卯も来い。」
それを察知したジョーは言った。
少しは危険な目に遇わないと、美美卯のお転婆は治らないと考えたのだ。
「ヤブ、お前もだ。」
「俺も…?」
「ああ、ここにいても危険だからな。」
「よし、飛ぶぞ!」
健が言った。
ジョーが美美卯を、健が藪原を抱えて跳躍した。
4人はトッブドームから素早くコックピットへと移った。
「遅かったぞい!」
飛行空母が攻撃を仕掛けてきていたのを、竜がそれを避けながら言った。
ゴッドフェニックスが大きく傾いた。
ジョーと健は慣れているので、足を踏ん張ったが、藪原と美美卯は床に転げてしまった。
「乱暴ね!」
「これくらいの事でねをあげたのかい、美美卯?」
ジョーがニヤリとしながら言った。
「失礼ね!何よ、これくらい!」
美美卯がキッと唇を固く結んで言った。
「ジョー、バードミサイルだ!」
健が叫んだと同時に、またゴッドフェニックスが轟音と共に、大きく傾いた。
「健、やられたぞい!」
至近距離からミサイルを受けたので、ゴッドフェニックスは強か衝撃を受けていた。
急降下していく。
「ジョー、早く!」
「わかってる!」
ジョーはバードミサイルの発射ボタンの前に立った。
スクリーンにはスコープが現れたらが、ゴッドフェニックスが急降下しているために、なかなか照準が定められない。
「何をしている、ジョー!」
健が再び叫んだ。
その時だった。
ジョーに美美卯が体当たりをしてきた。
そして、めくらめっぽうにバードミサイルの発射ボタンを押し始めた。
何発もバードミサイルが発射されたが、そのどれもが飛行空母には当たらない。
「竜、急速上昇!」
ジョーが態勢を立て直して叫んだ。
そして、美美卯の手を取ると言った。
「美美卯、バードミサイルってのは、こうやって撃つんだぜ。」
そのまま、美美卯の指の上に自分の指を重ねて、スコープを睨み付けた。
「今だ!」
バードミサイルの発射ボタンが押された。
バードミサイルはしゅるしゅると線を描きながら飛んで行き、飛行空母へと命中した。
「やったわ!」
物凄い轟音と共に、飛行空母が爆発した。
バラバラとその機体の欠片が海の中へと落ちていく。
「危ねえところだったぜ。」
ジョーが冷や汗を拭いながら言った。
「私がやったのね?私がミサイルを撃ったのよね?」
美美卯が嬉々として言った。
「見てごらんなさいよ。私だって役に立ったじゃない。」
得意満面の美美卯を見て、ジョーは少しばかり後悔した。
美美卯に手を添えて、バードミサイルを撃たせるんじゃなかった。
かえって、美美卯に自信を持たせる結果になってしまった。
それを見ていた藪原はニヤリと笑った。
「とんだ事になったな。」
このままでは、自分も科学忍者隊に入ると言いかねない。
「私、決めたわ!」
それ来たとばかりにジョーは首を竦めた。
だが、美美卯は意外な事を言い出した。
「私、G- 2号と結婚するわ!」
これには、ジョーも藪原も健も驚いた。
「おい…。」
ジョーは開いた口が塞がらない。
美美卯はジョーの傍らに立つと言った。
「G- 2号、あなたジョーでしょ?」
「何の事だ。」
ジョーはしらばっくれた。
「ううん、あなたはジョーよ。でも、どっちでもいいわ。私はあなたと結婚するわ。言ったでしょ?私、強い人が好きだって。」
ジョーは言葉に詰まった。
この状況を打破する方法を考えたが、思い付かない。
「ね?いいでしょ?」
美美卯はジョーの腕に自分の腕を絡ませてきた。
「おい、やめろ…。」
先程まで、伸びやかに闘っていたジョーであったが、こと女性を相手にするのは弱いらしい。
「いいじゃないか、G- 2号。」
「そうだな。」
健と藪原が笑いを噛み殺しながら言った。
美美卯をどうやって諦めさせるか、途方に暮れるジョーであった。
〜the end〜
★今回のコラボの感想★
(コラボ期間:2014.08.14〜09.17)
<ピピナナ>
早いもので、真木野さんとのコラボは3作目になりました。
私どもの作品を読んで頂いて、ありがとうございます。
楽しい時間は、あれよあれよという間に過ぎていきます。
コラボの事を考えている時もそうです。
次々とアイデアが浮かんだり、逆に、うんうん唸ってもなかなか文章が進まなかったり。
でも、真木野さんとのコラボは楽しいし、勉強になります。
今回はアクションシーンが多かったのですが、真木野さんを見習って私も少しだけど挑戦してみました。
私の回はアクションシーンがイマイチで拙いので、すぐにわかると思いますが…。(^_^;)
次回は、いつになるかわかりませんが、楽しい作品を書きたいと思います。
頑張りますので、皆様、期待していて下さい!
<真木野聖>
今回のコラボは、私の個人的な理由により、ピピナナさんが遠慮されて最終回の入力を遅らせて下さっただけで、実際には8月中に出来上がっていました。
ピピナナさん、お気遣いに感謝致します。
今回はお互いに1人ずつキャラを出してみよう、と言う事で考え始めましたが、私のキャラ藪原は、ピピナナさんの個性的なキャラ、美美卯にすっかり個性負けしています。
この辺りがピピナナさんの凄い処だな〜といつも感心しています。
また胸をお借りしたような気分です。
最終回も上手く纏めて下さり、有難うございました。
次回はリベンジしたいものです。
もっと個性的なキャラクターを作れるようにならなくては。
本当にこの点については、全くピピナナさんに敵いません。
ピピナナさんは『人物像を掘り下げる』と言う前回の目標をクリアしていますからね。
今度は横で驚いているばかりじゃないキャラを作らないとなぁ……。
頑張ったのはアクションシーンだけ、と言う結果に、只今猛省中です。