ピピナナ&真木野聖コラボレーション企画 第4弾

『Twitter DE コラボ』
  〜ピピナナ&真木野聖 作〜

◆◆<1>ピピナナ◆◆
ちっ。また雨だ。
ここのところ、毎日だ。
今日は降らないんじゃなかったか?
だからサーキットに行くつもりでいたのによ。
濡れた走路を走るのも一興ってか?
まあそれも面白いかもな。
タイヤがスピンして、お前がきゃーきゃー言うのが目に浮かぶぜ。
よし。じゃあ出掛けるとするか。
★2017.06.30★

◆◆<2>真木野聖◆◆
愛車に乗り込みエンジンを掛ける。
こいつも当然とばかりに俺の右側のシートにちょこんと身を預け蹲った。
俺のトレーラーハウスに何時の間にか住み着いてしまった雌猫だ。
飼うつもりはなかったんだが。
G−2号を颯爽とスタートさせると、こいつはシートに這いつくばるかのようにしがみ付いた。
★2017.07.01★

◆◆<3>ピピナナ◆◆
だがそれも一時の事だった。
今は何事もなかったように、「にゃあ」なんて鳴いてやがる。
それどころか、いっぱしのナビ気取りだ。
全く、猫ってヤツはこれだからなあ。
俺はわざとハンドルを荒く回して見た。
雌猫はちょっとビックリしたようだったが、なんと、俺の膝に乗ってきやがった。
★2017.07.01★

◆◆<4>真木野聖◆◆
アクセルを踏むには邪魔なんだが。
俺はこいつの背を右手で掴みナビシートに移動させた。
雨が激しくなって来て俺が作った轍に水しぶきが音を立てて上がって行く。
明日晴れたら洗車してやらなければならねぇな。
サーキットに着くと俺はコース内を周回し始めた。
まるで俺専用のコースのようだ。
★2017.07.01★

◆◆<5>ピピナナ◆◆
俺は気分良くアクセルを踏み込んだ。
コースの景色が次々と後ろに飛んで行く。
いつしか鼻歌がついて出て来ていた。
だが、それもヤツに邪魔された。
雌猫はまたもや俺の膝に乗り、あろう事か、肩へとよじ登って来た。
そこで、俺は「おや?」と思った。
こいつ、ちょっと変だぞ。
★2017.07.01★

◆◆<6>真木野聖◆◆
こいつは何かに怯えていやがる。
さてはギャラクターか?
いや、違う。
全く気配は感じねぇ。
そうか!フロントガラスに跳ね上がる水しぶきを怖がっているのか。
何てこった!
こんな奴を乗せて来るんじゃなかったぜ。
だが俺はまだ走り足りねぇ。
肩の上の猫は放っておき、アクセルを踏んだ。
★2017.07.01★

◆◆<7>ピピナナ◆◆
だが、肩の上の猫があまりに怯えやがるんで、俺は仕方無くピットへと愛車を停めた。
全く、このでぶ猫め!
いや、違う。
ただのでぶ猫じゃねえ。
お腹の辺りが異様に膨らんでいる。
もしかして、こいつは子猫を身籠ってるのか!
怯えているんじゃなくて、産気付いたのかもしれねえな。
★2017.07.01★

◆◆<8>真木野聖◆◆
こいつは俺のメカを出産場所と勝手に決めやがったな!
猫の出産なんか見た事がねぇ。
どうすりゃいいんだ?
とにかくメカから出さねぇとな。
俺は猫を抱いて取り急ぎサーキットの事務所に連れて行く事にした。
だが、こんな所に獣医なんている筈がねぇ。
えっ?俺が出産を手伝う事になるのか?
★2017.07.01★

◆◆<9>ピピナナ◆◆
とにかく、こいつを事務所に連れて行くのが先決だ。
俺は猫に向かって手を伸ばした。
だが、猫は気が立ってるのか、猫パンチを繰り出して来た。
どうにも手が出せねえ。
弱ったぜ。
そうこうしてる間に猫は破水した。
よし!
俺はこいつの出産に立ち会う覚悟を決めた。
どうにでもなれ!
★2017.07.02★

◆◆<10>真木野聖◆◆
俺は取り敢えずバスタオルにこいつを包んで土砂降りの中を事務所に駆け込んだ。
どうやら陣痛がいよいよ激しくなって来たらしい。
落ち着きがなく、俺の腕の中で手足をバタバタさせている。
事務所には親しいスタッフがいた。
出産間際の猫を持ち込んだ俺に驚いたが、奥から段ボールを出して来た。
★2017.07.02★

◆◆<11>ピピナナ◆◆
俺が猫を段ボールに入れてやると、落ち着いたのか、暫くして猫は出産した。
可愛らしい子猫が4匹。
母猫によく似た子猫が2匹。
おそらくは父猫に似ただろう子猫が2匹。
俺は凄く感動していた。
生命が生まれる瞬間に立ち会えたのだから。
尊い生命。
大切にしてやりたいと思う。
★2017.07.02★

◆◆<12>真木野聖◆◆
さてこの仔猫達をどうするか?
俺は暫く考え込んだ。
出産の感動も味わわせて貰ったが任務のある俺には飼う事は出来ねぇ。
取り敢えず事務所で預かって貰って里親に出すか。
だが夜中には人がいねぇぞ。
任務がない限り俺が見る事にするか。
俺はトレーラーハウスを取りに一旦森に戻る事にした。
★2017.07.02★

◆◆<13>ピピナナ◆◆
俺は森に戻る愛車の中で考えた。
あの子猫達に名前をつけてやらねえといけねえな。
おっと、その前に母猫の名前が先か。
そこで俺はハタと気が付いた。
いけねえ!
すっかり飼う気でいるじゃねえか。
だが出産に立ち合ったせいか、あの子猫達の可愛さはひとしおだ。
やっぱり飼うか…?
★2017.07.02★

◆◆<14>真木野聖◆◆
その時ブレスレットに通信が入った。
博士の指令だ。
駄目だ、やっぱり俺には飼えねぇ。
俺はステアリングを切って行先を変えた。
バード・ゴー!
すぐさま俺と共にメカが単座のフォーミュラカー状に変化した。
俺は思い知らされた。
こんな普通の事を考えられるような立場に自分がいない事を。
★2017.07.02★

◆◆<15>ピピナナ◆◆
任務はすぐに終わった。
俺は思い切って猫の親子の事をみんなに話してみた。
それならウチで飼うわとジュンが申し出た。
いや、おめえも任務があるだろう?
どうするつもりだ?
ジュンはふふふ…と悪戯っぽく笑った。
何か考えがあるようだ。
おいら達に任せなよ!と甚平も同意した。
★2017.07.02★

◆◆<16>真木野聖◆◆
店の客に里親になって貰うだと?
飼うって言ったじゃねぇか!
あたしはずっと飼うとは言ってないわ、とジュンが言い放つ。
成程な。
それなら預る事も出来るだろうぜ。
まあいいだろう。
俺はサーキットに引き返し事務所に寄った。
先程生命の奇跡を見せてくれた猫が仔猫共々いなくなっていた。
★2017.07.02★

◆◆<17>ピピナナ◆◆
すみませんと事務所のスタッフが申し訳なさそうに言った。
聞くところによると、たまたま来ていたレースのスポンサー会社の社員が段ボールごと持って行ったらしい。
レース場に猫はいらないと言っていたという。
もしかして殺処分にするつもりじゃねえだろうな!
俺は急いで後を追った。
★2017.07.02★

◆◆<18>真木野聖◆◆
目指す車はすぐに見つける事が出来た。
俺は追い付いてその車の前に入り、左手を振って停めた。
先方も俺の車を見知っていたらしく素直に停まった。
まさかとは思うが、と前置きして俺は訊ねた。
すると意外な事にそいつの家で仔猫が生まれて里親に出したら子供達が泣いて困っていたのだ、と言う。
★2017.07.02★

◆◆<19>ピピナナ◆◆
だから、どうか引き取らせてもらいたいと言うのだ。
俺は渡りに舟だと思った。
見たところ温厚そうな男だ。
猫の親子にとっても野良猫でいるより、飼い猫でいた方がいいに決まってる。
エサに困る事がねえからな。
俺は快諾した。
元気でな。
これからは幸せに暮らすんだぞ。
★2017.07.02★

◆◆<20>真木野聖◆◆
俺はスナックジュンに戻って事の次第を説明した。
ジュンも甚平も納得してくれた。
これで大団円だ。
取り敢えずホッとした。
そこへまた出動命令だ。
気掛かりな事が消えたので、安心して任務に当たる事にした。
処が何と敵のメカがサーキット近くに出現したと言う。
仔猫達は大丈夫だろうか。
★2017.07.02★

◆◆<21>ピピナナ◆◆
まさかまだサーキット付近にいるとは思わなかったが、俺達は急いで現場に行った。
メカ鉄獣が思う存分暴れていやがった。
辺りを見回したが、車らしきものは見当たらない。
良かった、もう猫の親子は新しい家へと行ったようだ。
が、しかしメカ鉄獣の手を見ると、車が掴まれているではないか!!
★2017.07.02★

◆◆<22>真木野聖◆◆
サーキットのある街は雨上がりで美しい虹が出ていた。
そんな中でメカ鉄獣が片手に車を掴んで暴れ回っている。
あの車には見覚えがあるぞ!
間違いなく猫達を乗せた車だ。
俺はムカデ型の鉄獣の目にバードミサイルをお見舞いしようと赤いボタンに近付いた。
健が邪魔しようとしてもやってやるぜ!
★2017.07.02★

◆◆<23>ピピナナ◆◆
ムカデ型の鉄獣は車を抑えつけるように掴んでいる。
このままじゃ、ミサイルの爆発で車も吹き飛ばされかねない。
俺はまず車を鉄獣から引き離す事にした。
どうすればいいのか…。
と、そこで俺はある事を思い付いた。
俺はコックピットから飛び出し外へと出た。
そして鉄獣に向かって行った。
★2017.07.03★

◆◆<24>真木野聖◆◆
俺はゴッドフェニックスの先端のGー2号に乗り込んでそのままガトリング砲で鉄獣の手首を狙おうとした。
甚平も自分のメカで落ちる車を網で掬う為にメカ分身した。
誤ればあの温厚そうな男と猫達が死んでしまう。
断じて失敗は許されねぇ。
此処でのミスは射撃の名手として自分が絶対に許せねぇ!
★2017.07.03★

◆◆<25>ピピナナ◆◆
俺は、鉄獣の腕の根元に照準を合わせた。
少しでも車が爆発の影響を受けないように配慮したのだ。
甚平も準備万端に網を広げて待っている。
よし!今だ!
俺は引き金を思い切り引いた。
鉄獣の腕がちぎれて落ちていく。
そこを甚平が上手い事、車を掬った。
俺は一息ついた。
★2017.07.04★

◆◆<26>真木野聖◆◆
鉄獣はムカデ型の癖に直立している。
車は無事に道路に降ろされ、あの男が感謝のつもりか手を振っている。
早く行け!俺の叫びが聞こえたかどうかは解らねぇが車はUターンして行った。
俺は安心してコックピットに戻った。
バードミサイルで攻撃してやる!
だが健は鉄獣の中に突入すると言った。
★2017.07.05★

◆◆<27>ピピナナ◆◆
何だと?
バードミサイルで木っ端微塵にした方が早いじゃねえか。
俺は健が制止するのも聞かずに、赤いボタンを押した。
ミサイルは鉄獣の心臓部に命中し、吹き飛んだ。
やったぜ!
カッツェが飛行船で逃げていく。
今回は大目にみてやるぜ。
いつもなら、追い掛けて行くところだが。
★2017.07.05★

◆◆<28>真木野聖◆◆
メカの中に潜入してカッツェの奴を追い詰める作戦だったんだぜ、と健。
ケッ!今更言われてもよ。
だが今から追ってももう遅い。
次の機会には徹底的に追い回してやろうじゃねぇか。
とにかく次にサーキットに行った時にあの5匹がどんな風に暮らしているか訊いてみる事にしよう。
一件落着かな。
★2017.07.06★

◆◆<29>ピピナナ◆◆
数日後、サーキットに行くとあの男がいた。
俺が訊く前に、猫達がどんなに可愛いか話し掛けてくる。
親子共々幸せに暮らしてるんだな。
例え猫でも命を助けられた事に俺はホッと安心した。
へっ。
俺とした事が、柄じゃねえかな?
そう思いながら、俺はサーキットを後にした。
★2017.07.06★







★今回のコラボの感想★
  (コラボ期間:2017.06.30〜07.06)

<ピピナナ>

皆様、お読み頂きありがとうございました。
事の発端は、私が「またコラボしたい!」という我が儘でした。
それを真木野さんは心良く引き受けて下さり、コラボのスタートとなりました。
140文字という制限のある中、一体どれだけの文章が書けるかわかりませんでしたが、とにかくやってみよう!と始めたのでした。
私はただ「楽しい!」という気持ちで一杯で、真木野さんを振り回してしまいました。
手前味噌ですが、何とか上手く纏まったのは真木野さんのお力によると思います。
また第2弾、第3弾と続けて行きたいと思いますので、良かったら読んでやって下さいね。


<真木野聖>

ピピナナさんから「またコラボをやりたいですね」とお話を戴いたのが、今回の『Twitter DE コラボ』企画の始まりでした。
それならTwitterでリプライしながらやってみませんか?と言う私のご提案を飲んで戴き、書く事になりました。
全く書けなくなっていた私も、140文字なら書けた!
ゆっくりペースで進めるつもりが、早々と進んでしまいました。
お互いに楽しみ乍ら書かせて戴きましたので、とても嬉しい出来事でした。
ピピナナさんは思いも寄らない話の展開を思いつかれるので、私はついて行くのが大変でしたが、この話が楽しく終わったのは何よりもピピナナさんのお陰です。
感謝申し上げます。
今回は書き出しと纏めと両方をお任せしてしまいましたが、何とか纏まる物なのですね〜。(^-^)
近い内にPart2を展開する事になるかと思います。
その際はまたお楽しみ下されば幸いです。
お読み下さって有難うございました。








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