『忍者対忍者』

「ジョーの兄貴ィ。何だろ、これ?」
竜をゴッドフェニックスに残し、健とジュン、ジョーと甚平の二手に別れて隠密行動を行なっていた。
メギレス国に度々現われる黒い影が、人々の生活を脅(おびや)かしていると言う国連軍諜報部からの情報を元に南部博士からの指令が出たのだ。
4人はバードスタイルを解いて、市井の人々の中に潜り込んでいる。
ジョーと甚平は、倒れている人々の傷口を見ていた。
そんな折、甚平が拾って見せたのは、十字型をした鉄片だった。
大きさは5cm程度か。
十字の先の部分が鋭角に研ぎ澄まされていた。
「これは…、もしかすると手裏剣かもしれねぇぜ。
 それならこの傷口にも納得が行くってもんだ…。
 こんな物が落ちている街なんて、どうにもきな臭ぇな…」
「手裏剣?ジョーが使っているような?」
「そうだ。昔忍者が使っていたとされる投擲(とうてき)武器だ。実際に残存しているからな」
「あ!ジョーが訓練中にイメージ映像として見せられていた映画の中にもこんなのがあったね!」
「ああ…。そう言う事だ。この街には忍者のような組織が存在しているのかもしれねぇ…」
『ジョー。そっちはどうだ?』
健からの通信が入った。
「今、甚平が見つけたんだがな。手裏剣らしき物が道に落ちていたんだ。
 これはもしかすると…」
ジョーが言い差した処へ、健が『あっ!』と叫び、戦闘態勢に入ったらしい物音がブレスレットから聞こえて来た。
「甚平!何かあったようだ。急ぐぞ!」
ジョーは甚平を促し、発信地点へと急いだ。

ジョーと甚平が見たものは、まさしく黒装束の忍者に襲われている健とジュンだった。
ジョーは羽根手裏剣を、甚平はアメリカンクラッカーを投げて、2人に加勢した。
「街を混乱に陥れていたのは、こいつらか…」
ジョーは言い乍ら身を低くして、手裏剣の攻撃を避けた。
彼の頭を掠めて、後方の建物にカカカっと手裏剣が刺さった。
「これ位の攻撃を見切れなければ、羽根手裏剣の遣い手とは言えねぇのさ!」
そのままの姿勢から3階建ての建物の上へと跳躍する。
健、ジュン、甚平も同時にジャンプしていた。
しかし、敵も然るもの、同様の動きで追い付いて来た。
「どうやら、特別な訓練を受けた本格的な忍者隊のようだな」
健が呟いた。
「気をつけろ!ただの忍者とは限らねぇ。ギャラクターに属しているかもしれねぇぞ」
健と背中合わせになったジョーが全員の注意を喚起する。
4人はバードスタイルになるタイミングを計った。
それぞれが建物から落ちて遣られたと見せ掛けながら、変身した。
「健!こいつらの動きを良く見てみろ。パターン化してると思わねぇか?」
「ああ、俺も今それを考えていた」
「そうね…。訓練された忍者である事には間違いないと思うけど…」
肉弾戦を繰り広げ乍らも、敵の動きを分析する余裕が彼らにはあった。
「ちょっと待ってろ!」
ジョーは素早く羽根手裏剣を唇に咥えると、我が身を囮にして敵の注意を引いた。
羽根手裏剣を1度だけ華麗な動きで投げると、それは狙い違わず敵の左眼に突き刺さった。
「あ!こいつら人間じゃないっ!」
甚平が叫んだ。
「やっぱりな…」
ジョーが呟いた。
羽根手裏剣が刺さった左眼からはシューシューと音を立てて、白い煙が出始めていた。
「爆発するぞ!」
健が逃げろと呼び掛けた。
すぐに全員が別の建物の屋上へとジャンプして爆発を逃れる。
爆発に気を取られている間に、敵の忍者隊が集まり始めた。
「あ!忍者が合体して行くわ!」
「こいつら鉄獣メカの一部だったって訳か!?」
合体して行く黒装束を見上げながら、ジョーが呻いた。
「竜!ゴッドフェニックスですぐに来てくれ!」
健がブレスレットに向かって叫んだ。

ゴッドフェニックスが到着すると、4人はすぐにトップドームに向かって跳んだ。
「おい、忍者が合体した鉄獣メカだ。何が出て来るか解らねぇ。注意して掛かれよ!」
「解っとる。解っとるわい!」
竜は彼らの会話をブレスレットから聞いていたのだ。
状況は大体飲み込めていた。
「機首を90゜に上げ全速上昇!」
健の指示が飛ぶ。
「まずはあいつの弱点を探そう。竜、距離500を保ち乍ら旋回してくれ!」
「ラジャー!」
竜が指示通りに操縦桿を操る。
忍者が合体して完成した鉄獣メカは手裏剣型の大きな飛行物体になっていた。
鋭い刃(やいば)を持ち、高速で回転してゴッドフェニックスを掠めるように飛んで来る。
「あの速さでは、超バードミサイルも跳ね返されてしまう」
健が腕を組んで眼を伏せた。
「健!どうするんじゃ?」
竜が後ろを振り返る。
「………………………………………」
健は無言で腕を解かずに考え込んでいる。
「健!奴の下へ回って中心部分を狙ったらどうだ?
 間合いを上手く計れば出来ねぇ事じゃないぜ。
 下からなら街に被害は出ねぇ筈だ」
並んで特大手裏剣の動きを睨むように見つめていたジョーが言った。
「そうか!高速で回転しているとは言え、中心の部分は台風の目のように一定している筈だ!
 ジョー、良く見抜いてくれたな」
「手裏剣の事なら任せておけよ」
ニヤリと笑ったジョーは、超バードミサイルのスイッチの前に立った。
「俺にやらせろよ!」
「ああ。竜!高度5000まで上昇し、敵を引き付けておいてから、急下降して真下から攻撃する!」
「ラジャー!」

百発百中のガンマン・ジョーの狙いは正確だった。
超バードミサイルが敵メカの中心を貫いて行った。
「やったぁ!」
甚平が飛び上がった。
「これでこの街の人々を混乱に陥れていた忍者も一掃出来たな」
健がジョーに手を差し伸べて来た。
固い握手を交わす。
科学忍者隊のリーダーとサブリーダーは、時には反撥し合う事もあるが、お互いの力を認め合っている。
この2人が磐石であれば、ジュン、甚平、竜が加わった5人のチームワークで、いつかきっとギャラクターを壊滅させる事が出来るに違いない。
今は地道に闘って行くしかないのだ。
ジョーと健はお互いにギャラクターへの復讐心に満ちているが、その方向性は違っている。
しかし、最終目的は全員一致している。
爆発して塵と消えた手裏剣型メカ鉄獣を見詰め乍ら、5人はその決意を新たにしていた。




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