『消費期限』

ゴッドフェニックスの中には、任務が長引いた時の為の保存食が常備されている。
今日はこの保存食の消費期限が切れそうだとの事で、科学忍者隊の5人にそれが分け与えられた。
賞味期限と消費期限は言葉が似ているが意味合いが違うと言う事は周知の通りだ。
「こんな物をごっそり貰ってもな…」
全員その荷物を持って『スナックジュン』に集まったのだが、早速甚平が零(こぼ)した。
「兵士は兵糧の事をとやかく言うもんじゃねぇって言うがな…。
 甚平じゃなくても、愚痴りたくなるぜ。
 どうやってこいつを腹に収めろって言うんだ?」
さすがのジョーもこれには閉口した。
「1人頭1週間分の保存食を消費期限の1週間前に渡されてもねぇ…」
ジュンも困り顔だ。
「これからの1週間、これだけを食べて生きろって言うんかいのう?」
竜もぼやいた。
「お世辞にも旨いとは言えないもんな…」
と再び甚平。
「いや、これを食べて闘う事が無かった事に寧ろ感謝すべきだろう」
リーダーだけが別の感想を述べた。
「そいつは確かに正論だが…、だがよぉ!」
ジョーが噛み付いた。
「……俺達に押し付けるなら、せめてもう少し早く寄越せばいいじゃねぇか」
「んだ。ジョーの言う通りじゃわ。任務中なら文句は言わないがのう」
「でも、これを無駄にする訳には行かないわね」
「兄貴、全部持って行くかい?」
甚平が上目遣いで健を見た。
「ほう!それは名案だぜ」
ジョーが指を鳴らした。
「オケラの健も食費が浮いて助かるだろうよ。
 ジュンもその分店のツケが上乗せにならなくて助かるんじゃねぇのか?」
「まあ、ジョーったら!」
ジュンが笑った。
「その話に危うく乗り掛けたわよ。でもさすがにこれを全部健に押し付けるって言うのは無理があるわね」
「じゃあさあ!お店に来た人に分けちゃえば?」
「甚平、冴えてるじゃねぇか。金を取らないで『分けてやる』分には問題ないだろうぜ」
「そうね。災害用の予備だと言えばいいんだものね」
「俺は少しストックとして貰って行くぜ」
健が立ち上がって、自分の分の保存食から半分をカウンターの上に置いて、残りを持ち帰った。
「やっぱり兄貴は生活に困ってるんだね」
「ギャラクターにあれだけ恐れられているガッチャマンが生活苦だなんてな…」
ジョーが肩を竦めた。
「さて、俺はこいつを全部この店の客に寄付するぜ。ガレージにでも置いておくか?」
「取りに行くのが面倒だから何とかカウンターの中に置くわ」
「OK!竜、手伝え」
バケツリレーのように保存食の箱が次から次へと渡されて行き、あっと言う間に片付いた。
こうしてカウンターの中は、健が半分残して行った分も含めて90食以上の保存食で一杯になった。
「ちょっと邪魔だけど、仕方がないわね…」
「じゃあ、俺は帰るぜ。明日はレースがあるんでな」
「あ、ジョー。表の札を『OPEN』に変えておいて」
「解ったよ。じゃあな」
ジョーは颯爽と出て行った。
「任務さえ入らなければ、ジョーはまた賞金を手に入れるのね」
「一番効率の良い仕事をしてるのかもしれんのう」
「好きな事をやってお金を貰えるんだもんな。ジョーの兄貴が羨ましいよ…」
「甚平。ジョーだって、その分負けない為の努力を積み重ねているのよ…。
 でも、一番堅実な仕事なのは竜の仕事じゃない?」
「じゃが、おらはそんなに高給取りじゃないぞい」
「それは仕方がないわ。休みが多いし。私達も任務がない時は精々頑張って営業しないと!
 さ、甚平、気合を入れて稼ぐわよ!」

ガレージでジュンの声を聞いていたジョーは思わず呟いていた。
「気合で客が来てくれるのなら、苦労はねぇだろうな…」
G−2号機に身軽に飛び乗るとエンジンを掛けた。
即座にG−2号が反応した。




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