『死ぬ時は一緒だ』

「健!健!しっかりしやがれ!」
1度敵基地から脱出したジョーはなかなか戻って来ない健を心配し、引き返して来た。
そこで気を失って倒れている健を発見したのだ。
「健を発見した!俺が連れ帰るから心配はいらねぇ!」
ジョーはブレスレットに向かって叫んだ。
3人はゴッドフェニックスの中に待機させている。
「何で戻って来た?自分の身は自分で守る。それが俺達の基本じゃないか。
 戻って来てもしお前がやられたらどうするんだ?」
起き上がった健はジョーを叱責した。
「馬鹿野郎!いつだったか俺が眼をやられた時、『捨て置け』と言ったのにも関わらず助けに来たのはどこのどいつだ?」
健に手を貸して立ち上がらせる。
「爆風で飛ばされたようだが、怪我はねぇみてぇだな。健、急げ!
 俺達が仕掛けた時限爆弾が間もなく爆発するんだぞ!
 自分らの仕掛けで死ぬなんざ御免だぜ!」
「ジョー、すまない。俺が迂闊だったのさ」
「いいから走れ!そんな事を言ってる暇なんかねぇんだぜ」
健は覚醒してジョーの後ろを走り始めた。
あちこちに敵兵が倒れている。
羽根手裏剣で手傷を負ったり、殴られて気を失っているだけだが、間もなくこの基地と心中する事になるのだ。
此処まで駆け付ける間にジョーが倒して来た者達だろう、と健は思った。
限られた時間の中、健を探さなければならないと言う責務を負って、ジョーはこの中を切り抜けて来たのだ。
「俺が来なくてもおめぇは自分で何かしらの方法を採って帰って来るだろうと思ったがよ。
 何せジュンが心配するもんでな」
ジョーは照れ隠しなのか背中を向けて走りながらそう言い訳した。
健の身を心配していたのは、ジュンだけではあるまい。
自分自身が助けに飛び出して来たのは、そう言う事だ。
尤も身体能力的にも健の救出には自分が適任だろうと言う考えもあっての事だ。
万が一健を担いで脱け出す事になった場合、ジュンや甚平には無理があるし、竜にはゴッドフェニックスを任せておかなければならない。
「いや、さっきはつい強がりを言ったが、実際の処ジョーが来なかったら、俺は気を失ったままで脱出不可能だったかもしれない…」
ジョーはその声にチラッと後ろを振り返った。
健が問題なく走って来る事を確認すると、彼は更に疾風の如くその走るスピードを上げた。
彼には健の気配が解ったし、その足音も聞こえていたが、眼で見なければ確認出来ない異変もあるかもしれない。
ジョーは意外にもそう言った事に気を配る男だった。

「健、さっきおめぇは俺に自分の身は自分で守るのが基本だと言ったがな…」
辛くもゴッドフェニックスに飛び移り、爆発を逃れる事が出来た後、トップドームの上でジョーが健に言った。
「俺はお前の言葉を間違いだとは言わねぇ。
 だが、おめぇは科学忍者隊のリーダーだって事を忘れちゃなんねぇぜ。
 『チームを守る為』に俺はお前を助けに走ったんだ。
 だが、おめぇは何かあった時、俺達を見捨てて行く選択をする覚悟もしとけよ。
 その時は誰もリーダーであるお前の選択に異を唱えねぇし、恨む事もねぇ。
 俺達はみんなとうにその覚悟をしてるんだぜ」
トップドームがコックピットに降りるまでの僅かな時間にジョーはそう告げたのだ。
コックピットに到着してしまったので、健はジョーのその言葉に答える事が出来なかった。
本当は言いたかった。
それでも俺は『死ぬ時は一緒だ』と思っている、と。
自分が先程ジョーに助けられた時の言葉とは矛盾していたが、健の思いは友を思う気持ちと科学忍者隊のリーダーとしての気持ちが入り乱れて複雑に交錯してしまうのだ。
その後の科学忍者隊の運命はまだ誰も知らなかった……。




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