『埋葬〜両親と共に』

「南部博士。今年はジョーの代わりに彼のご両親のお墓に全員で行って来たいのですが」
健の申し出に南部は異を唱える事は無かった。
「実は私も健がクロスカラコルムから持ち帰って来たジョーが逝った場所の砂をご両親の墓地に埋葬しようと思っていたのだ。
 これでやっとジョーをご両親の元に返せる。では、共に行くとするか?」
「はい。では近くの本土までゴッドフェニックスで行けるように手配して下さい」
「解った」
こうして、ジョーがBC島で負傷したあの日から丁度1年経ったその日、南部博士と科学忍者隊の4人がジョーの両親の墓を訪れる事となったのだ。
そして、南部は島の新しい神父に依頼をして、離れた処に建造してあったジョーの墓を両親の墓と並べて建てる手筈も整えていた。
5人が墓地へ到着した時、既に現地の人夫達が本来ジョーが入っていたとされていた棺を掘り出し、ジュゼッペ浅倉とカテリーナ浅倉の墓の隣へと埋葬していた。
後は中に入れるものを待つばかりになっていたのだ。
南部は特注の骨壷に健が集めた砂を入れ持参して来た。
それと、科学忍者隊コンドルのジョーとして嘗て描かれた油絵の小さなレプリカ、そしてジョーの『2』番の付いたTシャツがそこに埋葬された。
更には健、ジュン、甚平、竜それぞれが自分の分身とも言える番号付きのTシャツを1枚ずつ納めた。
「ジョー。これでお前は1人じゃないぜ」
健が呟いた。
棺が塞がれる時は、そこに本人が埋葬されている訳ではないのにも関わらず、各々は胸が塞がれる思いがした。
棺は人夫だけではなく、健達も手伝って土の中に埋めて行った。
作業中寂しさで胸が一杯になった。
埋葬が完全に終わり、花を植え、改めて上着を着て喪服姿でジュゼッペ浅倉・カテリーナ浅倉、そして『ジョージ浅倉』の墓の前で手を合わせた。
「これで漸くジョーを…ジョージをあなた方の元へとお返し出来ましたな…。
 私は彼を苦しませてしまった。どうかお許し願いたい」
南部が静かな声音で呟くと、神父が穏やかに言った。
「ジョージ浅倉はあなた達の誰も恨んではいません。
 ギャラクターと言う組織が滅び、本懐を遂げた今は全ての苦しみから解放され、ただただあなた方の幸せだけを願っています」
「ジョー……」
健も、ジュンも、甚平も、竜も滂沱と流れる涙を止める事は出来なかった。
「ほら、心地好い風が吹いて来ましたね。
 これは自分の墓を汗を流して建ててくれたあなた方への彼の感謝と労わりの気持ちです。
 もう自分の事を考えてくよくよせずに、そろそろ前を向いて欲しい。
 彼はそう願っているのです」
神父は十字を切り、胸の十字架を手にそこに眠る3人への祈りを捧げた。
南部博士を初めとした5人も同じように瞑目した。
「ジョージ浅倉は、今漸く両親と合流する事が出来ました。
 今、その幸せを噛み締めていますよ。
 あなた方に感謝し、あなた方一人ひとりの幸せを心から祈っています。
 どうかそれに応えて上げて下さい」
神父がお祈りの最後に皆にそう言って締め括った。
もう、ジョーを冷たくあしらうような彼の故郷では無くなっていた。
ギャラクターの支配下から離れた事で、急速にジョーがいた頃のBC島へと戻りつつあるのである。

ジョーの墓は南部博士の別荘にも建てられている。
この場所は両親と共に在る『ジョージ浅倉』の墓。
そして、あの場所に在るのは『コンドルのジョー』としての墓。
2つの墓所に思いを馳せながら、思いついた時にそれぞれを参れば良いのだ、と南部は皆に言った。
どちらも『我々のジョー』が眠っている事には変わりないのだから、と。




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