『捜索』

「ジョーの兄貴、帰って来るよね?南部博士の治療を受ければ元気になるんだよね?」
ナマズーラとの無駄な闘いに時間を費やされた後、南部博士の指令で、今回の任務から外されて別荘を単独で飛び出したジョーの捜索を行なって来たが、結果は捗々しくなかった。
年上の3人は俯いて黙り込んでしまった。
「これは甚平にもハッキリ言っておかねばならないだろう。
 南部博士の様子から考えて、ジョーは脳に何らかの異常を抱えている。
 それも相当に悪い……。もしかしたら生命に関わるのかもしれない……。
 その可能性は高いだろう。
 だから博士はジュンの問いに答えられなかったんだ。
 恐らくはジョーには余命が告げられていたのかもしれない……。
 それだからこそ、検査をすると言った博士を振り切って出奔したに違いない。
 博士もジョーのその状態を知っているんだろう。
 奴の変調の片鱗はあのバードミサイルや竜巻ファイターを失敗した時に既に出ていたんだ。
 俺はジョーを問い詰めたが、あいつは科学忍者隊から外される事を恐れていたんだろう。
 ついに口を割ってくれなかった。
 俺が科学忍者隊のリーダーとしっかりしていれば、あいつは今頃……」
「あの時の喧嘩はそれで……?」
ジュンが顔を上げた。
「博士の様子では、ジョーの容態は決して良くはないようだ。
 何かが起こればすぐにでも生命に関わる状態にあるに違いない。
 俺達は『その時』の事を覚悟しておかなければならない、って事だ。
 解るな?甚平……」
「解んないよ!解りたくなんかないよ!どうしてジョーの兄貴が死んじゃうんだよ!」
「信じられないのはみんな一緒だ。せめてジョーの無事を祈ろうじゃないか。
 そして適切な治療を受けて生き続けてくれる事を……」
「ジョーはこれまでにも何度も傷を受けて来ているわ。今回だってきっと……」
助かってくれる。そう言いたかった。
ジュンは皆まで言えずに涙ぐんだ。
「本当に水臭いぜ。
 体調が悪い事をおら達に言ったら確かに忍者隊から外される恐れはあったかもしれないけどよ。
 それにしても納得行かんわい。
 何でジョーばかりが出生の秘密だの、重い病気だの1度にいろいろな重い荷物を背負わなければならんのじゃ。
 まだ18だぜ。おら、神様が信じられんぞい」
「おいらやだよ!絶対にやだよ!いろんな約束をしたんだ!
 ジョーの兄貴が居なくなっちゃうなんてやだよ!」
甚平の態度は子供らしかった。
溢れ出る心を剥き出しにして泣き叫ぶ生まれたての赤ん坊のようだった。
「その為にも必死に捜索しているんだ。甚平、思っている事は皆同じだ!」
健の瞳にも涙が浮かんでいた。
「地を這いずり回ってでもジョーを探し出すんだ!
 きっとあいつは俺達の元に戻って来てくれる!
 せめて俺達だけでも信じていよう!」
「ラジャー!」
この後、甚平がメカ分身してジョーを探す事を提案し、健がそれに乗ろうとした処で南部博士からの非情とも言える帰還命令があった。
しかし、健にはそうせざるを得なかった南部の事情も解っていた。
(ジョー!生きていてくれっ!)
叫びたい思いを必死に堪えて、健は竜に帰還するように告げるのだった。




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