『甚平骨折』

「甚平!大丈夫か?!」
2人で組んでの敵基地への侵入中、ジョーが敵兵と闘っている間に甚平が負傷した。
「大した事ないよ。右肩を壁に打ち付けただけだよ」
ジョーは羽根手裏剣を敵に投げ付けながら、優しく甚平の右肩に触れた。
「イタっ!」
甚平が苦痛に顔を歪めた。
「甚平…。腫れて来ているぞ。
 意識が朦朧として来ている処を見ると、これは骨折しているかもしれねぇ…」
ジョーは甚平を左腕でヒョイと抱えた。
「甚平、キツイだろうが暫く我慢してろ!戦闘は俺に任せとけ!
 左腕で右腕を固定していろ!」
「ジョーの兄貴…。面目ない……」
骨折をすると、場合によっては気を失う事がある。
ジョーはそれを知っていた。
甚平の様子からジョーはその可能性を示唆したのだ。
「健!」
ジョーはブレスレットに向かって叫んだ。
「甚平が負傷した。多分骨折だ。俺が付いていながらすまん…。
 とにかくミッションは俺が完遂するから後は宜しく頼むぜ」
『解った!ジュンをそっちにやるから甚平は彼女に任せろ!』
「助かるぜ!」
ジョーは甚平を小脇に抱えながら羽根手裏剣を唇に咥えた。
更に既に右手に羽根手裏剣を何本も握っている。
右腰にはエアガンがあるが、事態を打開するには1度に何本も羽根手裏剣を降らせる事が出来る技量を持つ彼にとっては、この方が少しでも有利になるだろう。
右に左に、時には前方や後方に自由自在に羽根手裏剣を舞わせながら、ジョーは的確にギャラクターの隊士を斃して行った。
後方からヨーヨーが飛んで来たのは、健と交信してから5分と経っていなかった。
「ジョー!」
ジュンが追い掛けて来たのだ。
「ジュン、俺がついていながらすまねぇな。
 壁に強く右肩を打ち付けて、どうやら肩を骨折しているらしい。
 意識が朦朧としているし、肩に熱と腫れが出始めている」
ジョーは甚平を下ろしてジュンに預けた。
「ジョーが気に病む事なんてないわ。甚平だって科学忍者隊の一員なんですもの。
 とにかく私が連れてゴッドフェニックスに戻るから心配しないでジョーは行って!」
「ああ、頼むぜ!気をつけてな」
ジョーはエアガンで敵兵を斃し、ジュンの活路を切り出してやった。
背中合わせになって2人はそのまま別れた。

健とジョーはそれぞれの目的の場所で、時限爆弾を仕掛け、司令室を目指した。
手前で合流した。
「ジョー、甚平は大丈夫だ。無事にゴッドフェニックスに戻った」
「俺の失態だ。甚平の事にまで気が回らなかった」
「俺達は科学忍者隊だ。自分の事は自分で守る。それが鉄則だぜ。
 そんな事は疾うに解っているだろう?お前らしくないぞ」
「……かもしれんな。甚平の事になると、どうも、な」
「俺達の弟みたいな存在だからな」
2人は疾風のように走りながらこの会話をしていた。
「健!此処だぜ!」
「カッツェが居るかもしれん。注意しろよ」
そうして2人は司令室に飛び込んだ。
『紫の君』は既にそこには居なかった。
「どうやら部下を見捨てて自分だけ脱出したらしいぜ…」
「ああ…。あいつは何でも切り捨てるからな。行くぜ、ジョー!」
「おうっ!」
2人は綺麗な相似形で跳躍した。
科学忍者隊の磐石なコンビは、室内に居た敵兵を難なく倒し、此処にも時限爆弾を仕掛けて、脱出した。

南部博士の診断では、甚平の骨折は完全に治す事が可能だと言う。
ジョーはホッとした。
ベッドに横たわる甚平にいつまでも付き添っているジョーに南部が言った。
「ジョー。甚平の怪我は甚平自身の責任だ。庇い切れなかった事を気に病むとは君らしくないな。  任務中にその優しさは禁物だぞ」
「解ってます。別に気に病んでなんかいませんよ。甚平はジュンに任せて帰ります」
ジョーは漸くベッド脇の丸椅子から立ち上がった。




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