『弱音』

ゴッドフェニックスの操縦が上手くなったって?
フン、甚平の奴にまで馬鹿にされたからこっそり竜の操縦を見て『盗んだ』のさ。
健が暴走していた頃、健の座席に座る事が多かったからな。
誰も気付いちゃあいるまいが、そう言うこった。
俺は誰よりも負けず嫌ぇだからな。
だがあの時程苦しかった事は無かったぜ。
俺に巣食った病気はこの後も悪化を続けたが、それ以上に精神的に参った出動だった。
1度バードミサイルを外した後だったからな。
4人の生命が俺の指1本に掛かっているなんて状況は、いつも強気な俺にもきつかったぜ。
つい健に弱音を吐いちまった。
自信がねぇんだ、ってな……。
ちっ、飛んだ恥曝しだ。
だが、俺の身体は確実に蝕まれている。
あれ程の眩暈が頻繁に起こっては、いつか奴らの足を引っ張る事になる。
科学忍者隊から外される事も怖いが、その事も怖いんだ……。
気の強いコンドルのジョー様でも、さすがに最近は精神が参っている。
任務の無い時は出来るだけ奴らに逢わねぇようにした。
特に健の奴は、他の連中よりも早く俺の異常に気付くに違いねぇ。
俺のらしくもねぇ弱音を聞いた唯一の男だからな。
深海1万メートルに潜った時と、地底に向かって行く4人を乗せたドリルを止める為にバードミサイルを撃ち込んだ時の2回、健には俺の弱い処を見せている。
1度目と2度目では性質が違う事を健はきっと見抜くだろう。
俺はそれが怖い。
あいつに知られたら、きっと……。
隠し通すしかないんだ。
でも、どうやって悪化して行くこの身体を奴らに気取られないようにすればいい?
俺の意思だけで止められるのならとっくにやってるさ。
いずれ俺は死ぬ事になるのかもしれねぇ。
この頃漠然とそう思う。
だがよ、神がいるのなら、俺にもう少し時間をくれ。
ギャラクターが滅びるその日まででいい…。
その日までは科学忍者隊G−2号として、この世にこの身を置かせてくれ。
俺はこのままでは死んでも死に切れねぇんだ!
どんなに身体が参ろうと、俺は『コンドルのジョー』として最後まで闘ってみせる。
だから残された時間はいつも通りに闘えるように…。
頼む!俺の願いはそれだけなんだ!
死ぬ事を恐れるよりも、その事だけが気掛かりなんだ!
俺はそれが出来れば充分に満足して逝ける。
これが自分の生き方だったと、胸を張ってやるんだ。

アラン…。
おめぇの形見の十字架は今、俺の手の中にある。
お前は復讐は虚しい事だと身を以って俺に教えてくれたが、もうギャラクターを殲滅させる以外に地球が救われる事は無いんだ。
解ってくれよな。
この手にずっしりと重い十字架を握り締め、俺はトレーラーハウスのベッドの上でただただ祈るしかなかった。




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