『秘密基地建造を阻止せよ!(1)』

『科学忍者隊の諸君!速やかに基地へと集合してくれたまえ!』
南部博士の緊急通信があった後、20分後には全員がバードスタイルで司令室に集まっていた。
4人はソファに座り、ジョーは腕を組んで壁に寄り掛かって俯いていた。
「博士、今回の任務は何ですか?」
リーダーとして健が凛とした態度で説明を求める。
「君達も知っていると思うが、パパリア諸島で群発地震が発生している」
「え、ええ…。ニュースで観ましたが」
「それがどうやら自然現象ではないらしいのだ」
「じゃあ、ギャラクターの仕業だ!」
甚平が指をパチンと鳴らした。
「その可能性が否定出来ないので、諸君に集まって貰った」
「まだデータは集まっていない、と言う事なんですね」
壁際からジョーが呟いた。
「つまりは『調査』か。けっ、つまらねぇ…」
「ジョー、そんな事を言うものじゃないぞ」
健はリーダーらしく、ジョーを嗜めた。
「で、俺達の任務はその地震の原因を究明すればいいんですね?」
「うむ。実はパパリア諸島近辺で頻繁に貨物船や貨物機が目撃されている。勿論、領海・領空侵犯だ。
 これを考えるとギャラクターが大掛かりな基地を建造している可能性も否定出来ない。
 まずはゴッドフェニックスで海中から探索して貰いたいのだ」
「ラジャー」
全員が出動の為に走り出した。
「ああ、ジョー!」
南部博士の声が追って来たので、全員の足が止まった。
「君のG−2号機では海中では力を発揮出来ない。
 君だけは別行動でバカンスに来た旅行者と言う事で陸上から探索してくれたまえ。
 ゴッドフェニックスが到着したら、G−2号機を下ろして貰うのだ。
 パパリア諸島の本島であるパパリア島は一番大きな島だ。
 危険な任務になるかもしれない。5人それぞれ連絡を密にな」
「解りました」

ジョーはゴッドフェニックスによりG−2号機毎パパリア諸島の本島の海岸へと1人下ろされた。
ゴッドフェニックスも領空侵犯と騒がれる可能性があったので、それは夜中にひっそりと行なわれた。
パパリア島の本島は故郷のBC島に似た雰囲気を持つ島だったが、規模が違った。
BC島は車で3時間もあれば1周する事が出来る小さな島だった。
まずは海岸に降り立ち、少し歩いてみる。
上り始めた朝陽がジョーに向かって、海の上に道を作り、キラキラと煌いていた。
(さて、どうやって探ればいい?空港か?それとも港か……?)
ジョーが考え込んでいる時に、朝陽を見に繰り出していた観光客が騒ぎ出した。
地震だ。
かなり大きい。
砂浜では遮蔽物がなく、ただ砂に伏せて揺れが落ち着くのを待つしかなかった。
「こちらG−2号!今、大きな地震が発生中だ」
『海底もかなりの揺れを観測している。震度6強だ。島の上でも震度6は行っているかもしれない。
 何か大掛かりな事が行なわれているに違いない。
 今、南部博士が震源地を割り出しているところだ。
 被害状況は見えるか?』
健の返答があった。
「朝食を作っている時間帯だ。街の中にいくつか火の手が……。ん、健、ちょっと待て!」
余震が収まっていなかったが、ジョーは上空に何かの気配を感じて見上げた。
「地震の騒ぎに乗じてか領空侵犯の貨物輸送機が現われた。
 俺はあれを追って行ける所まで行ってみよう」
ジョーはまだ大きな余震が残る中、G−2号機まで走って華麗に飛び乗ると、周囲の人々の注意が輸送機に奪われている事を確認し、バードスタイルに変身した。
「こちらG−2号。健!追尾を開始した」
ジョーはブレスレットに向かって叫んだ。
『解った。甚平も行かせる。絶対に見失うなよ』
健の応答があった。
「ラジャー!任せとけ!それよりそっちはどうだ?」
『地震は今漸く収まった。
 パパリア諸島の海底には一見普通に見えて様々に手を加えた跡があると言うのが竜の見解だ。
 今、映像を博士に伝送したところだ』
「竜はさすがに海の男だな。とにかくこっちは飛べねぇんで、甚平の応援を早い処頼むぜ」
『もうメカ分身して出発している』
G−2号機の猛烈なエンジン音の中、健の返答はハッキリと届いた。
島に上陸してから景色を見るどころではなかった。
朝陽を見ただけだ。
だが、これは飽くまでも任務だ。
致し方なかった。
大型貨物輸送機は追尾を警戒してか、微妙に方向性を変えながら移動した。
やがて火山に偽装した山の岩が開き、輸送機はその中に吸収されて行った。
「健、輸送機は火山の中に入って行ったぜ。この火山は岩が動いて、輸送機が入れるように偽装されている」
甚平もG−4号機でジョーの隣に降りて来た。
「ジョーの兄貴。あれがギャラクターの基地かねぇ?」
「まだ解らねぇな。あそこから地下に通じていて、実は海底に基地を建造している可能性もあるからな」
「そういや、パパリア島本島のすぐ下の区域だけ、海底が淀んでいて目視出来なかったんだよ。
 今、南部博士がそれを解析してるよ」
「健、どうする?俺と甚平で潜入するか?」
此処はリーダーとしての健の意見を聞いておきたい。
『いや、待て。博士の分析を待とう。急いては事を仕損じると言うからな』
健の言葉に、ジョーはお株を取られたような気分になった。
「解った。俺と甚平はこの場所で待機しているぜ」
『敵の警戒に気をつけろよ!そこも完全に敵の監視下にあるかもしれんからな』
健の言葉が終わらない内に、ジョーと甚平は気配を感じて自然と背中合わせになった。
「どうやら遅かったようだぜ…」
ジョーは呟いた。
(ちぇっ…迂闊だったぜ……)
G−2号機で下から走って来たジョーはともかく、空を飛んで来たG−4号機は目立ち過ぎたようだ。
ギャラクターの隊士に四方を囲まれていた。
「健、ギャラクターのお出ましだ!これでギャラクターが絡んでいると言う事は確定したぜ!」
ジョーはブレスレットに向かって言い終えると、素晴らしいジャンプ力で飛び上がった。
「甚平!自分の事は自分で守れるな?」
「あったぼうよ!おいらは科学忍者隊G−4号、燕の甚平様だいっ!」
甚平は、アメリカンクラッカーを繰り出しながら、素早い動きで敵を蹂躙した。
身体の小さい甚平はちょこまかと動き回るので大人が予想し得ない動きをするのだ。
ギャラクターの隊士達はそれにまんまと翻弄された。
そして、ジョーはまるでオリンピックの体操競技を見ているかのような美しく華麗な動きで跳躍しながら羽根手裏剣を纏めて何本も放ち、敵に隙を作った処で身体毎ぶつかって行くかのように、長い手足で重いキックやパンチをお見舞いして行った。
一撃で確実に敵が伸びて行く。
一通りの敵は倒したつもりだったが、更に新手が現われた。
「ジョーの兄貴…。キリが無いよぉ……」
「甘えるな。切り開いて行くしかねぇ。おめぇにはその力がある筈だ」
2人は息をつく暇もなく、それらの敵に向かって走り出した。




inserted by FC2 system