『秘密基地建造を阻止せよ!(4)』

タイムリミットまで僅かに5分を切っている。
「ジュン、甚平!無事でいろよ!」
ジョーは驚く程のスピードでG−2号機まで駆け戻り、ジュン達が進んだ通路をエンジンを唸らせて走り抜けた。
リミットまで後3分。
突然バードスクランブルを受信した。
「そうか!妨害電波で受信出来なかったんだな?
 それが俺が受信圏内に入ったんで電波をキャッチ出来るようになったんだ」
ジョーは呟いている間に華麗にG−2号機を飛び降り、スクランブルが発せられている目標のドアを力一杯、飛び蹴りで突き破った。
そこには宙吊りにされて、バーナーの火で焼かれようとしている2人が居た。
ジュンが身体を揺らしては甚平のブレスレットを足で蹴っていたのだ。
ジョーはすぐさまバーナーの火を止めるボタンを探して消し止めた。
「健!近くに来ているか?2人を見つけたぜ!」
ジョーがブレスレットに叫ぶと、雑音混じりだが健の返答があった。
『ああ、何とか受信出来ている。俺もすぐ傍だ!2人は無事か?』
「ああ、焼き鳥寸前だったが、バーナーの火は無事に止めたぜ」
言い差しながら、羽根手裏剣を放ち、まずは甚平の四肢を自由にした。
その時、健も到着して「バードラン!」の掛け声と共にブーメランを投げ、ジュンを拘束していた鎖を切った。
2人は無事に着地した。
「時間がねぇ!自分達が仕掛けた爆弾で死にたくはねぇだろ?
 3人とも俺のG−2号機の上に乗れ!」
ジョーのメカに3人がしがみ付いた。
「スピードを出すから脱落するんじゃねぇぞ!」
ジョーはいきなりアクセルを踏んだ。
健がその間に竜に連絡を取る。
「竜!脱出するからすぐに俺達を回収してくれ!」
『ラジャー!』
G−4号機が見えて来ると、甚平が飛んでそちらに乗り換え、健とジュンはG−2号機から飛び降りた。
機首から突っ込んで来たゴッドフェニックスのトップドームに健とジュンは飛び上がり、G−2号機とG−4号機は合体を完了した。
ゴッドフェニックスは急いで後退して、爆発が始まった未完成の敵基地から脱出する。
コックピットに全員無傷で揃った。
「ジョー、健、有難う。助かったわ」
「ずっとバードスクランブルを送っていたんだけど、届かなくてさ」
「妨害電波が出ていたのさ。だから近づくまで俺達もキャッチ出来なかったんだ」
ジョーが腕を組んで言った。
ゴッドフェニックスの後方で大爆発が起きた。
海が荒れた。
何かどす黒い物が放出されているのが大スクリーンに映った。
「健、あれは汚染物質P−557よ。南部博士に言って中和剤を撒かないと大変な事になるわ」
ジュンが捕まる前に得た情報を健に告げた。
「何だって!?」
「少しずつ海域の自然を破壊して行く。やがては全世界の海に広がってしまうわ」
「早く博士に報告だ!」
健はブレスレットに向かった。
「南部博士!任務は完了しましたが、大変な事が解りました!」
『どうした?』
「秘密基地を爆破した事によって、パパリア諸島一帯に汚染物質P−557が流出しました」
『何だと!?』
「博士、早く中和剤を撒かないと地球の全ての海域に広がってしまいます」
ジュンが訴えた。
『しかし……。今から作るとなっては……』
南部が押し黙った。
「そうだ!ギャラクターは汚染された地球が欲しい訳じゃねぇ!
 もしや中和剤も用意しているのでは?」
ジョーの呟きに南部が頷いた。
『それだ!ジョーの言う通りかもしれん。
 ギャラクターが用意している中和剤を奪う事が出来れば…』
「ええっ?でも、どうやって?」
甚平が指を咥えた。
「甚平!俺達がさっき地上の火山で倒した奴らをひっ捕まえようぜ!」
ジョーがニヤリと笑った。
G−2号機とG−4号機は再びゴッドフェニックスからメカ分身する事になった。

『あ!いた!』
甚平の声がブレスレットから聞こえた。
上空から見る事が出来るG−4号機の方が見渡しが利く。
先程メカの周辺に潜んでいてジョーに黙らされたギャラクターの隊員7名がまさに車で逃げ出そうとしていた。
『ジョーの兄貴、おいらに任せてよ』
甚平はG−4号機の口の部分を開け、魚網のような物を繰り出した。
これで7人を丸ごと掬い取ったのだ。
網の中で男達はもがいていたが、甚平に「簡単に出られるような代物じゃないよ」と言われて静かになった。
「おい!此処の海底基地にはカッツェは居なかった。
 奴は近くの前線基地で指示をしていたんだろ?その基地はどこにある?」
ジョーは網の中に居る男の1人の頬を羽根手裏剣の羽根の部分で撫でた。
「こいつでおめぇ達1人1人の眼を射抜いてやってもいいんだぜ?」
「へっへ〜ん。科学忍者隊G−2号・コンドルのジョーの羽根手裏剣捌きは百発百中だぜ!
 おいらが保証しちゃうよ」
甚平が自慢気に腕を組んで、ニヤっと笑いながら見下ろした。
まだ小さい彼には大人を見下ろす事は快感らしい。
羽根手裏剣はジョー専門の武器ではないが、好んで使うのは彼だけだった。
「誰からやって貰いたいか?」
ジョーが低い声で脅した。
「カ…カッツェ様に殺される!」
「逃がしてやってもいいぜ。ちゃんと本当の事を言えば、な」
ジョーは表情に凄みを見せた。
「カッツェがいる基地はどこだ?汚染物質P−557の中和剤を用意している筈だろ?
 俺達はそれを戴きたいのさ!」
羽根手裏剣を人差し指と中指の間に挟んで、顔の前で指を立てた。
それは敵を白状させるには充分なひと睨みだった。

『そうか…。では、すぐに向かってくれたまえ!』
スクリーンの中で南部が頷いて見せた。
「ラジャー!」
ジョーが聞き出したカッツェが陣取る前線基地はそこから南方へ僅か100kmと言う近さにあった。
やはり海底に小規模だが基地を設けてあるらしい。
ゴッドフェニックスは全速力でそこに向かう事になった。
『秘密基地現像を阻止せよ!』のミッションは完遂したが、新たな任務が生じてしまった。
だが、地球の海を汚染物質から救う為である。
その任務を厭う者は誰もいない。
疲れを知らない若者達は次の任務へと飛び立った。




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