『チーム護衛(2)』

ジョーは油断の無い眼で辺りを睥睨していた。
『ジョー、眼付きがキツ過ぎよ。出席者が萎縮してしまうわ』
ジュンから通信が入る程だった。
「俺の眼つきが悪いのは元々さ」
ジョーはシニカルに笑ったが、少しだけその光を抑えた。
出席者の中にギャラクターが変装した者が混じっている可能性は高い。
特にカッツェは変装がお手の物だ。
『アンダーソン長官を含めて、良く全員をチェックするんだ』
健の指示がブレスレットから流れた。
「おい、健。全員で中を張っていても仕方がねぇ。
 誰かメンバーがすり替わっているとすれば、外も見て回った方がいいんじゃねぇか?」
『ジョーの言う通りかもしれん。ジョー、ジュン、2人は会場外、会場内を隈なく探ってくれるか?」
「ラジャー!」
『ラジャー!』
ジョーとジュンの2人は静かに会議場から姿を消した。
『竜、甚平。2人が抜けたんだ。その分しっかり頼むぞ』
健の声が聞こえた。

「ジュン、俺はまず会場外から回ってみる。お前は会場内を頼めるか?」
「解ったわ…。何かあったら連絡して」
「おう。じゃあな!」
ジョーは非常階段から飛び出して、そのままマントを広げて飛翔し、華麗に地面まで降りた。
ジュンは会議場以外の部屋やトイレまで細かく各階を入念に回った。
国際会議場の敷地はかなり広い。
もう1人、甚平でも連れて来れば良かったか、とジョーは思ったが、今更仕方がない。
とにかく怪しい処は虱潰しに回るしかなかった。
敷地内には公園があり、一般人が入れるようになっていた。
まずはそこから、と思ったのはやはり彼の勘の良さなのだろう。
人だかりがしているのに気付いて、風のように走った。
「ちょっと失礼…」
ジョーはバードスタイルのまま、人だかりの中心へとずんずん進んで行った。
そこには喉を掻き切られた男の死体があった。
警察が実況見分を始めていた。
「科学忍者隊G−2号です。この方の身分は?」
責任者らしい人物が胡散臭そうにジョーを見返したが、ジョーが丁重だった事と、バードスタイルを解いていなかった事から、彼に話す気になったらしい。
ジョーは話すのを拒否するようなら脅してやろうかと思っていたので、少し拍子抜けした。
「ガルパラス国の科学者マイク・アズバール氏ですな」
警部の身分証を出した男がそう答えた。
「胸のバッジを見せて下さい」
ジョーは死体に近づいた。
「健!ガルパラス国の科学者、マイク・アズバールに化けているのがギャラクターだ!
 アズバール氏は既に殺されている。特徴は六角形のシルバーのバッヂを付けている事だ。
 バッヂの中央には紫色で『G』のマークが入っている!
 俺もすぐに戻るから頼むぜ!」
『解った!』
『ジョー、私もすぐに戻るわ!』
ブレスレットから健とジュンの声が聞こえた。

国際会議場の会場では、白熱した議論が行なわれている筈だったが、スパイが入り込んでいる可能性がある為、事実上、会議はストップしたままだった。
そこへジョーからの連絡だった。
健、竜、甚平の3人はジョーが告げたバッヂを胸に付けている人物を探した。
「兄貴!あそこだ!南部博士の3列後ろの、向かって右側にいる男!」
甚平が即座にその男を見つけた。
健が、竜が、甚平が、1歩前へと足を踏み出した。
「今、仲間が敷地内である国の代表の科学者の死体を発見しました。
 その国のバッヂを付けている人物…、即ち貴方がスパイだ!」
健が指差した先の男は困惑したような表情を浮かべていたが、誤魔化し切れない事を悟ると、高くジャンプして、段を付けたすり鉢状になっている会議場の隅まで跳躍した。
「良く見破ったな、ガッチャマン!」
その声はベルク・カッツェその物だった。
パッと服の生地が舞ったかと思うと、紫の仮面のあの男が現われた。
丁度その後方から走り込んで来たのが、建物の中を見て歩いていたジュンだった。
「ベルク・カッツェ!」
ジュンは咄嗟に後方からカッツェを羽交い絞めにした。
だが、彼女では体格的に無理があった。
「ジュン!」
健が跳躍して、カッツェに重い膝蹴りを入れた。
カッツェが唸って片膝をついた処へ、竜と甚平も駆けつけた。
「くそぅ…。もう少しだったのに……」
「科学忍者隊を甘く見過ぎたな!」
健がほくそ笑んだ。
「それはどうかな?」
カッツェが指笛を吹くと、ブラックバード隊が入って来た。
「えっ?私が見て回った時には居なかったわ!」
ジュンが蒼褪めた。
だが、入って来たブラックバードの後方にはジョーが居た。
背中にエアガンを突きつけていたのだ。
「残念だったな、カッツェ。こいつは既に俺の手に堕ちている。
 他に2人程廊下に眠って貰ったぜ。随分手強かったな。
 ジュン、天井に潜んでいたのを見逃したな?
 こいつら大方古来の忍者の術でも使ったんだろうぜ」
ジョーは不敵な笑いを見せて、男を突き飛ばした。
男はつんのめり、ジョーに腹を蹴り下ろされて気絶した。
精鋭揃いのブラックバード隊にしてはお粗末だった。
「どうした?カッツェ!これで万事休すだ」
健がカッツェに詰め寄り、カッツェは5人に囲まれた。
その時、ジョーはハッとした。
後ろから見ていた彼には、カッツェが首から小型爆弾を取り出した事を見逃さなかったのだ。
「爆弾を持っている!全員伏せろ!」
ジョーが叫んだ時、カッツェは小型爆弾を床に叩き付けた。
ジョーは跳躍して高い天井に張り付き、辛うじて爆風を避けた。
その間に逃げ足の速いカッツェが姿を消した。
「まだそう遠くには行っていない筈だ!ジョー、ジュン、一緒に来てくれ!
 甚平と竜は此処に待機。まだ仲間が居ないとは限らん!」
健が即座に指示を出した。
「ラジャー!」
3人はすぐさま会場を疾風(はやて)のように走り出た。
そこには、先程ジョーが倒した筈のブラックバードが2名いた。
そして、後方には足蹴にされたブラックバードが。
やはりただで起き上がる敵ではなかった。
3人は同人数のブラックバード隊に前後を挟まれて、形勢が逆転した。
「兄貴!」
甚平の声がした。
「お前達は其処を離れては行かん!いいな?」
健が命令をし、3人対3人は外の通路へと出て、闘いを始めた。
「ブラックバードはギャラクターの精鋭忍者部隊だ。ジョー、気をつけろ!」
健とジュンは既に対峙した事がある。
特にジュンにとっては、辛い思い出もあった。
「ああ、解ってるぜ。ジュン、おめぇこそ大丈夫か?」
「大丈夫よ。科学忍者隊が闘いの最中に感傷に浸っている暇などないわ」
3人はそれぞれの持てる技と武器を最大限に活用した。
健はブーメランを、ジョーは羽根手裏剣とエアガンを、そしてジュンは電磁ヨーヨーをそれぞれ繰り出し、格闘技(わざ)でも相手と肉薄して行く。
ジョーは時にジュンが窮地に陥ると羽根手裏剣を飛ばした。
それを見切るだけの余裕は残していた。
健はそれを見て正直驚いた。
自分でもブラックバードはなかなか手に余る相手なのに、ジョーは死の淵から立ち上がって来て、また戦闘能力を上げたのか?
ジョーは自分の闘いを疎かにしているかと言うと決してそうではない。
しかし…。
ブラックバードと闘っている間にまたカッツェに逃げられたな。
健は口元を歪めて苦笑するのだった。
「健!危ねぇ!」
ジョーの羽根手裏剣がブラックバードの右手の甲に刺さった。
「余計な事を考えてるんじゃねぇ!おめぇはリーダーだろ?」
ジョーの叱責は尤もなものだった。
健は意識を戻して、闘いに専念した。




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