『怪電波殺戮兵器』

ジュンと組むのは珍しい事だった。
ジュンは大抵健と一緒か甚平と行動する事が多いからだ。
今回の任務は地上を走り回る必要があった為、俺とジュンとの組み合わせになったのだろう。
南部博士からそのように指示を受けた。
ソルティーシュガーシティに出現したギャラクターの拡声器型鉄獣メカが怪電波を流し、街の人々を殺戮行動に駆り立てていた。
市民同士が殺し合うと言う何とも残酷な作戦を始めやがったのだ。
しかし、この街の地下には石油資源が眠っていた。
空からの攻撃は危険だ。
G−2号機とG−3号機にはそれぞれ新しく鉄獣メカに対抗出来る武器が装備されていた。
その為俺とジュンに白羽の矢が立ったと言う訳だ。
「ジュン!俺は奴の向こう側に回り込む。先に行くぜ!」
ブレスレットで交信すると、『ラジャー!ジョー、気をつけてね!』と力強い声が返って来た。
普段は女の子らしい感情を表わす事もあるが、闘いの中にあっては俺達と同等の活躍を見せる。
メカや爆弾にも明るく、なかなか頭の回転もいい。
こんな闘いの中に居なければ、おめぇだってもっと女の子らしく暮らせるのにな…。
普通の温かい家庭に生まれていれば、闘いの中に身を投じる事はなかっただろう。
危険な目に遭う事もなく、幸せに暮らしていただろうに……。
ジュンが孤児になった経緯を聞いた事はねぇが、もしかしたら本人が知らねぇだけで俺のようにギャラクターに親を殺されたのかもしれねぇな。

俺はギャラクターの包囲網の外を高速で走った。
G−3号機を走らせるよりは、俺が回り込んだ方が早いだろうと踏んだのだ。
『こちらG−3号!ジョー、配置についたわ』
ジュンからの通信が入った。
「俺は後2分程で到着する計算だ!タイミングを合わせてミサイルで攻撃するぜ」
『ラジャー!そっちから指示を出して頂戴!』
「OK!」
俺は崖から一気にG−2号機で走り降りた。
殆ど真っ逆様な状態だが、こんな事は日常茶飯事だ。
G−2号機にはそれに耐えられるだけの能力が備わっている。
「こちらG−2号!ジュン、準備万端だ!行くぜ!」
ブレスレットに叫ぶと、俺とジュンが鉄獣メカを挟み撃ちの状態で俺はG−2号機の『大口径ガトリング砲』を、ジュンは『ジュンロケット』を同時に発射した。
南部博士の読み通り、鉄獣メカは地下の石油資源に影響を及ぼす事なく、無事に木っ端微塵に爆破する事が出来た。
怪電波が突如消えた事で人々は我に返り、周辺の惨状に驚いている様子だ。
一般市民の惨たらしい死体が重なっている。
どうやら狂わされていた間の記憶は消えているようなのが救いだな、と俺は思った。
自分の手で友を死なせたと言う事実がどれだけ辛いものなのか、俺が一番良く知っているからな……。

俺はジュンと合流した。
「やったな!ジュン!」
「ええ…」
「まだ近くに残党が居るかもしれねぇ!充分気をつけろ!」
「解ったわ…」
拡声器型鉄獣メカが爆発した地点からデブルスター円盤が飛び出して行くのが見えた。
「健!カッツェの奴が逃げたぞ!追跡出来るか?」
俺はブレスレットに向かって叫んだ。
『いや…、G−2号機とG−3号機を欠いているゴッドフェニックスではスピードが足りない…』
冷静な声が返って来た。
いつだって奴はリーダーとして冷静だ。
レッドインパルスが死んだ時を除いては……。

「ジョーが崖から真っ逆様に走り降りて行くのを見た時は心底驚いたわよ」
ジュンが俺の横で呟いた。
「伊達にレーサーをやってる訳じゃねぇぜ!」
「それは解ってるけど…。ジョー、絶対に無理はしないでね」
ジュンが何を気遣っているのかは俺には解っていた。
(ジュンも俺の不調に気付いてやがるのか…?)
俺はそれを笑い飛ばした。
「今の働きを見れば、いってぇ何の問題があるってんだ?」
「それはそうだけど…。ギャラクターを憎む余りに無茶をしてジョーに何かが起こらないかと心配なだけなのよ」
ジュンが微笑んだ。
わざと本心をぼかして言っている事は俺にだって解る。
(やっぱりこの娘(こ)には普通の女の子としての幸せを掴んで貰いてぇもんだ…)
俺はその微笑みから空を飛ぶゴッドフェニックスに視線を逸らしながらそう思ったのだった。




inserted by FC2 system