『大鷹山(1)』

ギャラクターの基地を見つけたのは甚平の手柄だった。
たまたまバギーで街中を走っていた時に、ギャラクターに襲われようとしていた女の子を助けたのが発端で、甚平は女の子と共にギャラクターに拉致されてしまった。
しかし、バードスクランブルを発信したので、彼に何かが起こっている事はすぐに他の4人と南部博士の知る処となった。
ISO情報部からの情報によると、ギャラクターに誘拐された女の子は大手石油会社の社長令嬢だったらしい。
「お嬢さんを人質に莫大な資産か燃料をせしめようとしているに違いない。
 甚平はその娘を助けようとして、拉致されてしまったのだ。
 しかし、こうしてバードスクランブルを送って来ていると言う事は彼が無事だと言う事の証明だ」
「博士、俺達にすぐに出動命令を!」
健が迫った。
「うむ。甚平の居場所は大鷹山の地下だと思われるのだ。
 もしかすれば大掛かりな基地があるのかもしれん」
「だとすれば、甚平のお手柄じゃのう…」
竜が言ったが、ジョーは言下に否定した。
「甚平が無事に戻らなければしょうがねぇんだ!
 それに大鷹山は死火山だが、何かの切っ掛けで爆発するかもしれねぇ」
「ジョーの言う通りだ。付近の住民に避難命令を出す事にしよう。
 G−4号機がないが…止むを得んだろう。出動してくれたまえ。成功を祈る」
「ラジャー!」
4人は勇躍して格納庫に駆け出した。
全員が甚平を助け出し、敵基地を壊滅させる事を無言で誓い合っていた。

大鷹山までG−4号機を欠いたゴッドフェニックスで30分は掛かる計算だった。
「甚平ったら、随分遠くまで運ばれたのね…」
ジュンが心配そうに呟く。
「G−4号機の回収も早くしねぇとまずいな…」
ジョーが言った処へ南部博士がスクリーンに現われた。
「そのG−4号機だが、通常のバギー状態で情報部が回収している。
 X−457地点で受け取ってくれたまえ」
「バギー状態って事は、回収してもゴッドフェニックスはバードミサイルも使えないちゅう事かのう?」
竜が当然全員が考えた事を代弁した。
「いや、ゴッドフェニックスに格納した時点でヘリコバギーになるように私の方で操作※する」
「解りました、博士。X−457地点に迂回して大鷹山に向かいます。
 竜、機首を東北東へ向けろ」
健が指示を出した。
「ラジャー!」
ゴッドフェニックスは旋回した。
甚平のバードスクランブルはもう消えている。
何か起こったのではないか、と最年少の弟分を心配する気持ちは全員同じだった。
「甚平の奴…。心配掛けやがって。戻って来たら拳骨を喰らわしてやる」
ジョーはそんな言葉で表現したが、誰もジョーが本気で甚平を殴ろうと思っているとは考えていない。
彼が甚平の事を可愛がっている事はメンバーの誰もが知っている事だからだ。
X−457地点で情報部員からバギーを回収して、ゴッドフェニックスは完全体となり、一路大鷹山へと飛ばした。
1km手前で、森の中にゴッドフェニックスを下ろし、そこからは竜を残した3人が一気に駆け抜ける事になった。
「竜、俺が合図をしたら、ゴッドフェニックスで基地に突っ込んでくれ」
健がただの待機ではない事を竜に伝えると、3人はトップドームへと上がった。
3人は華麗にヒラリと舞い降りた。
ジョーは宙返りをして降りて来た。
そんな処に彼の意気込みを感じさせるものがあった。
甚平を必ず救い出し、基地を木っ端微塵にしてやるのだ。
「3方に別れよう。甚平がまたバードスクランブルを発信して来たら、ジュンは救出に当たってくれ。
 もう1人の人質の女の子は何としても甚平と2人で守り抜いてくれよ」
「ラジャー」
「行くぞ!」
健の言葉を合図に3人は別れた。

森の中を駆け抜けて行くと、そのまま森が大鷹山へと繋がっている事が解った。
事前調査の内容と合致していた。
ジョーは木々の中を縫って超速で走った。
彼が一番遠回りを選んだのは、足が速いからだった。
勿論、遠回りをしたからと言って他の2人に遅れを取るつもりはない。
長い足が最大限に生かされ、そのジャンプ力で風を切って前へと進んで行った。
彼の動きは森が上手く隠してくれる筈だ。
直線距離を行った2人と違ってジョーが走った距離は1500メートルを超えていたが、彼には全く大した距離ではない。
やがて大鷹山の麓に着いた。
基地への入口を探さなければならない。
「健、そっちはどうだ?入口は見つかったか?」
『まだだ』
『私もまだよ』
「そうか…。もし見つけたら知らせてくれ」
『勿論だ!お前もちゃんと知らせろよ』
「ああ……」
ジョーは答えると油断の無い眼を周囲に行き渡らせた。
ギャラクターの隊士の姿はまだ見えない。
(もう少し周辺を探ってみるか…)
少しずつ移動を始めた彼は、山の中腹に少しだけ色合いが違う場所がある事を見つけた。
(あれは…。あそこだけ人工岩になっている!)
健に早速その事を連絡した。
「近辺に出入口がある可能性が高い。俺は引き続き当たってみる」
『解った。俺達もそっちに回る!』
健の素早い答えがあった。
ジョーの電波を辿って2人はやって来る事だろう。

山の斜面はかなりの急勾配だった。
進行方向から見た時にはなだらかだったのだが、反対側に立ってみるとまるで切り立った崖のように見えた。
これはカモフラージュし易いかもしれない、とジョーは納得した。
もし一般人が通るとしたら、彼らがゴッドフェニックスを残した森の方角からだからだ。
ジョーは60度近い斜面を手足の力で上って行き、やがて下から見たそこだけ色が微妙に違う部分に辿り着いた。
軽く手で叩いてみると金属音がした。
(思った通りだ…)
ジョーは耳を澄ましてみる。
微かだが機械音がしている事が解った。
(出入口はどこだ?)
ジョーは片手で岩場に掴まり、身体を宙に浮かせた状態で、エアガンを抜いた。
本物の岩場と色が違う部分に僅かな隙間を見つけたのだ。
エアガンをバールのように利用して、少しこじ開けようと試みた。
中の様子が少しだけ窺えた。
敵兵がうろうろしている。
その時、再び甚平からのバードスクランブルを受信した。
(一か八か、突入してみるしかあるまい……)
「こちらG−2号!岩場との境目に爆弾を仕掛けて突入する!」
『ジョー!俺達が着くまで待っていろ!』
「だが…またバードスクランブルを送って来たと言う事は、甚平の奴は一刻を争う状態にあるのかもしれねぇっ!」
『……解った!俺達も急ぎ向かっている。頼んだぞ、ジョー。気をつけてな!』
健の答えを聞いている間にも、ジョーは腰から小型爆弾を取り出した。
時限装置を30秒に設置し、自分は少し離れてマントで身を守った。
ジョーが入れるぐらいの隙間が出来た。
竜はともかく健とジュンなら入って来れるだろう。
中が大騒ぎになっている中、ジョーはスラリと爆発で出来た穴を通り抜け、敵兵の前に全身を晒した。
いきなりマシンガンの洗礼を受けたが、彼は高く高く跳躍し、重たいキックを敵兵に浴びせた。
1対数十人の戦闘が今始まった。


※本編にこんな設定はありませんので、悪しからず…。(汗)勝手に創作しました。




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