『永久欠番』

G−2号は永久欠番だって、おいら達は決めたんだ。
ジョーの兄貴は口は悪かったけど、おいらには何だかんだと言って優しかったんだよな…。
おいらは孤児(みなしご)だけど、ジョーの兄貴は眼の前でギャラクターに両親を殺されたんだもんな。
ジョーの過去を知った時、おいら、みんなに甘えてたんだな、って思ったよ…。
ジョーの兄貴は人に言えない過去を背負ってた。
それも両親がギャラクターだっただなんて、思い出した時はどんなにか辛かったんだろう?
おいらにだって、それ位の事は解るんだぜ…。

クロスカラコルムのギャラクター本部の入口。
あんな場所に1人残されたジョーの兄貴は悔しかっただろうな…。
ギャラクターに復讐する事だけの為に生きて来たようなもんだから。
ジョーの生き方はおいらから見てもかっこ良かったよ…。
だからさ、ゴッドフェニックスの空席がいつ見ても哀しくてなんないんだよ。
主が居なくなったG−2号機も見るのが辛い。
『ジュンに我侭を言って困らせるんじゃねぇぞ』
最期までおいらを子供扱いしてたけど、ジョーの兄貴は本当はおいらを一人前の男として見ていてくれた事もおいらは知ってる。
冷たい事を言って突き放しておきながら、おいらの頭に乗せたその大きくて暖かい手が忘れられないよ。
おいらにとっては兄貴と同様、ジョーは憧れの存在だった…。
『馬鹿野郎!泣くんじゃねーよ!』 ってジョーの兄貴の声が聞こえて来るようだよ…。

科学忍者隊のリーダーとしての立場があった兄貴とは違って、ジョーの兄貴は自由だった気がする。
思い通りに闘って、思い通りに生きて、そして散って行ったと思ってる。
ジョーの兄貴はギャラクターの破滅と共に逝ってしまったけれど、きっとあれで本望だったんだろうな。
でも、ギャラクターの最期をその眼に見せてやりたかったよ。
見たかっただろう?ジョー……。

生きてたら、今頃、サーキット場を渡り歩いてレース三昧していたかな?
走っているジョーの兄貴は生き生きとして颯爽としていた。
おいらには手の届かない人、って感じがいつもしてた。
レーシングカーを走らせるジョー、銃器を操るジョー…。
羽根手裏剣の扱いは本当に見事だったね。
神掛かってたと思う。

誰もジョーの兄貴の右に出る者は無かったもんな。
ジョーの時間はもう止まってしまったから、いつかおいらはジョーの年を追い越してしまうんだね……。
あの仔犬さえ居なかったら…、って今でもおいらは思ってしまうんだ。
でも、あれは昔のジョーの姿なんだ、って兄貴が言った言葉を思い出す度においらはその考えを必死に打ち消そうとしてる。

ジョーの兄貴、寂しいけど、おいら達はジョーの分まで生きて行かなければならないんだよね?
残酷だと思う事もあるけどさ。
おいら、ジョーの兄貴の分まで頑張って、立派な大人になってやる。
おいらにはこれから自分の夢を考える時間が充分にあるんだもんな。
お姉ちゃんの店を手伝っているばかりじゃなくて、いつかは独り立ちしなくちゃね。
自分の素早い身のこなしを生かして何かしたいと思ってるんだ。
ジョーにとってのカーレースのように、何か輝けるものを見つけ出したい。
おいらの事見守っててくれよな。
いつかジョーの兄貴に『良くやったな、甚平』って言って貰えるような男に、おいらはなって見せるぜ!




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