『高速道路の怪事件(2)』

ジョーが前方に入って巧みに誘いを掛けると、暴走族共はジョーが掛けた網に引っ掛かり、次から次へと包囲していた一般車から離れ、ジョーの方を追って来た。
ジョーはそれを確認して、スピードを上げた。
敵は後方から機銃掃射でG−2号機を襲って来たが、掠りもしなかったのは、G−2号機の装甲の強さとジョー自身の操縦テクニックによるものだった。
ステアリングを切り、後方からの着弾を防ぐのは並大抵の事ではない。
ある程度、被害家族の車から引き離した処で、ジョーはG−2号機を停めた。
暴走族がそれを取り囲んで停まった。
ジョーはコックピットを開け、外へと飛び出す。
「うっ?科学忍者隊?」
「こんな処をレーシングカーが走っていたからおかしいとは思ったがよ……」
少し躊躇するような声が彼らから上がった時、被っているヘルメットに何かの電波が流れたのか、彼らが苦しみだし、数秒後には眼が赤く染まった。
その途端に凶暴になり、ジョーに襲い掛かった。
明らかにギャラクターに操られている。
ジョーはヘルメットを外して行く方向で動き始めた。
どうやらこれは一般人の暴走族だ。
やっている事はくだらないが、殺す訳には行かない。
軽く手刀を叩きつけたり、投げ飛ばしたりして手で直接ヘルメットを外したり、エアガンのワイヤーで絡め取るなどして、20数人の暴走族のヘルメットを外した。
すると、彼らはきょとんとして自分達がどこにいるのかすら解らないような状態に陥り、その後突然パタリと倒れた。
ジョーは南部博士に事の次第を報告した。
「どうやらヘルメットを使って特殊電波で操っていたようです。
 ヘルメットを1つ持ち帰りましょう。
 後の始末は警察に任せていいですか?」
『うむ。良くやってくれた。今手配をするから、警察が到着するまで待機していてくれたまえ』
「ジュンの方はどうです?」
『まだ暴走族は現われていない。
 ジョーが相手をした暴走族がそちらも担当していたのかもしれん。
 なぜならその後警察からの報告を詳しく分析した処、両方の高速道路に同時にはゲリラが出没していないからだ。
 ジュンの方は空振りかもしれんが、このまま暫くはパトロールを続けて貰う。
 そのヘルメットに送られている電波を逆探知する必要がある。
 ジョー。警察が到着するまでの間にブレスレットに探知機を埋め込んで探ってくれたまえ』
「ラジャー」
ジョーが探知機で探り当てた場所はアラゾン山の麓だった。
ジョーとジュンが探っていた高速道路の接点がその山に近かった。
『そこにギャラクターの基地がある可能性が高い。
 健達にも出動命令を掛けた。
 ジョーとジュンは直ちにゴッドフェニックスに合体せよ!』
南部の指令が正式に科学忍者隊全員へと発令された。

「解らねぇのは、何故ギャラクターが暴走族を使って、高速道路で暴れさせていたかだ。
 もしかしたらアラゾン山へ観光に行く一般人を阻止しようとしていたのかもしれねぇな」
「そうね……。
 高速に恐ろしい殺人暴走集団が現われると言う事は報道もされているし、風評で観光客を減らそうとしたのかも……?」
ゴッドフェニックスに集合するとジョーとジュンが同一方向の意見を言った。
「2人の意見が当たっているとすれば、益々ギャラクターは自分達の基地を隠す為にこんな暴挙を行なったって事になるな」
健が纏める。
「暴走族がギャラクターの旗を立ててたってのは?」
甚平が訊いた。
「凡そギャラクターの自己顕示欲だったんじゃねぇのか?」
「そうかな?わざわざ俺達に自分達が裏にいる事を知らせていると言うのがおかしい」
健が腕を組んだ。
「さすがは健だ。その通りかもしれねぇ。
 だとすれば、これは俺達を誘き出す罠って事か?
 ギャラクターめ。相変わらず汚ねぇ手を使いやがる!」
ジョーが呻くように右手の拳を左の掌にぶつけた。
『パンっ!』と言う良い音が響いた。
『諸君。ジョーが捕まえた暴走族が正気に戻った。
 いきなり不思議な光線を浴びせられて、気がついたらあのヘルメットを被らされていたらしい。
 ジョーが警察に託したヘルメットを分析した結果、やはり脳に直接刺激が行き、ギャラクターの意のままにさせる装置が埋め込まれていた。
 諸君が考えている通り、ギャラクターは科学忍者隊を誘き出そうとしたに違いない。
 どんな罠が待ち受けているか解らないので、充分に注意してくれたまえ』
「ラジャー」
「アラゾン山が見えて来たぞい」
「よし、竜。敵から発見されないように近くのヤマナミ湖の湖底にゴッドフェニックスを隠せ」
健はマシンを使わずにその身のみで全員基地に潜入しようと考えたのだ。
「竜は待機。他の者は敵基地に潜入する」
「ラジャー」
「おらはまた置いてきぼりかいのう……」
「いざとなったらゴッドフェニックスが必要になる。
 お前の役割は重要なんだぜ。
 Gメカを残してあるからバードミサイルも使える」
ジョーが竜の肩を叩いた。
ヤマナミ湖に着水した段階で4人はトップドームから跳躍し、ゴッドフェニックスは湖底へと潜った。

アラゾン山の基地には恐ろしい罠が待ち受けていた。
まさしく『科学忍者隊捕獲機』とも言うべく仕掛けがあちこちにされていた。
最初に掛かったのはジュンと甚平だった。
健が2人は行動を共にさせていた。
ジョーと健は別々の場所で、2人からの通信を聞いた。
『電気蔦で罠に掛かってしまって2人共ブルドーザーでぶら下げた牢屋の中に入れられたわ』
『おいら達は自分で何とかするからさ。
 兄貴もジョーも気をつけて!』
それで通信が途絶えた。
『ジョー、お前は無事か?』
「当たりめぇよ」
『2人が捕まったぞ。この基地は罠だらけだ』
「それと承知して潜入したんだ。出来るだけ回避して先に進むしかあるめぇよ」
ジョーは既にいくつかの罠を掻い潜って来ていた。
健も同様に違いない。
『とにかくこの基地を破壊して、ジュンと甚平を助け出さなければ』
「ああ、いざ危険となればバードスクランブルを発信して来るだろうぜ」
『それが出来る状況に在ればいいがな』
健はそこまで心配していた。
自分の作戦ミスだったか、と今自分を責めているに違いない。
「健、自分の事を責めるのは後だ。とにかく今は進むしかねぇ!」
『解ってる!気をつけろよ!』
「それはこっちの台詞だ」
ジョーは相変わらず強気である。
「それにしてもギャラクターの隊員が全然出て来ねぇぜ」
『この罠に相当自信を持っていると言う事の表われだ。
 俺達を捕まえるつもりなんだ。
 ジョー、集中しよう。通信は切るぜ』
「ああ」
ジョーの眼の前には、ジュンが言っていた電気ショック機能が付いた蔦型の機械が現われた。
ジョーは眼を凝らして、それの動力源を見つけ、エアガンで一撃する。
彼の勘は当たっていて、動力源の破損と共に蔦型メカの動きが停まった。
先程は槍が飛び出して来る仕掛けに襲われたが、既にそれを見切って処理済だった。
エアガンのワイヤーで全ての槍を巻き取り、携帯型爆弾で破壊しておいたのだ。
ジョーは五感を研ぎ澄ませながら、更に前へと進んだ。




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