『高速道路の怪事件(4)/終章』

ジョーは大きな瓦礫の下に埋もれた。
健達が急いで駆け寄る。
「しくじっちまったが、大丈夫だ。
 みんな、早く逃げろっ!」
思いの外元気そうなジョーの声が瓦礫の下から聞こえて、一同はホッと胸を撫で下ろす。
ジョーは起き上がろうとはせずに言った。
「カッツェが自ら俺達の退路を作ってくれたんだ。
 早く行けっ!」
「ジョー、どこか遣られたのか?」
健が瓦礫を取り除きながら言った。
竜も必死になってコンクリートを持ち上げて隙間を作ろうとしている。
「足を挟まれただけだ。どこもやられてねぇ。
 エアガンでこいつを破砕してすぐに追い掛ける。
 だから、さっさと行け!
 健、おめぇはリーダーだ!
 早く全員にそう命令しろっ!」
ジョーはそう怒鳴ると、半身を必死に起こし、身体を捻った状態で、左足を潰しているコンクリートに狙いを付けた。
「ジョー。そんな事をしては、足が更に傷つきかねない」
「馬鹿野郎!俺には構わず早く脱出しろっ!
 竜、瓦礫はいいからさっさとゴッドフェニックスを動かしやがれ!」
「解った。竜、すぐに行ってくれ。ジュンと甚平も即刻脱出せよ!」
健が命令を出した。
3人はジョーをチラッと見て躊躇したが、健の強い口調に頷いて走り出した。
だが、健は残っていた。
「健、何故行かねぇ?」
ジョーはエアガンにドリルを取り付け、コンクリートを破砕し始めた。
「これなら時間は掛かるが足に傷は付かねぇ。
 早くするんだ!
 おめぇは科学忍者隊のリーダーだぞっ!
 最後に油断した俺に付き合って死ぬこたぁねぇっ!」
「ジョー、馬鹿を言うな!
 一緒に生きて還るんだ!!」
「あたぼうよ。
 そう易々と死んで溜まるかよ!」
ジョーはコンクリートの破壊に心血を注いだ。
遠くで爆発が始まっている。
「早く行けと言っている!」
ジョーが叫び、健に銃口を向けた。
「俺に撃たれて死にてぇか!?」
凄みのある眼で健の青い瞳を射抜いた。
「解ったよ…。
 早く脱出して来い。
 みんな待っている」
健はマントを翻して、その場を去って行った。
ジョーはコンクリートの破砕作業に戻った。
「くそぅ、これでは埒が明かねぇっ!」
ドリルでの破壊を諦め、ジョーは携帯型小型爆弾を取り出した。
彼の足の上に乗っている大きなコンクリートは直径3メートル程あった。
その上部目掛けて投げつける。
一か八かの賭けだった。
上部を狙えば、足への直撃を免れる可能性が高かった。
爆弾は計算通り、コンクリートを粉々に破砕した。
しかし、左足の感覚が元に戻らない。
見た処、少し出血はしていたが、大したものではなかった。
見掛けは擦過傷程度に見えた。
骨もやられていない、と言う感触がある。
(だが、血行を止められていたからな……)
ジョーは足を引き摺りながらも立ち上がった。
(ギャラクターを斃すまでは俺は死ねねぇ。
 こんな所で自爆に巻き込まれて死んで溜まるか!
 コンドルのジョーは無駄死にはしねぇのさ!)
足を引き摺り、時折エアガンのワイヤーと吸盤を利用しながら、ジョーは脱出口へと進んだ。
もう、罠が襲って来る事は無かった。
この脱出方法は上手く行った。
ワイヤーを撒き戻しては吸盤を外し、また先の方の天井へと貼り付ける。
そうして、無事な右足で跳躍しながらジョーは進んで行った。
『ジョー、爆発までもう間もないぞ!』
ブレスレットから健の声が聞こえた。
「もうすぐ出られる。
 俺に構わずゴッドフェニックスで安全圏まで退避しろっ」
ジョーはブレスレットに怒鳴った。
やがて基地は誘爆を繰り返し、ついに大爆発を起こした。
彼は再び爆風で吹き飛ばされた。

爆発が落ち着いてから、ゴッドフェニックスが静かに降りて来た。
「みんな、早くジョーを探すんだ」
ブレスレットに呼び掛けてもジョーからの応答がなく、健が皆に命令を出した。
悲壮感を漂わせながら、全員で瓦礫を取り除く作業を始めたが、何しろ基地の規模が壮大だった。
「甚平、G−4号機で瓦礫を処理してくれ」
「ラジャー!」
甚平が健に答えて踵を返した時、ガラガラと音がして、瓦礫の中からジョーの生身の腕が出て来た。
「……俺なら、此処に居るぜ。
 ブレスレットが爆風で吹っ飛んぢまった……」
ジョーは奇跡的に助かったのだ。
「ジョー!」
全員が駆け寄り、竜がジョーの身体を覆っている瓦礫をいとも簡単に払い除けた。
「死なねぇって言っただろ?健」
ジョーが笑った。
「怪我はないか?」
健はジョーの身体を見回した。
額から血を流してはいるが、他に左足以外には目立った外傷はない。
「でぇ丈夫さ。
 遣られたのはさっきコンクリートの下敷きになった左足だけだ。
 俺とした事が最後の最後にしくじっちまった。
 心配掛けてすまねぇな……」
「本当だよ、ジョー。
 でもおいら達も人の事は言えないけどさ……」
「全員無事だ。本当に良かった。
 さあ、南部博士に報告して早く基地に帰還しよう」
「ああ……」
ジョーは健の肩を借りて立ち上がった。
足を引き摺ってはいたが、彼は元気そのものだった。
治療を受ければ元通りになるだろう。
ジョー本人も、科学忍者隊のメンバーも、その表情は明るかった。
「竜はこれに懲りて、ゴッドフェニックスをしっかり守っている事だな」
健はこの一言で竜に対する小言を終わらせた。
こうして、高速道路で起きた大虐殺怪事件は無事に解決した。
だが、科学忍者隊を狙って一般人を巻き込むとは……。
互いの無事を喜び合う一方で、ジョーの拳は怒りに震えていた。




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