『G−5号、危機一髪(2)』

ジョーは博士の指示通り、海洋科学研究所に向かった。
そこで見せられたデータによると、ある島の周辺で『海賊事件』が多発している事が解った。
「南部博士。『海賊事件』はMCZ58地点のウラジン島周辺に集中していますね。
 そちらにデータを転送して貰います。
 俺はウラジン島へ向かいます」
『ジョー、くれぐれも気をつけたまえ。
 健達にも後を追わせる』
「ラジャー!」
ジョーは潜水艇で海上を走ってウラジン島に向けた。
「海賊でも何でも構わねぇ……。襲って来やがれ!」
無事にウラジン島に上陸出来るかどうかは解らない。
恐らくは海賊に身を窶したギャラクターが襲って来る筈だ。
まだ生身でいた方が良いだろう。
ジョーは変身をせずに、そのまま海路を急いだ。
途中、竜のモーターボートと思しき物を見つけ、ジョーは潜水艇を停止した。
やはり竜は此処でギャラクターに襲われたのだ。
モーターボートの中には海水が大量に入っている。
転覆しなかっただけでも、幸いだと言えよう。
「こちらG−2号。竜のモーターボートを発見。
 襲われた場所はこの地点に違いねぇ。
 そろそろ俺も……」
そこまで言い掛けた処で、怪しい海賊船に模した巨大なメカ鉄獣が海水を盛り上げて海中から現われた。
ジョーの潜水艇はG−2号機を搭載出来る程度の大きさなので、簡単に煽りを受けて転覆した。
「くそう。潜行していたらもっと早く気が付いたのによ……」
悔しさを滲ませながらジョーはブレスレットに向かって言った。
「海賊船を模したメカ鉄獣が現われた!
 俺の潜水艇は転覆して中に飲み込まれそうだ。
 逆噴射をすれば戻れるかもしれねぇが、このまま一か八か人質となって中に潜入する」
『ジョー!』
健の切羽詰った声が聞こえた。
「恐らく竜はメカ鉄獣の中に捕らえられていると思うぜ。
 救い出すには一番手っ取り早い。
 ブレスレットを俺が預かっていれば良かったんだが……」
ジョーが乗っていた潜水艇はついに敵の鉄獣の中に吸い込まれた。
ジョーはG−2号機に乗り込んで、「バード、GO!」と叫んだ。
虹色に包まれながら、マシンと共に変身を果たした。
そのまま正常な向きに戻った潜水艇の中から飛び出す。
ガトリング砲を発射したままで、ジョーはG−2号機から飛び出した。
マシンガンを構えて出迎えた敵兵が驚く。
「か…科学忍者隊!」
「捕らえてみたら科学忍者隊だったとは愚かだったな……。
 ウラジン島には何がある?
 近づく者を海賊を装って誘拐していたとなっては、ウラジン島にはおめぇらの基地があるとしか考えられねぇな」
ジョーがニヤリと笑った。
敵兵がたじろいだ。
「健、聞いての通りだ。ウラジン島へ行ってくれ。
 こっちは俺が何とかする!」
ジョーはブレスレットに向かって言った。
「俺は竜を見つけて助け出し、爆弾を仕掛けて脱出する!
 俺を気にせずにウラジン島へ向かってくれ。
 場合によってはそっちに竜や人々が捕らえられている可能性も否定出来ない。
 宜しく頼むぜ」
『解った!ゴッドフェニックスが使えない以上、仕方がないな。
 ジョー、充分に気をつけてくれ』
「解ってる!」
ジョーはマシンガンの弾雨の中に突っ込んで行き、走り抜けた。
彼が通った後には、羽根手裏剣が刺さった隊員達が累々と倒れて行った。
竜と捕らえられた人達を助けなければならない。
「南部博士。海賊船型メカ鉄獣に潜入しました。
 捕らわれている人達は鉄獣の中かウラジン島の基地にいるものと思われます。
 助け次第連絡しますので、国連軍の救援部隊を手配しておいて下さい」
『解った。成功を祈る』
短い返答があった。
南部は先程海洋科学研究所から転送されたデータの解析に忙しいのだろう。
ジョーにはそんな事を気にしている余裕は無かった。
敵兵は次から次へと現われる。
ジョーはその内の1人を周りを牽制しながら締め上げた。
「誘拐した人々はどこにいる?」
「………………………………………」
「言えっ!」
エアガンを喉元に突きつけると、敵兵は観念したかのように、
「司令室の『脳波増幅マシン』の中だ……」
と消え入るような声で告げた。
「司令室はどっちだ?」
男は震える指である方向を指差した。
ジョーは黙ってその男の首筋を銃把で殴りつけて気絶させ、周囲の敵兵を一掃する作戦に出た。
羽根手裏剣とエアガンを使用して、バッタバタと敵兵を薙ぎ倒して行く。
勿論、その身体も武器だ。
羽根手裏剣で手の甲を射抜かれて痛みに顔を顰(しか)めている敵の鳩尾を膝で蹴り、反転して後ろの敵に右腕で重いパンチを繰り出した。
効果覿面で2人が同時に伸びた。
ピシュッ!と音を立て、羽根手裏剣が宙を舞う。
タタタタタ!と小気味良い音を立てて、エアガンの三日月型キットが敵の首筋を面白いように叩きつけて行く。
ジョーは気合を発するのみで、派手に武器の名前を言ったりする事はないが、その武器が立てる音が、そして、彼が闘っている音が、充分に彼の存在感を示している。
その姿は豹の如く、そしてコンドルの如く、素早く、眼に留まらない程のスピードで敵を凌駕して行く。
目的の場所は確実に近づいていた。
気に掛かるのは『脳波増幅マシン』と言う敵兵の言葉だ。
竜や人々をおかしなマシンに掛けて、メカ鉄獣の動力にでも使おうと言うのだろうか?
とにかく一刻も早く助け出さなければならない。
人々を脱出させなければ、このメカ鉄獣を爆破する事も出来ないのだ。
ジョーは1つの扉を見つけて、体当たりで飛び込んだ。
間違いない、此処だ。
透明の棺のようなケースに1人ずつ横たわり、頭にやたらにコード類がついたヘルメット状の物を被せられていた。
ジョーはブレスレットに向かって囁いた。
「こちらG−2号。人質はやはり鉄獣の中にいました。
 『脳波増幅マシン』とやらに掛けられています。
 これから救出に当たりますので、救援部隊をメカ鉄獣の上空に待機させて下さい」
『解った!すぐに手配する。くれぐれも気をつけたまえ』
南部はデータの解析が終わったのか、先程よりはしっかりと返事をしてくれた。
解析データは恐らく、基地に潜入した健達の方に役立つ内容だったようで、ジョーには告げられなかったのだ。
罠が張られている可能性もあったので、ジョーは神経を集中させながら部屋に乗り込んだ。
自分までやられてしまっては、人々を救うどころではなくなる。
まずは竜を探す事だ。
エアガンを先兵にジョーはそれぞれのケースを見て回った。
居た!
40数個あるケースの中から竜を見つけ、ジョーはまずケースから出ているワイヤーをエアガンで撃ち切った。
その時、彼は敵兵にまた囲まれた。
「くそぅ!」
ジョーはケースの扉を足で蹴って開けた。
竜はハッと気が付いた。
「ジョー!」
「竜。昼寝している場合じゃねぇぜ。
 生憎ブレスレットは健が持っているが、おめぇも少しは俺に加担しろ!」
「健達は?」
「ウラジン島の基地だ!
 いいか、俺の足を引っ張るなよ。
 俺がこいつらを叩きのめしている間におめぇは人々をケースから出すんだ。
 1箇所に纏めておけ。早くしろ!」
「解った!」
竜が行動を開始したのを見て、ジョーは安心して闘いを始めた。
「ふはははははは!」
ついに敵の隊長が眼の前に現われた。
「邪魔しに来たか、科学忍者隊」
「当然だろ?おめぇらの悪事を黙って見過ごせるか?
 ウラジン島の基地には一体何があるんだ?
 このメカ鉄獣を使って、人を近寄せない処を見ると、相当に重大な基地なんだろ?ん?」
ジョーは挑発的にニヤリと笑った。




inserted by FC2 system