『G−5号、危機一髪(3)』

「言えよ!ウラジン島には何がある?」
ジョーは隊長を足蹴にして、ヘッドロックをかまし、そのまま死なない程度に首を締め上げた。
南部博士はウラジン島の事について既に調査済みなのだが、ジョーには知らされていなかった。
「言う訳がないだろう。
 小生意気な小僧め!
 こっちにはまだ人質がいる!」
ジョーが眼をやると、竜が人々を助ける途中でギャラクターの隊員に囲まれ、ホールドアップしていた。
竜なら心配は要らないだろう。
そうは思ったが、今の竜は生身だ。
ジョーは眼にも留まらぬスピードで羽根手裏剣を繰り出し、竜を取り囲む隊員達1人1人の首に命中させていた。
相変わらず見事な腕前だ。
バッタバタと面白いように敵兵が倒れて行った。
お陰で竜は自由になり、まだその周囲にいたギャラクターの隊員達と格闘を始めた。
(とにかく早く全員を救出してくれ、竜!
 頼んだぜ……!!)
ジョーは直接声を掛けられず、内心で無事に済む事を祈った。
声を掛けたら仲間だと感づかれてしまう。
力自慢の竜はその膂力であっと言う間に自分の周囲の敵を片付け、手をパンパンと払う動作をすると、また人質を助ける作業に戻った。

ジョーが竜を囲んだ敵兵に羽根手裏剣を放っている間に隊長はヘッドロックから逃れてしまっていた。
そのお陰で今度はジョーがマシンガンに包囲される羽目になった。
だが、彼はホールドアップなどしない。
こんな奴らに屈して溜まるか、と言う強い気持ちがあった。
銃を投げ出す振りをしておきながら、突然逆立ちをしたかと思うと、自分の後方にいた敵兵を両足で挟んで、向かい側の敵兵に向けて投げ付けた。
これで7〜8人が巻き込まれて床にどっと倒れ込んだ。
ジョーはそれを見計らって、エアガンと羽根手裏剣で攻撃を仕掛けて行く。
敵兵はジョーに向かって更にマシンガンの銃口を持ち上げたが、ジョーの動きが早く、同士討ちを考慮して躊躇った。
ジョーはその機を見逃さず、羽根手裏剣を雨あられと降らせて、1度に多数を斃して行く。
どう言う加減なのか、羽根手裏剣は微妙な指先の技で、狙い通りに決まって行った。
此処まで羽根手裏剣を使いこなせるのは、科学忍者隊の中でも彼しか居まい。
射撃と羽根手裏剣はコツが同じなのかもしれない。
とにかく動体視力が並外れて良い事、そして手先が器用でなければ、こんな真似は出来ない。
彼は後ろ向きに宙返りをして、その足で後方の敵兵を勢い良く蹴った。
次の瞬間には壁に足を着きジャンプして、一瞬の内に離れた敵兵に近づき、両手でその腹へ連続パンチを見舞っていた。
ジョーの闘いの最中(さなか)、竜は必死に人々を助けていた。
彼が平服である事が幸いしてか、勇気ある何人かが竜を手伝い始めていた。
作業スピードが確実にアップした。
ジョーはそれをしっかり見届け、ニヤリと笑った。
それを見極めるだけの余裕が彼にはあった。

そして全員が『脳波増幅装置』から解放された。
ボーっとしている者が多かったが、幸いにして後遺症はないようだ。
多分後で南部博士が検査をする事だろう。
「甲板に出ろ!
 上空に国連軍の救援部隊が来ている筈だ!」
ジョーは人質達に向かって叫んだ。
竜はすぐにジョーの意図を察し、全員を誘導し始めた。
甲板に出ると上空に大型ヘリコプターが2機やって来ていた。
縄梯子から国連軍の兵士が下りて来て、人質を上らせる。
竜は全員が大型ヘリコプターに乗り込むのを見届けた。
「あんたも早く上がるんだ!」
国連軍の兵士が怒鳴ったが、
「いんや、おら、ちょいとウラジン島に用があってよ……」
飄々とそう言って、竜は驚く兵士を尻目に海へと飛び込んだ。

ヘリコプターが去って行く音を聞いて、ジョーは竜が上手く役目を果たした事を悟った。
「ようし……」
彼が乗って来たG−2号機を積んだ潜水艇はこの海賊船を模した艦の中にある。
時限爆弾を仕掛けて上手く脱出出来るだろう。
「こちらG−2号。
 人質は全員竜が救出したぜ」
ジョーは敵兵を薙ぎ払いながら、健に通信した。
『博士から聞いている。
 今、その艦にはお前1人だ。
 やられるなよ、ジョー』
健達の方も無事にやっているようだ。
あちらも戦闘中である事を示す音が背後から聞こえていた。
ジョーは安心して思いっ切り暴れる事が出来た。
高く跳躍して天井を蹴り、エアガンを的確に発射する。
そして、敵兵が倒れて行くその間に、ズンズンと部屋を移動しながらペンシル型爆弾を数箇所に投げ付けながら、潜水艇が保管されている方角へと風のように走った。
機関室もそちらの方角にあると彼は読んでいた。
敵兵は相変わらずわらわらと現われたが、彼の敵ではなかった。
その肉体を刃(やいば)のようにして、ジョーは先へと進んだ。
ペンシル型爆弾は仕掛けた順に徐々に爆発して行った。
そして、漸く見つけた機関室に、ブーツの踵に仕込んであった時限爆弾をセットした。
彼には1分30秒もあれば充分だった。
タイマーをセットしてジョーは力の限り早く走り、潜航艇を見つけて乗り込み、すぐに発進した。
彼が脱出した直後に海賊船型メカ鉄獣は大爆発を起こした。
潜水艇はその煽りを受けて逆さになりそうになったが、辛うじて持ち堪えた。
「こちらG−2号。
 鉄獣は爆破した。
 これから応援に向かう」
『良くやってくれた!
 こっちには竜も合流して変身を完了した。
 待っているぞ!』
健の声がはっきりと返って来た。

ジョーは潜水艇でウラジン島に付けると、G−2号機を上陸させて発進した。
「ようし、大暴れしてやるぜ!」
ジョーはG−2号機毎敵の基地へと乗り込んで行った。
敵兵を跳ね飛ばし、ガトリング砲で薙ぎ倒しながら、基地の奥深くへと進入した。
「健!戦況はどうなっている?」
『この島にはウラン鉱が眠っている。
 大掛かりなウラン採掘工場が作られていた。
 これはISOでもまだ発見出来ていなかった事だと言う博士の話だ。
 ウランを爆発させない程度に皆で小型爆弾で地道に施設の爆破を試みている。
 が、邪魔が入って、なかなか作業は進んでいない…』
「解った。
 俺はメカ鉄獣の爆破で手持ちのペンシル型爆弾を使い果たしちまった。
 ギャラクターの隊員は俺が引き受けるから、その間に作業を進めてくれ」
言っている間にジョーは既にG−2号機から飛び出し、健の電波を辿っていた。




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