『悪い予感(3)』

ジョーはG−2号機に飛び乗り、SA−64地点へと急いだ。
最高時速に近い時速を出して走りまくると、ゴッドフェニックスがジョーを拾いにやって来た。
ゴッドフェニックスのコックピットに上がって行くと、健が苦笑して迎えた。
「ジョー、お前の言う通りになったな。
 また俺は本業をやり損なった」
「それもこれもギャラクターのせいさ。俺のせいじゃねぇぜ」
「解ってるよ…」
健は自嘲的に頷いた。
ギャラクターがいる限り、このような事はこれからも続くのだ。
一刻も早く倒すしかあるまい。
「博士から聞いている。ヴィーヴル博士達は無事だそうだな。
 1人で良くやってくれた」
「当たりめぇだろう?それが俺の任務さ。
 それより、発信器の追跡の方は順調なのか?」
「ああ、大丈夫だわさ。北北東に向かって進んどるわい」
ジョーの問いには竜が答えた。
「あれが偽物だったと言う事を知って驚いたぜ」
健がジョーを見た。
「俺もお前と別れた後に聞いた。博士が俺の勘を信じて、用意してくれたらしい。
 事前におめぇに言ってやりたかったんだが…、すまねぇな」
「博士の指示だろう。仕方があるまい。
 俺は正直言って肝を冷やしたがな」
ジョーは健の肩にポンと手を置いた。
「まあ、偽物って事は、また本物の実験があるって事だ。
 その時は張り切ってやれよ」
慰めるような口調だった。
「そうだな…。確かにその通りだ」
ジョーは健の答えを聞いて自席に着いた。
「追跡レーダーの監視は俺がやるぜ」
「解ったわ。ジョー、お願いね」
ジュンが答えた。

「発信器の点滅の位置が止まったぜ」
やがてジョーがそう言ったのは、それから10分も経ってはいなかった。
「RX−291地点だ。竜、スクリーンに映像を拡大してくれ」
ジョーが告げた情報により、竜がスクリーン一杯に画像を映し出した。
「火山の麓か…。まずい場所に基地を作ったものだな…」
健が腕組みをした。
「爆弾を使うのはまずいかもしれねぇな」
ジョーも片眉を上げた。
「健、南部博士に言って、冷凍レーザー砲を搭載して出直した方が良くねぇか?」
「ジョー、それはいいアイディアだぞ。
 だが、奴らがいつ動き出すか解らん。博士の指示を仰ごう」
ジョーのアイディアは健に負けず劣らず核心を突いている事がある。
今回の彼は冴えていた。
健が南部博士に通信して、ジョーの意見を伝えると、南部はレーザー砲は国連軍に運ばせる、と言った。
とにかく、基地の中にベルク・カッツェがいる可能性を考えると、今、内部を叩いておく必要があるだろう、との判断だった。
南部博士には珍しく積極的な指示だった。
いつもなら、冷凍レーザー砲が届くまで待つように言ったに違いない。
恐らくはマントル計画の邪魔をされた事で焦っているのだろう。
だが、博士はこう付け加える事も忘れなかった。
『但し、くれぐれも爆弾類は使わないように』
「ラジャー!」
全員が明快に答えた。
「竜。火山から1km離れた地点にゴッドフェニックスを着陸させろ。
 そこで待機していてくれ。
 他の者は基地に突入する」
「またおらは留守番かいのう?」
「自分らの砦を守る事も重要な役割だぜ」
ジョーが鋭い眼で竜を見た。
竜は竦み上がったが、それはジョーの思いやりの言葉だと言う事には気付いていた。
「そうだ。それに国連軍が冷凍レーザー砲を持って到着したら、俺達に報せてくれる必要がある」
健もそう言った。
「そう言うこった。俺達も氷漬けにされちまうからな。頼んだぜ」
ジョーは竜に言い置いて、健の後に続いた。

ゴッドフェニックスを降りた4人は岩陰に隠れた。
「どうやらあそこが入口だな」
健が呟く。
そこは岩で偽装してあったが、明らかに色が違っていた。
「恐らくは『正面玄関』って奴だろうぜ」
ジョーも頷いた。
「よし、ジュンと甚平は反対側に回って、別の出入口を探して侵入してくれ。
 『正面』からは俺とジョーが行く。
 2人とも気をつけろよ」
「解ったわ」
「ラジャー」
ジュンと甚平が跳躍して、パッと岩陰から離れた。
「ジョー、行くぜ」
「おう」
科学忍者隊の2トップも行動を開始した。
2人にとって1kmの距離を走る事は、全く大した事ではなかった。
翼を使って飛翔しながら、あっと言う間に入口の正面に出た。
ジョーは右側、健は左側に付き、気配を探った。
出入口は自動ドアになっていた。
2人は敵兵の気配を感じ取って、別々に物陰へと忍んだ。
基地へ入ろうとして紋掌を合わせてドアを開いた敵兵2人を、上から音もなく舞い降りて軽々と気絶させると、2人は早速中へと侵入を果たした。
中は洞穴のようになっていたが、暫く進んで行くと、鋼鉄の基地が現われた。
「ジョー、司令室は火口の真下だろう」
「そうだろうな」
2人の意見が一致して、頷き合うと、一気に走り始めた。
敵兵がついに侵入者に気付き、マシンガンを掲げて2人の前に怒涛のように溢れ出た。
「バードランっ!」
健がブーメランで闘いの火蓋を切った。
ジョーも負けてはいない。
彼は決め台詞を言ったりはしないが、黙々と気合を発して闘う。
早速羽根手裏剣を飛ばして、敵のマシンガンを撃ち落とし、戦力を奪って行く。
そのまま黙っている彼ではない。
エアガンは既に右手に握られており、三日月型のキットが飛び出した。
1度に勢い良く十数人の敵が薙ぎ倒されて行った。
闘いの最中に、次の敵を見切っている彼である。
相変わらず目覚しい活躍を見せた。
ジョーは左手を使って倒立した。
長い脚が敵の首を左右から挟んで、そのまま脚力だけで敵兵の群れへと投げ込んだ。
悲鳴を上げて、敵兵が纏めて倒れて行く。
その間にも右手で別の敵に向けてエアガンを発射していた。
健も見事な肉弾戦を繰り広げている。
2トップの闘いは磐石で、まるで演舞を見ているかのように滑らかな動きだった。
早回ししているカンフー映画のアクションシーンよりも早い。
それだけの動きをしても息も切らさない2人である。
ジョーは側転を続けて、敵兵を蹴り飛ばし続け、健はジャンプして「バードキーック!」と叫んでいる。
(相変わらず大仰にアピールする奴だ…)
ジョーはニヤリと笑った。
激しい闘いを繰り広げている中でも、ジョーにはそんな余裕があった。
今度は真横に回転しながら、長い脚を繰り出した。
また敵兵がバタバタと倒れて行く。
続いて、肘鉄を勢い良く敵兵の喉に喰らわせて昏倒させた。
面白いように技が決まって行った。
「ジョー、行くぜ」
「ああ」
また、同じ事を言い合って、2人は奥へと進んだ。
中枢部に近づくに従って、敵兵の数は益々増えて行った。
「とにかくカッツェを探す事が先決だ。
 この前線基地にいるに違いねぇ」
「そうだな。今回は出張って来ているだろう。
 司令室を探すとしよう」
健もジョーに同意した。
2人で敵兵を薙ぎ払い、道を切り拓きながらどんどんと前へと進んで行った。
科学忍者隊の2トップの敵など最早雑魚兵の中には居なかった。
ジョーは羽根手裏剣で軽くいなした。
彼が通り過ぎた後には、敵兵が山となって崩れ落ちて行った。




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