『悪い予感(4)』

武器を使い、また肉弾戦を繰り広げながら、2トップはズンズンと先へと進んで行った。
素晴らしい動きで敵兵を凌駕している。
「そろそろ火口の真下だぜ」
「ああ…。ギャラクターの隊員も益々増えて来たな」
「冷凍レーザー砲が到着したと言う連絡はまだねぇ。
 早い処、カッツェを探して絞めてやろうぜ」
火山の火口を塞いでしまう程の規模のレーザー砲だ。
準備にも時間が掛かる事だろう。
マグマを凍らせる威力を持つ、大規模なレーザー砲が必要だった。
或いは複数の物を用意しているのかもしれない。
南部博士は不可能を可能にしようとしている。
国連軍の戦闘機に搭載して、直接撃てるようにしている可能性もある。
ジョーはそう思いながら、回転してその勢いのまま敵兵に重い膝蹴りを喰らわせた。
健は別の敵兵に握り拳を打ち付けた。
2人はそれぞれの敵と闘いながら、話をしている。
「敵の中枢部…司令室がそろそろ見えて来てもいい筈なんだがな」
ジョーが呟いた時、健がある場所を指差した。
「ジョー、あっちから光が見えた。行ってみよう」
「解った!」
ジョーは敵兵に羽根手裏剣を浴びせ、尚且つ飛び蹴りを喰らわせながら、着地した。
「行こうぜ、健」
「ああ!」
2人はその光が見えた方向へと向かった。
「ドアから隊員が出て来た時の光かもしれねぇな」
「多分そうだろう。
 あそこから次から次へと隊員が現われるんだ」
そこで再びマシンガンを構えた敵兵に囲まれた。
ジョーは健と背中合わせになり、互いの後方を守った。
相手の力量を認め合っているからこそ、自分の背中を任せられる。
この体制で周囲の邪魔者を一気に倒して中枢部に乗り込もうと言う作戦だ。
2人は言葉を交わす事もなく、阿吽の呼吸で自然に背中を相手に預けたのだ。
闘いの中で培って来た信頼関係だった。
それぞれの飛び道具を使って、敵兵を倒し、全身を武器と成して格闘を続けた。
ジョーはこれでは埒が明かないと思った。
そこである事を閃いた。
これで敵兵を一掃出来る。
「健。竜巻ファイターだ。俺の上に乗れ!」
「よし!」
ジョーの手をジャンプ台にして、健はジョーの肩の上に乗った。
背はジョーの方が5cmだが高い。
体重は同じ60kgだったが、膂力はジョーの方が上だった。
「科学忍法竜巻ファイター!」
健の掛け声と同時にジョーが動力源となり、回り始めた。
2人ヴァージョンでも強力な竜巻が発生して、あっと言う間に周囲の敵兵を一掃した。
難なく着地した2人は、目的の部屋へと急いだ。

頑丈な扉が2人を待っていた。
だが、隊員が出入りしているのだ。
入る方法はある筈だ。
「ジョー、これだな」
健が指差した場所に、小さな四角いガラス窓があり、そこに紋掌認証装置があった。
「健、下がっていろ」
ジョーがエアガンでそれを狙い撃つと、ドアは自動的に開いた。
健が素早く部屋に飛び込んだ。
ジョーも負けじとそれに続いた。
大型コンピューターが不気味な音を立てている無機質な部屋だった。
そこに例の『マントル13号』の機体が運ばれており、カッツェが部下に向かって怒鳴っている処だった。
「ヴィーヴルの拉致を失敗したばかりか、偽物を掴まされるとは何と言う失態!
 貴様らはたるんでおる!」
カッツェの紫の仮面の眼が心なしが釣り上がっているように見えた。
「ベルク・カッツェ!
 マントル計画を妨害し、ヴィーヴル博士を誘拐してその頭脳を手に入れようとは何たる悪党振りだ!」
健がカッツェの眼の前にヒラリと舞い降りた。
「ガ…ガッチャマン!」
その時、カッツェは後ろをコンドルのジョーに押さえられている事に気付いた。
左腕を強く後ろに折り曲げられた上に、ジョーのエアガンがカッツェの背中に押し当てられていた。
「ヴィーヴル博士は俺が助けた。
 計画が水の泡になって残念だったな」
「コンドルのジョーは勘がいいんだ。
 今回お前達が出て来る事も彼の勘が働いた。
 だから、事前にマントル13号を擦り替えておく事が出来たのさ。
 残念だったな、カッツェ!」
健がカッツェの鳩尾に膝蹴りを浴びせた。
「おっと、弾みで銃が暴発するかもしれねぇぜ」
ジョーは凄みを利かせた。
「ガッチャマンは怒らせると怖いんだ。
 今日はどう言う訳か知らねぇが、気が立っているからな。
 気をつけろよ、カッツェ!」
ジョーがニヤリと笑った。
勿論、彼はその理由を知っているが、健がパイロットだったと言う事を匂わせる訳には行かない。
カッツェが堕ちるかと言う緊迫した場面だったが、敵兵がぐるりとカッツェを挟んだ2人を取り囲んだ。
ジョーはエアガンを一旦脇の下に挟んで羽根手裏剣を多数飛ばして、それを威嚇した。
1度に10数人の敵が倒れた。
エアガンを持ち直し、三日月型のキットで片付け、またカッツェの背に当てた。
その素早さとガン捌きはなかなか真似出来るものではなかった。
そして、その間ジョーはカッツェの動きを左腕だけで見事に抑えていた。
健もカッツェを睨みつけたままで、ブーメランを1周させ、敵兵を薙ぎ倒した。
「俺達はおめぇに私怨があるんだ。
 どうなっても知らねぇぜ。
 今日こそ貴様のその紫の仮面を剥いでやる!」
その時、別ルートから潜入して来たジュンと甚平がやって来て、雑魚兵達と戦闘を開始した。
「カッツェ。言っておくがな。
 口から爆弾を出して逃げようたってそうはさせねぇぜ。
 此処は火山の火口の真下だ。
 上にはマグマが煮えたぎっている。
 おめぇもマグマに巻き込まれて死んぢまうぜ」
「さあ、どうやって逃げるつもりだ?
 ベルク・カッツェ!?」
健が凄みを効かせて迫った。




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