『科学忍者隊である事』

元々身体は柔軟性があり、敏捷な動きが出来た。
島で幼友達と遊んでいた頃から、その片鱗は見えていた。
誰よりも脚が早かったし、身のこなしが違っていた。
子供の頃に観た日本の映画の影響を受けた友達が、「まるで忍者のようだ」と俺を評した。
その俺が今、科学忍者隊の一員になっているとは何とも不思議な気分だ。
南部博士は俺のそんな処を敏感に感じ取っていたようだ。
科学忍者隊の人員を選考する時に俺と健は割と早く決まっていたらしい。
やはりそれなりの資質がないと、いくら訓練を積んでも上達には限りがある事を、博士は知っていた。
科学忍者隊の育成はトップシークレットだったが、いろいろな道の猛者達に極秘で俺達の訓練を依頼し、アドバイザーになって貰っていたようだ。
勉学から身体的訓練まで、俺達は叩き込まれた。
いつも健と一緒だった。
それ以前からの仲だったが、随分長い付き合いになったものだ。
何でこんな事を思い出したのかと思ったのだが、やはり海底1万メートルでの任務で、健と心を割って話す事が出来たからなのではないだろうか。
俺の気持ちは任務に就く前と終わった後で確実に変わった。
思い出した事実も重かったが、健に対する信頼感はまた1歩進んだように思う。
あいつは、俺の事を博士に報告しなかった。
そして、俺は飽くまでも科学忍者隊なんだと諭してくれた。
ギャラクターの子であろうと何だろうと、健は変わらずに俺に接してくれた。
寧ろ変わったのは俺の方だ。
この苦しい気持ちを押し込めて、いつしか仲間と一定の距離を置き、時には心を閉ざすようになった。
俺がギャラクターの子である事は、俺が故郷の島に単独で上陸した事で、仲間達にも知れる事になったが、誰1人俺に対する態度を変えた奴はいなかった。
有難かったぜ……。
憎むべきギャラクターの血を引いている俺を、今まで通りに仲間として遇してくれたんだ。
科学忍者隊である事を、これ程までに有難いと思った事はない。
みんないい奴ばかりだ。
カッツェに捕らえられた時、俺が言った言葉は俺の本音さ。

仲間達と大地の上で別れなければならなくなった時、俺は最後に再会出来た事に感謝した。
科学忍者隊である以上、もう俺を置いてでも先へ行け、と促すしかなかった。
俺は全く動けない身体になっていた。
最後まで任務を優先しなければならない、それが俺達科学忍者隊だ。
余命宣告を受けてその任務から外されて、勝手な行動をしたのは悪かったと思っている。
だが、俺は後悔なんてしていない。
こうしてギャラクターの本部に辿り着き、仲間達を入口に誘導する事が出来た。
これがもう死を迎えるしかない俺の最後の任務だったんだ。
みんなには辛い思いをさせちまったが、俺は辛くなんかないんだぜ。
おめぇ達が来てくれたと解った時、俺がどれだけ嬉しかったか解るか?
やっぱり俺の仲間は凄い奴らだ。
心からそう思った。
ゴッドフェニックスを見て思わずニヤリと笑ったぜ。
それから俺には力が沸いて来たんだ。
あの時、おめぇ達が来たのを知らずにいたら、俺は奴らの基地の中でただ出血多量で息絶えていただろう。
俺の人生の最期を全うさせてくれたのは、科学忍者隊の仲間達さ。
感謝しているぜ。
例えこの身体が朽ちようとも、俺はずっとおめぇ達と共に在る。
科学忍者隊がいる限りは、俺は科学忍者隊G−2号、コンドルのジョーだぜ。
死んでもその魂はそのままさ。
科学忍者隊である事を、俺は誇りに思う。
健と友として過ごせた事を。
そして、仲間達と過ごした時間を。
俺達は闘いの中で生きて来たが、ギャラクターが滅びたら、おめぇらは普通の青春を過ごして幸せになれよ。
その権利がおめぇ達にはあるのだから。
俺は残念ながら先にドロップアウトするがよ。
おめぇらが来るのを待って、それから同じ時代に生まれ変わりてぇ。
もう1度じっくりとおめぇ達と青春を送りたいから。
俺を科学忍者隊にしてくれた南部博士、俺がギャラクターの子だと解っても変わらずに受け入れてくれた仲間達。
本当に感謝している。
一足先に逝って待っているから、ジジイとババアになったら追い掛けて来いよ。
それまで、どんなに長くても待っていてやる。
あの世でもう1度逢おうぜ。
おめぇらがどんなに老けていても驚きゃしねぇよ。
だって、これからずっと俺はおめぇらを見守り続ける気なんだからな。




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