『砂漠の街(1)』

国際科学技術庁・ISOは南方にある砂漠の街に水路を引いて、活性化しようと10年計画で施工をし、漸く完成に漕ぎ付けていた。
南部博士は、これがギャラクターの標的になるだろうと言う予測を元に、国連軍に警護を頼んでいた。
その国連軍が撃破されたと言う一報が入ったのは、現地時間の未明の事だった。
ギャラクターの仕業以外には考えられない。
すぐさま科学忍者隊に集合が掛かった。
全員が速やかにバードスタイルで三日月基地へと集合した。
ユートランドは陽が沈み掛けている時間だった。
ジュンと甚平は店を畳み、その店にいた健と竜が同行して来た。
ジョーはサーキットにいたが、すぐにコースを外れてこちらへ向かった。
街中は夕方で道が混み合うので避け、山道を走り、ヨットハーバーの竜と合流して基地へと向かったのだ。
「諸君、素早い集合だった。さすがは科学忍者隊だ。
 早速だが、これを見てくれたまえ」
南部がボタンを押すとスクリーンが下りて来た。
「現地時間の明日、オープニングセレモニーが行なわれる事になっていたのだが、それを前にして警護に就いていた国連軍が何者かに全滅させられた。
 これはギャラクターの仕業に違いあるまい」
南部はスクリーンを指差した。
「これは一般市民が撮影したものだ。
 見たまえ。飛行空母型のメカ鉄獣だ。
 これがミサイル数発でいとも簡単に国連軍を撃破してしまった。
 今はこの砂漠の街を護る者がいない状態に陥っている」
「つまり、我々科学忍者隊が出動してこのメカ鉄獣を倒し、街を護ると言うのが今回の任務ですね?」
健が南部の指令を先読みして答えた。
「その通りだ。ギャラクターは10年計画で完成させた水路を横取りして、何かを企んでいる。
 絶対に阻止せねばならん!」
「ラジャー!科学忍者隊出動します!」
全員がゴッドフェニックスの格納庫に走り、シュシュッと軽快に乗り込んだ。

現地に着いて、現状をメインスクリーンに映し出すと、ジュンが思わず「酷いわ…」と呟いた。
いつもの事だが、国連軍の戦闘機の残骸が砂漠の街に墜落し、あちらこちらで火の手が上がっていた。
水路から取る水には限りがある。
国連軍の別の機が消火剤を撒きにやって来たが、これもギャラクターに撃墜される始末だった。
「折角国際科学技術庁が10年もの年月を掛けて成し遂げた物を奪い取ろうなんて、許せねぇぜっ!」
ジョーが唇を噛んだ。
「ジョー、レーダーに反応はないか?」
健が訊いた。
「ああ、今の処、ねぇな」
「南部博士からも敵の動きについての連絡はないわ」
「竜、とにかくこの砂漠の街を周回してくれ。
 ゴッドフェニックスを囮にして、敵を誘き出すんだ」
「ラジャー」
「健、奴らの目的は何だ?
 ただ国際科学技術庁の妨害をしているだけには思えん」
ジョーがレーダーから眼を離さないまま、腕を組んで言った。
「そうだな…。もし、この砂漠の街に基地を作ろうとしていたら?」
健の答えにジョーは閃いた。
「もしかして、この街には何かしらの資源が眠っているんじゃねぇのか?」
だとすれば、説明が付く。
ギャラクターの常套手段だからだ。
健が早速南部博士に問い合わせた。
『その街には資源はないが…。
 狙っているとすれば、水その物か、それとも……』
「それとも?」
5人が同時に訊いた。
『水路を作る為に使った資源、砂にも強く、水にも腐らない特殊な配管の材料だ。
 ヒヤリウム005と言う鋼鉄なのだが、ISOではこれを開発するのに時間を要したのだ』
「それをメカ鉄獣にでも利用しようと企んでいるのですね?」
『うむ。それは充分に考えられるな』
「解りました。メカ鉄獣を探します」
『こちらにも情報が入り次第連絡する』
南部の姿がスクリーンから消えた。
「この街を周回しながら、敵の飛行空母型メカ鉄獣が現われるのを待つしかないな」
健が呟いた。
「一旦本拠地に帰ったとも考えられるが…。
 健が言ったようにゴッドフェニックスを囮にするのが一番手っ取り早いか」
ジョーも頷いた。
ツートップの意見が一致した処で、意義を唱える者はなかった。
「竜、いつ奴らが出て来るか解らない。
 決して油断をするなよ。
 ジョー、レーダーから眼を離すな」
「言われなくても解っとるわい」
「解ってるって!」
竜とジョーの答えが被った。
ゴッドフェニックスの機内には緊張感が高まった。
誰も口を聞かずに全神経を集中させていた。
いつどこから飛行空母型メカ鉄獣が現われるとは限らない。
敵は飛行空母型と言うだけの事はあり、ゴッドフェニックスよりも高度を保てる可能性も否定は出来ない。
上空から攻撃を受けないとは限らなかった。
「む?レーダーに反応あり。真上から急速に何かが近づいている!」
「何?竜、急速旋回!」
ジョーの声に健が即座に反応した。
それは強力なミサイルだった。
国連軍はこれにやられたのだ。
辛うじてゴッドフェニックスはこれを交わした。
ジョーが一瞬でもレーダーから眼を離していたら危なかった。
「ついに餌に引っ掛かって来やがったぜ!
 バードミサイルをお見舞いしてやる!」
「ジョー、待て!まだ早いっ。敵の出方を見てからだ。
 必要となれば充分にやって貰う」
立ち上がり掛けたジョーは健に停められたが、健の言い方が良かったので、その勢いを止めて自席に収まった。
健もジョーの扱い方が上手くなって来たのかもしれない。
それに、ジョーもリーダーである健の冷静な判断に、素直に感じ入るものがあったのだ。
こんな時に自分は絶対にリーダーの器じゃない、と彼は思い知る。
だが、ジョーはそれで構わなかった。
No.2の立場を楽しんでいるようにも見えた。
また、敵の強力ミサイルがゴッドフェニックスを襲って来た。
竜は辛くも交わしたが、全員がコックピットで転倒する程の凄まじい衝撃を受けた。
「このミサイルは何か衝撃波を発しているようだな…」




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