『Gun Test』

「ジョー、君だけを呼び立てたのは他でもない。
 科学忍者隊に新しく装備をしようかと思案中の銃器のテストを君に頼みたいのだ」
南部博士にジョーは1人呼び出された。
「そいつは構いませんが、それぞれの手に合うかどうか、と言う点では1人1人に撃たせてみた方がいいと思いますよ」
「それはそうなんだが…、強力な弾丸を開発した為に撃った時の衝撃が強い。
 まずは忍者隊随一の射撃の名手である君に、この銃器自体が武器として使いこなせるかどうかを試して欲しいのだ」
「成る程。そう言う事なら、勿論やりますよ」
ジョーは新銃器のテストを請け合った。

ジョーは特別室に入室した。
耳にはイヤープロテクターを装備している。
普段彼が受けているような激しい射撃訓練とは違い、停止した的に弾丸を撃ち込んで行くだけの作業だったので、ジョーにとってはまさに朝飯前の簡単なテストだった。
指示に従って、1発…2発…と引き金を絞って行く。
撃った時の衝撃は、彼が普段使っているエアガンとは比にならない位の強さだ。
一般人なら銃を撃った反動だけで骨が砕け兼ねない。
そして標的が粉々に砕け散る程強力な弾丸だった。
(これじゃ、ミサイルと変わらねぇぜ……)
ジョーもその威力に舌を巻く程だった。
勿論、標的のど真ん中を撃ち抜くジョーの腕があってこその物ではあったが……。

『どうかね?ジョー』
テストを終えると、ガラスの向こうに居る南部の声がブレスレットから流れて来た。
「これは…、確かに強力ですが、弾丸が強力過ぎて反動が大きい…。
 健や竜ならともかく、ジュンと甚平には扱いがかなり難しいかもしれません。
 それと、重大な欠陥が1つ……」
ジョーが息をつくと、南部が眉を顰(ひそ)めた。
『何かね?ジョー』
「銃その物が弾丸の威力に負けて、暴発し兼ねません」
『何だと?』
「3発目から既に銃砲が熱くなり始めました。11発目で銃身の一部が溶けました。
 バードスタイルなら熱さには耐えられるでしょうが、もし銃が暴発若しくは爆発すれば、指の1本や2本、いや、悪ければ腕が吹っ飛んでしまうかもしれませんよ」
ジョーは強化ガラスの向こうにいる南部博士に右手に付けていたグローブを見せた。
「この通り、グローブが溶けて掌から剥がれません」
グローブはあちこちが溶けて穴が開き、ジョーの右手は真っ赤に火傷をして腫れ上がっていた。
『そうか……。ジョー、ご苦労だった。この武器開発は失敗に終わったようだな。
 すぐにその手を治療するから上がって来たまえ』
「残念乍らそのようです、博士。白兵戦では長くは使えません。
 弾丸を強力化する事に注力し過ぎて、肝心な銃砲の方の強化が追い付いていませんね」
ジョーはイヤープロテクターを外しながら答えた。

「ジョー、こっちに来てその手を見せてごらん」
南部博士が子供時代のジョーに話し掛けるような口調で呼んだ。
「大した事ないですよ、博士」
ジョーは素直に掌を見せたが、博士は「これは酷い…」と眉間に皺を刻んだ。
「ジョー、済まん。危険なテストをさせたようだ」
「なぁに、もし銃が暴発したとしてもそれを避けるだけの手段が俺にはありましたから。
 それでなければ、途中でテストを中止するように進言しましたよ」
「すぐに医務室へ行きたまえ!君の右手は科学忍者隊の宝だからな」
「えっ?」
思わずジョーは間抜けな声を出してしまった。
南部がそんな風に思っているとは考えてみた事もなかったからだ。
「……解りました。すぐに治療して貰って来ます」
ジョーは素直に医務室へと向かうのだった。




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