『ゴージャシー島カーレース(3)』

2トップは息を合わせて跳躍し、無事にダチョウメカの鼻から侵入を図った。
鼻の穴は案外大きく、2人が並んで走る事が出来る程広かった。
これが通風孔であると言う事は、それだけこのメカ鉄獣が巨大だと言う事である。
暫く走って行くと、鉄格子が行く手を阻んでいた。
「ジョー、まだ侵入した事を悟られるとまずい。
 ドリルを使って慎重に頼む」
「解った。時間が掛かるが仕方ねぇな」
ジョーはドリルのキットをエアガンに取り付け、作業を始めた。
幸いと言って良いのかどうかは解らないが、ダチョウの卵型爆弾を投下する音で、ドリルの音は遮られた。
ジョーは焦りを感じながら、2本の鉄格子を破った。
都合4箇所に穴を空け、壊れた鉄の棒を手に取り、そっと健に渡した。
健はそれを音を立てないように床に置く。
この2人なら充分に通れるスペースが出来た。
ジョーがヒラリと中に入り、健も続いた。
「くそぅ、この間にどれだけの犠牲が出たのか…」
ジョーが唸るような声を上げた。
「とにかく急ごう」
「ああ」
「二手に分かれて、まずは人質を探そう」
「解ったぜ。俺はこっちだ!」
言うが早いか、ジョーは右手の方角へと走り出した。
健はそれを見て、左手の方へと進んだ。

2人は別ルートから司令室を発見した。
途中敵兵と出逢う事はあったが、出来るだけ目立たないように片付けた。
ジョーは羽根手裏剣を相当消費した。
これが一番手っ取り早い掃除の方法だったからだ。
司令室の出入口は2つあった。
そのそれぞれの扉の前に2人は立っている。
『ジョー、此処に来るまでの間に人質の姿は見当たらなかった。
 恐らくはこの中に監禁されているだろう』
ブレスレットから健の声が流れる。
「ああ、こっちも人質は見なかった」
『中のどこに人質が居るのか解らん。
 危険が伴うぜ』
「ああ、解ってるさ」
『タイミングを計って同時に突入するぜ』
「おうっ」
健の合図は間もなく発動した。
2人は同時に扉を爆弾で爆破して、中へと雪崩れ込んだ。
早速敵兵のマシンガンの洗礼を受けたが、ジョーは跳躍してそれを避け、人質が何処に居るのかを見極めた。
「いた!部屋の中央の檻の中だ」
『ああ、俺も確認した。
 鍵はあの前を固めている隊員が持っているだろう』
カッツェは科学忍者隊の身柄を確保しようと、案の定、この司令室に待機していた。
「ほう、自分から来てくれるとは有難い。
 だが、2羽だけか?
 ゴッドフェニックスに居ると見せ掛けて良く此処まで潜入して来たものだ。
 さすがだな。
 ガッチャマンとコンドルのジョーの2トップが自ら敵地に乗り込んでくれるとは……」
「へへへ…。
 虎穴に入らずんば虎児を得ず、って言うだろうが?
 知らねぇのか?紫のおっさん」
ジョーが鼻で笑った。
「おっさんだとぉ?この小童共が!」
カッツェの紫のマントが舞った。
それは2人を捕らえる為の合図だった。
2人の上に鉄の鎖で出来た網が勢い良く降って来た。
「健っ!」
ジョーは叫んで強い脚力で前方に飛んだ。
マントが引っ掛かったが、辛うじて避ける事が出来た。
健は白いマントを絡め取られた。
ジョーは吊るされ掛かった健を救う為に、素早くエアガンの三日月型のキットを発射した。
鉄の鎖の呪縛から逃れた健は、「ジョー、済まん」と言いながら、彼と背中合わせになった。
「気にするなって。お互い様だ」
ジョーはニヤリと笑うと、人質の様子を観察した。
怪我をしている者は無さそうだ。
市長と男女1名ずつの秘書らしき人物が檻の中に入れられていた。
「健!」
ジョーが眼で合図をした。
2人は同時に跳躍し、檻の周囲の敵兵を薙ぎ倒し始めた。
ジョーは闘いに集中し、健の作業を潤滑に進めさせる為の手助けをした。
華麗な蹴りが周囲の敵兵を払い除け、纏めてドサドサと斃して行く。
健はその間に、檻の前を守っている敵兵から何時の間にか檻の鍵を掏り取ってくるくると回していた。
その早業は本人は勿論の事、カッツェを唖然とさせた。
健は素早く鍵を開け、人質を外へと出した。
ジョーはその間にも羽根手裏剣をピシュッと鋭く繰り出し、敵兵を倒していた。
彼が回転する毎に敵が薙ぎ倒されて行く。
その鋭さは驚く程だ。
羽根手裏剣の切先を使って、敵兵のマスクを切り裂いて回る。
「ギャーっ」と悲鳴が起こって、顔から微量の血を流した敵兵が倒れて行く。
その瞬間にはエアガンの三日月型のキットがまた多くの敵を倒している。
彼1人の活躍で大分周囲の敵が手隙になった。
「健、人質を救出してさっさとずらかろうぜ。
 こいつは火の鳥で突き破って焼き尽くすのがいいだろう」
「ああ。だがこの人達を乗せたゴッドフェニックスでは火の鳥は出来ん」
健が冷静な言葉を返して来た。
ジョーは押し黙った。
確かにその通りだ。
どうやって此処を打開する?
ダチョウの卵型爆弾を抱え込んでいるこのメカを大爆発させるには、空中の空高くでなくてはならない。
ジョーの額から冷や汗が流れ出た時、ジュンからの通信が入った。
『健、ジョー。国連軍がやって来たわ。
 人質を引き渡してしまえば、火の鳥での攻撃は可能よ』
「そりゃあ、有難ぇな」
ジョーはニヤっと健に向かって笑って見せた。
人質を走らせ、前に健、後ろにジョーが付いた。
司令室に残っていた敵兵がぞろぞろと追い掛けて来たので、ジョーは忙しかった。
だが、最早彼の敵ではなかった。
長い脚を振りかざして一蹴すれば、敵兵は面白いように吹っ飛んで行った。
羽根手裏剣もふんだんに使った。
1本も無駄にする事なく、雨霰と降らせた羽根手裏剣が、敵兵を斃して行く。
走りながらも敵兵の動きは見逃さない。
前方は健に任せておけばいい。
健も同等の能力を有している。
ジョーは人質の背中を守る事に集中していれば良かった。
(しかし、カッツェの野郎を放置して来た事だけは悔しいぜ!)
彼が内心で呟いた瞬間、ドーン、と衝撃音がした。
「ジョー、どうやらカッツェが逃げたようだな」
前方から健が言って寄越した。
「そうらしいな…。相変わらず部下を見捨てる汚ねぇ奴だ。
 カッツェが逃げたとすれば、このメカ鉄獣は……」
「自爆する可能性もあるな」
「おいっ!こんな低空で自爆されては敵わねぇぜ」
「ゴッドフェニックスで出来るだけ上空に引き寄せよう」
「解った!」
「ジュン!人質は3人居る。
 救助するのに手を貸してくれ」
健がブレスレットに向かって叫んだ。
「いや、時間がねぇ。
 俺が2人を連れてトップドームへ移る。
 健は市長さんを頼むぜ」
ジョーが口を挟んだ。
市長は秘書の2人とは違って少しでっぷりとしている。
それでも2人を片腕ずつで抱えるジョーの方が負担が大きかったが、彼の膂力は健よりも勝っていた。
健とジョーが入って来た鉄格子から市長を出すのに少し手間取ったが、何とか健が前から、ジョーが後ろから押して、脱出させる事が出来た。
「よし、竜。出来るだけダチョウメカの鼻に近づいてくれ」
『ラジャー!』
2人は3人の人質を抱えて、トップドームへと跳躍した。




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