『核兵器悪用を阻止せよ!(1)』
『諸君。集まって貰ったのは他でもない。
キタセン国が作った核兵器をギャラクターが悪用しようと企んでいる事が、ISOの情報部の調べで解った」
「キタセン国と言えば独裁国家ですね。
ギャラクターが取り込みやすいかもしれねぇな」
ジョーが顎に手を当てて呟いた。
「カッツェならやりそうな事ですね」
健も南部を見た。
「その通りだ。
どうやら国家首席に働き掛けて、騙し取ろうとしているようなのだ。
それで諸君は……」
「それを阻止して来ればいいんですね」
健が先を言う。
「そうだ。私はキタセン国が製作していた核兵器の内容を以前から入手していたので、それを抑え込む為の兵器を開発していた。
それがこれだ…」
南部がボタンを押すと、床からガラスケースが乗ったテーブルがせり上がって来た。
「バズーカ砲じゃないですか?」
ジョーは驚きを隠せない。
こんな物で核兵器を?
「そうだ。これは強力な中和剤だ。
これ以上の規模にすると、周囲に危害が加わる事になる。
核兵器その物だけを狙う必要がある。
これは……ジョーの仕事だ」
南部がバードスタイルのジョーの肩を叩いた。
「危険だが…。
ゴッドフェニックスのノーズコーンからこれを撃ち込んで貰う事になる。
G−2号機のガトリング砲用に作りかえる暇がないのだ」
「ノーズコーンからって、博士……」
健が難色を示した。
「ジョーには生命綱を着けて貰い、G−2号機の前のスペースから撃ち込んで貰うのだ。
安定させる為には腹這いになって貰った方がいいだろう」
「博士。それじゃ、ジョーはゴッドフェニックスから振り落とされるわ」
さすがの竜も心配になって言った。
「そうですよ、博士」
ジュンも同意した。
健は黙って腕を組んで、
「ジョーはどうだ?」
と訊いた。
「俺にしか出来ねぇ任務だ。やってみるしかあるめぇ」
ジョーは不敵に笑って見せた。
不安がない訳ではない。
特殊弾を積み込んだバズーカ砲を生命賭けでゴッドフェニックスの機首から構える事になる。
生命綱を着けても、いつゴッドフェニックスから振り落とされるか解らない危険な任務だった。
「ジョー、嫌ならこの役目は国連軍にやって貰おう」
「俺は嫌だなんて言っていませんよ。
この規模のバズーカ砲は国連軍選抜射撃部隊の連中でも難しいでしょう。
況してや揺れるゴッドフェニックスの中からとなったら……」
「このバズーカ砲の砲弾は1弾しかない。
キタセン国の核兵器を一瞬にして凍結させてしまう効果がある。
1度凍結させてしまえば、後の処理は国連軍が行なう」
「解りました。でも、それをやる為にはゴッドフェニックスで挑発して、核兵器を出させる必要がある」
ジョーが腕を組んだ。
「そうだ。竜、危険だがその任務は君の操縦に掛かっている。
何としてもギャラクターの悪事を制さなければならない」
「ラジャー!おら、やるぞ」
「ギャラクターは恐らくキタセン国の中に基地を作っている事でしょう。
ジョーと竜の任務が終わったら、それを叩いて来る必要もありますね」
健が言った。
「健の言う通りだ。国家首席の意図は解らない。
騙されているのか、自身の心が既に毒されているのか。
その辺の判断は健に任せる」
「解りました。やってみます…」
「では、ギャザーゴッドフェニックス発進せよ!」
「ラジャー!」
全員が同じポーズをして、了解の合図を送った。
そして、ジョーはそのずっしりと重いバズーカ砲を、ケース毎受け取った。
「ジョー、今回の任務はかなり危険だぞ。
ノーズコーンを開いたままで、腹這いになって敵の核兵器を狙わなければならない。
謂わばジョーの身体はゴッドフェニックスの先端で剥き出しの状態だ。
その状態で振り回される事になる。
そんな中で1発しかない銃弾で確実に仕留めなければならない」
「解ってるよ、健…。心配するなって。
何とかやって見せるさ」
「お前の腕は信用しているんだが…。
もしも機首部分に攻撃を受けたら、と思うと、俺は正直ぞっとするぜ」
健が不安を口にした。
「おめぇはリーダーなんだ。
もっとどっしり構えていてくれねぇと、みんなが不安がるぜ。
俺が大丈夫だと言っているんだから、大丈夫さ」
「そうだろうか……」
健はまだ腕を組んで煩悶していた。
いつも危険な任務をジョーに負わせているような気がして、リーダーとしては気に掛かる。
だが、確かにこの役目はジョーにしか出来る事ではない。
「健、気にするな。
生命綱も着けるんだ。
それが切れない限りは俺は何とかゴッドフェニックス内に留まっていられるだろう。
そう簡単に死ぬもんじゃねぇぜ」
「だが、傷を負わないと言う保障はないぞ」
「解ってるが、仕方がねぇだろう。
多少の事は覚悟しておくさ。
俺の他に誰かが出来る任務じゃねぇ。
気にすんな」
「確かにそうだな。
俺達はジョーの無事を願っている事しか出来ない」
「そうよ、健。ジョーはきっとやってくれるわ」
「ジョーの兄貴は凄いスナイパーだもんね」
「おらもジョーを信用する。
マタンガーの時の仕事振りを思い出せや、健」
全員が健を説得した。
健だって、このままジョーを送り出すより他ないと言う事など、解っている。
ただ、不安なだけだったのだ。
「リーダーの気持ちが揺らいでいるようじゃ、俺達の士気に関わるぜ」
ジョーが健の肩を叩いた。
「そうだな。ジョー、充分気をつけてな。
成功を祈るぜ」
「博士みてぇだな」
ジョーはニヤリと笑った。
「とにかくまずは敵の出方を待つしかねぇだろ?」
「ああ。キタセン国は間もなくだ。
領空侵犯で攻撃して来る可能性もある。
竜、気をつけて掛かってくれ」
健が注意喚起をした。
「解っとる!」
竜はいつもの台詞で答えた。