『核兵器悪用を阻止せよ!(3)』

コックピットに上がったジョーの姿は左肩が血の海から上がったかのようだった。
「ジョー、やはり負傷していたのか?」
健が駆け寄る。
「出血が酷いが…大したこたぁねえ。
 流れ弾に当たっただけだ。
 心配するな、弾は貫通している」
「心配するわよ。バードスーツを突き破っているのよ」
ジュンがすぐに応急処置を始めた。
「……すまねぇな、ジュン」
「さて、これからどうするかだが…。
 南部博士応答願います」
健がスクリーンを見上げた。
「ジョーが任務を果たしました。
 キタセン国には大規模な基地が建造されているものと思います。
 潜入して叩いて来ます」
『うむ。そうしてくれたまえ。
 基地を残しておけば、また同じ事を繰り返すに違いない。
 ん?ジョーは負傷しているのか?』
「流れ弾に当たっただけですよ。
 心配しないで下さい」
ジョーは答えたが、顔色は決して良くなかった。
「大丈夫じゃありません。出血が酷いです」
ジュンが言った。
『危険な任務をさせたな、ジョー』
博士が労わりの表情を見せた。
「なぁに、大した傷じゃありません。
 弾丸も体内には残っていませんし」
「とにかく赤外線モニターで、辺りを探ってみます。
 敵基地が見つかってもジョーはゴッドフェニックスで待機させます」
『それがいいだろう』
「ふざけるな。俺は大丈夫だと言っているだろう?」
「足手まといだ」
「何?!今までに負傷したとしても足手まといになった事が1度でもあるか?」
「ある。『マーズ引き寄せ計画』の時にな」
ジョーは健の言葉にぐっと詰まった。
確かにあの時は傷が深くて意識を失ってしまったのだった。
海水が押し寄せる中、ジュンが必死になってジョーを抱きかかえて脱出したのだ。
「ジョー、気に病む事はないわ。
 あの時は私を助けてくれたんですもの」
「問答は後だ。竜、赤外線モニターをONにしてくれ!」
健が指示を出した。
竜がパネルを操作して、メインスクリーンに赤外線フィルターが掛かった画面が映し出された。
「怪しいとすれば、国家首席の官邸辺りだろう。
 竜、映し出してみろ」
ジョーが言った。
「ラジャー」
竜は機首をそちらに向けて、国家首席の官邸を映し出した。
「ん?」
健が声を上げた。
「地下に何かあるな?それも巨大だ」
「やっぱりな…。これだぜ、健!」
ジョーが立ち上がった。
手当は終わったが、まだ完全に止血されていなかった。
ジュンが慌てて止めたが、ジョーは戦闘に参加する意欲満々だった。
「健、俺が基地を見つける切っ掛けを作ったんだ。
 文句は言わせねぇ。俺は行くぜ」
「ジョー、お前って奴は何て無鉄砲な奴なんだ…」
健はそう言った切り、黙り込んだ。
「任務に支障が出るようならすぐに戦線を離脱して貰う、って事でいいんじゃない?」
ジュンが取り成した。
その彼女もジョーの事が心配なのは変わりなかった。
「健、私がジョーの傍にいるわ」
「……解った。少しでもジュンの足手まといになったら、すぐにゴッドフェニックスに帰還させろ」
「ラジャー」
「ジョー、お前のマントには風穴が空いている。
 気をつけないと落下するぞ」
「解ってるぜ。大丈夫さ。
 此処から先は自己責任だ。
 ジュンにも迷惑は掛けねぇさ」
ジョーは自信ありげに言い切った。
「健、どうやって突入する?」
竜が振り返った。
「官邸前の広場に下りて、入口を探そう。
 竜は待機だ」
「またおらが留守番かえ?
 怪我をしているジョーが出動するってぇのに?」
「だって、竜が居なけりゃゴッドフェニックスを操縦する人間がいねぇじゃないか?」
甚平が揶揄するように言った。
「そりゃあ、そうだけんども…」
竜の声はフェードアウトして行った。
「よし、竜、低空飛行してくれ。
 俺達がトップドームから降りたら、上昇するんだ」
「ラジャー」
そうして、4人はトップドームから地上へと降り立った。
地へ脚をつけた時、左肩に痛みが走ったが、ジョーはそれを億尾にも見せなかった。
「俺と甚平、ジョーとジュンの二手に分かれよう。
 何かあったらすぐに連絡するように。
 ……ジュン、ジョーを頼んだぞ」
「はい」
「大袈裟な事を言うな。俺はガキじゃねぇよ」
ジョーが不貞腐れたが、健はそれを無視した。
「GO!」
健の号令で彼らは行動を開始した。

官邸の中を警備していたのは、ギャラクターの隊員だった。
早速彼らは戦闘を開始する事になった。
「ジュン、奴らがどこから出て来るか、良く見ておくんだ」
「ラジャー」
ジョーは羽根手裏剣を唇に咥え、エアガンを手にしていた。
いざとなれば傷を負っている左腕からも羽根手裏剣を放つ覚悟は出来ている。
そう言った訓練を個人的に積んで来ていた。
痛みには耐性が強い彼だった。
「ジョー、気持ちは解るけど、無理はしないで」
「解ったよ…。だがおめぇには迷惑を掛けねぇから心配するな」
「心配しているのは迷惑じゃなくて、貴方の身体よ」
ジュンが少し声を荒げた。
「おお、怖いね、お嬢さん」
「そんな冗談を言っているようなら大丈夫ね」
2人は背中合わせになったり、離れたりしながら、敵兵を駆逐して行った。
「ジョー、見つけたわ。
 あそこの守衛所みたいな所から出て来るわ」
「解った。健に連絡しろ」
そうジュンに指示を出しながら、ジョーは華麗に舞った。
長い脚を使ってバレリーナのように何周もすると、周囲には彼の脚力で痛め付けられた敵兵がドサドサと倒れた。
左肩の傷口が痛まないでもなかったが、闘いの最中にはそう言った事を忘れている事が出来た。
『よし、俺達が行くまで突入は待て!』
健の指示が出た。
ジョーは「おう」と答えながら、わらわらと現われる敵兵の掃除に追われた。
ジュンもヨーヨーを使い、まるで必殺仕事人のように首に紐を巻きつけて、引いた。
敵兵が苦しげに唸りながらドドっと倒れた。
2人は縦横無尽に闘った。
生き生きとしている。
ジョーは傷を負っているにも関わらず、身体全体で闘った。
スピード感は変わらない。
敵兵に重いキックを入れた次の瞬間には、別の相手にパンチを繰り出している。
その時には既に次の相手を見定め、羽根手裏剣を繰り出し、エアガンの三日月型のキットを発射して何人も1度に倒して行く。
その闘い振りを見て、ジュンは安心した。
(ジョーは大丈夫そうね。
 生き生きと闘っているわ…)
そうして、彼女も自分に闘いに集中した。
男顔負けの働きを見せて、敵兵をいなして行くのだ。
2人が八面六臂の活躍をしている時に、ブーメランとアメリカンクラッカーが飛んで来て、援軍が来た事を告げた。




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