『鉄片を操るメカ鉄獣(前編)』

ジョーと甚平はコンビを組んで調査活動をしていた。
「やれやれ、甚平の奴、どこへ行きやがった?」
バードスタイルで2人で行動していた筈なのに、ジョーが敵を探っている間に姿を消してしまったのだ。
「可愛い女の子にでも、着いて行ったか?それとも、かっこいい車でもあったか?」
これまでの甚平の行動を知っているジョーは、そう勘繰った。
だが、人々はかなりのダメージを受け、街と同様に車も破壊されている中、それは考えにくかった。
「待てよ…。ギャラクターに拉致された可能性もあるな…。おい、甚平!」
最後の言葉はブレスレットに投げ掛けた。
受信装置を切っているらしい事が解った。
「健!こちらG−2号!応答してくれ。
 俺が探りを入れている間に甚平がいなくなった。
 ブレスレットの受信装置を切っている。
 そっちに何か連絡はなかったか?」
『いや、ない』
『私にもないわ』
『おらにも何もねぇぞ』
「くそぅ…。俺が調査に熱中している内にあいつ……」
彼らは一瞬にして破壊された都市、ケーズシティーに原因調査に来ており、ジョーはある怪しい金属片を採取している処だったのだ。
「甚平の奴、俺に助けを求めていたのかもしれねぇ。
 俺はそれに気づかなかった…。
 怪しい金属を採取していたんだ」
『ジョー、自分を責めるな。その金属をゴッドフェニックスに持ち帰ってくれ。
 甚平は俺達が探してみる』
「ギャラクターに拉致されたのかもしれねぇぜ」
実は甚平は落とし穴に転落していた。
マンホールが急に開いたのだ。
その時、悲鳴でも上げていればジョーも気付いたのだろうが、一瞬の事だった。
とにかく甚平の身に何かあり、平服姿に戻ってブレスレットを外したのだろう。
敵の手に落ちて、咄嗟に一般人の振りをしたと言う見方が濃厚だった。
やがて、ゴッドフェニックスに健とジュンも戻って来た。
「どうやら甚平は拉致された可能性があるな」
「大丈夫かしら?甚平ったら…」
「俺達は連絡を待つしかない」
「俺とした事が、甚平が拉致されたのには気付かなかったぜ」
ジョーは俯いたが、その手には透明ケースに入れた金属片が複数あった。
「これが街を破壊したのかもしれねぇぜ」
「ああ、一旦基地に戻ろう。南部博士に調べて貰う必要がある」
「解った!」
竜が答えて、操縦桿を動かした。
ゴッドフェニックスは破壊された都市の上をもう1度旋回してから、基地へと戻った。

「何、甚平が?」
「俺と一緒に行動していたんですが…」
「何かを掴んで1人で調べに行った可能性もまだありますが、ギャラクターに拉致されたのかもしれません」
ジョーと健が答えた。
「ブレスレットの受信装置は切っています。
 何かを掴んだのか、危険が及んでブレスレットを外したのか…。
 とにかく甚平がバードスタイルを解いている事は間違いないように思います」
健が続けて報告をした。
「解った。甚平からの連絡を待つしかあるまい。
 私はこの鉄片の調査をするから、諸君は待機していてくれたまえ」
「ラジャー」
4人は司令室のソファーで待機する事になった。
沈み込むジュン。
自分に対してイラついているジョー。
心配げな竜。
そして、健は腕を組み、ブレスレットを見つめていた。
バードスクランブルが入るのではないか、とそれだけを待っていた。

「諸君。この鉄片は自由自在に動く事が出来ると言う事が解った。
 形を変えるだけではない。大きさも変化するのだ。
 見たまえ!」
博士はスクリーンを下ろして、録画してあった実験スペースでの鉄片の変化を科学忍者隊の4人に見せた。
「この通り、まるで意志を持っているかのように、変化するのだ。
 これが街を破壊したのだろう。
 ジョーが持ち帰った以外にも鉄片は街のあちこちに残っているに違いない。
 今、国連軍に回収を依頼している」
「この鉄片はメカ鉄獣の武器なんですかね?」
ジョーが訊いた。
「その可能性が高いだろう。助かった街の人々によると、鎧を着た武者のようなメカ鉄獣が出現し、その鉄の欠片を口から振り撒いたと言う話だ」
「それは厄介なメカ鉄獣かもしれませんね。
 ゴッドフェニックスの装甲はその攻撃に耐えられるのでしょうか?」
健はリーダーらしく、戦闘時のダメージを心配した。
「ゴッドフェニックスには急ピッチで装甲の強化を施している。
 それより、甚平からの連絡はまだないかね?」
「ありません。どこでどうしているのかしら?」
ジュンが心配そうに呟いた。
「俺が金属片を採取している僅かな間ですよ。
 悲鳴も何も、声すら上げなかった。
 物音も聴こえませんでした。
 そうだ!竜、ゴッドフェニックスから俺達の様子を録画していなかったのか?」
「ああ!そうだ。してたぞい」
「それを見れば甚平がどうなったか解るじゃねぇか。早く気付け!」
竜は頭を掻いて、データを取りに行った。
彼はすぐに戻って来た。
南部博士を含めて、そのシーンを眼を皿のようにして眺めた。
「竜!そこでストップ。巻き戻せ」
健が指示を出した。
何かを見つけたらしい。
ジョーも同じ事に気付いたようだ。
「健!こいつは罠だな…。物音は全くしなかったぜ…」
「ああ。とにかくもう1度見てみよう」
ジョーの後方10m程の地点に立っていた甚平はマンホールと思しき物の真上にいた。
そのマンホールが急に開き、甚平は音も立てずに落ちていた事が解った。
「そうか。あのマンホールが落とし穴になっていたんだな」
ジョーが顎に手を当てて呟いた。
「とすれば…、そこには敵基地か、若しくは地下にメカ鉄獣が潜んでいたと言う事になる」
健も言った。
「ようし、あのマンホールに行ってみようぜ」
「メカ鉄獣は鉄片を自由に操る事が出来る。
 場合によってはマンホールも移動するかもしれん。
 諸君、くれぐれも気をつけて行動してくれたまえ。
 ゴッドフェニックスの強化は間もなく終わる」
「ラジャー!」
全員が息を合わせてそれに答え、ゴッドフェニックスの強化が終わるのを待って、破壊された都市に再出動する事になった。
甚平はブレスレットを外して一般人になりすましている可能性が高い。
ブレスレットを付けていたら疑われるからだ。
それだけの判断をする余裕があったのなら、多分無事でいる事だろう。
科学忍者隊の残る4人は、甚平の機転を買っている。
彼の無事を信じていた。




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