『鉄片を操るメカ鉄獣(後編)』

「ジュン達が機関室に仕掛けた他に、ジョーが爆弾を仕掛けて来ている。
 内部から爆発が起こるとは思うが、油断はするなよ、竜」
ゴッドフェニックスに戻ると、すぐに健が竜に注意喚起した。
「解っとるわい!」
竜は機首を急速旋回させた。
「出たわい!」
地を割り、大蛇がその全容を現わした。
全身に鉄の鱗のようなものが付いている。
舌先がちょろちょろと出るのが何とも不気味だ。
「あの鱗が、鉄片の正体だろうぜ」
ジョーが腕を組んだ。
「おかしい…。もう爆発が起きていてもいい筈なんだが…」
ジョーは敵の様子を凝視する。
「いや、待て」
健が同じようにスクリーンを見つめた。
「爆発は地下にいる間に起きている筈だ。
 機関室には予備電源があったのかもしれん。
 しかし、ジョーの爆弾も威力は半端じゃない筈だが……」
「不発だったとは考えにくいぜ」
「ああ…」
「俺が破壊したのは、鉄片の制御装置だ。
 そう思ってそれらしき物を片っ端から爆破したんだが、間違っていたのか…」
「ジョー、制御装置は複数あったのかもしれない。
 見ろ。一部の鱗の色が変わっている。
 あの部分だけ、既に鱗が落ちているんだ。
 あそこが奴らの盲点になっている可能性があるぞ」
「あそこだけジョーの爆弾で機能を停止したと言うのね?」
ジュンが訊いた。
「そうだ。だとすれば、あそこをバードミサイルで撃てば本体も…」
「それは有り得るな。だが、その前に攻撃を交わさねぇと!竜!」
鉄片が鎌の形に姿を変えて、ゴッドフェニックスに迫っていたのに、ジョーは気付いた。
「解っとる!」
竜は操縦桿を動かして、辛うじてその攻撃を避けた。
「南部博士が装甲を強化してくれたとは言え、攻撃は受けずに済む方がいい。
 竜、上手くやるんだぞ」
健の指示が飛んだ。
「敵の下っ腹の部分、あの色が変わっている部分が狙えるように回り込むんだ」
「じゃけんども、なかなか隙を見せんわい!」
竜が叫ぶように言いながら、敵の攻撃を交わしていた。
「健、バードミサイルで狙うよりも火の鳥の方が確実かもしれないわ」
「ええっ!?火の鳥〜?」
ジュンの言葉に甚平がぞっとするような顔つきになった。
小さい身体の彼には特にきついのかもしれない。
「ん?ジョー、見ろ!」
健が指差した先では、また鱗がパラパラと落ち始めていた。
自由自在に変化する鉄片としてではなく、まるで廃棄物…、くず鉄のようだ。
色も先程のように茶色く変わっている。
「ジョー、理由は解らんが、どうやらお前の投げたペンシル型爆弾が、時間差で爆発したようだな」
「そんな仕掛けはしてねぇんだがな」
ジョーは苦笑すると、
「あれだけ鱗が落ちれば、バードミサイルでも狙いやすいぜ。
 甚平、安心しな」
とニヤリと笑った。
「有難い〜!」
甚平は心から喜んでいる。
「科学忍者隊のメンバーが火の鳥を怖がってどうする?」
健のお説教が始まったが、ジョーは「今はそれどころじゃねぇだろ?」と健を抑え、バードミサイルの発射ボタンの前へと大股で歩み寄った。
「竜、もっと上昇して、大蛇を引き寄せろ。
 街に被害で出ねぇようにな」
「解った!」
竜は急速上昇を始めた。
「ジョー、最も効果的な場所は、あの大蛇の腹のど真ん中だ」
「解ってるって」
健の言葉に、竜の口癖になっている言葉をジョーも呟いた。
「引き付けて、至近距離から狙ってやる。百発百中だぜ」
そのチャンスはすぐにやって来た。
「竜、下に回り込め!」
「ラジャー!」
健の指示で竜が操縦桿を操作してゴッドフェニックスが移動した時、ジョーは狙いを定めてバードミサイルの赤いボタンを押した。
「竜、急速旋回!」
健が叫び、竜がレバーを押した時、大蛇型のメカ鉄獣はぐわんと音を立てて、爆発を始めた。
大蛇の尾からベルク・カッツェがカプセルで飛び出したのは、その爆風に紛れて確認出来なかった。
「カッツェめ!これであいつが死んだとは思えねぇ。
 また部下を見捨てて逃げ出しやがったに違いねぇぜ」
ジョーは右手で拳を作って、左の掌をパシっと叩いた。
その仕草には悔しさが滲み出ていた。

全ての事が終わった時、南部博士がスクリーンに現われた。
『甚平を無事に助け出し、良くやってくれた。
 皆のチームワークの勝利だ。
 ゴッドフェニックスの強化は無駄に終わったが、また役に立つ事もあるだろう。
 諸君は早く帰還してゆっくりしたまえ。
 今夜には予定通りパトロールに出て貰う』
「ラジャー」
サブスクリーンから南部博士の姿が消えた。
「博士、あれで、早く甚平の元気な顔を見たいのね、きっと」
「おいら、心配を掛けてしまったな」
「あの状況では仕方がないさ。
 とにかく次のパトロールまで3時間しかない。
 博士の言う通り、身体を休める事にしよう」
健が帰還を指示した。
科学忍者隊の多忙な日々はこうして続いて行く。
任務が終わったからと言って、それで解放、と言う訳ではないのだ。
若さと強靭な体力がなければ出来ない事だろう。
こうして、世界を守る為に頑張り続ける科学忍者隊であった。




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