『国連軍選抜射撃部隊との共闘(1)』

「今回のギャラクターのメカ鉄獣は、大型戦車だ。
 これに無数に火炎放射器がついているのが見えるかね?」
三日月基地に集められた科学忍者隊は、スクリーンに映し出されたメカ鉄獣を見て、慄然とした。
「火炎放射器はこの写真で見える本体の右側だけで、8門ある。
 つまり最低でも16門の大型火炎放射器でエックスシティーを焼き尽くした事になる」
「何と言う事だ…」
健が呟いた。
「そこでだ。私は急ぎ、冷凍光線バズーカを製造した。
 この16門かそれ以上の火炎放射器を同時に冷凍光線で凍らせ、火炎放射器を黙らせてから、ゴッドフェニックスで反撃に出るのだ。
 この任務は、ジョー、君にやって貰いたい」
「それは勿論ですが、俺1人で同時に16門の火炎放射器をバズーカ砲で眠らせると言うのは物理的に不可能です」
「その為に、国連軍選抜射撃部隊とタッグを組んで貰う事になった」
「えっ?しかし、以前俺が試射した小型バズーカ砲でも取り扱いが厳しかった彼らに、それが出来るでしょうか?」
ジョーは不審そうな表情になり、南部博士を見た。
「ジョーが意見を言ってくれたお陰で改造版が20門完成した。
 それをまず、レニック中佐が訓練し、それから部下に調練を課したらしい。
 取り扱える者は14名いる。
 私はこのバズーカ砲と同じサイズの冷凍光線バズーカレーザー砲を作ったのだ。
 ジョーが彼らの指揮を取り、闘って欲しい。
 冷凍光線バズーカは20門しか作っていない。
 使える砲弾は1発ずつだ。
 ゴッドフェニックスで偵察に行き、正確な砲門の数を調べて欲しい。
 国連軍では1人1門が限界だろう。
 16門をオーバーしている分については、ジョーとレニック中佐に頑張って貰うしかない」
「解りました。砲門が21以上ない事を祈りますよ」
「ジョーはレニック中佐と合流してくれ。
 今回被害に遭ったエックスシティーの近く、エムシティーのXP21地点にキャンプを張っている。
 武器もそこに揃っている」
「ラジャー」
「大型戦車型メカ鉄獣が出次第、健達には調査に行って貰い、正確な砲門数を調べて来て欲しい」
「解りました」
そうして、ジョーは1人、南部博士の指示で科学忍者隊から離れた。

XP21地点には、確かにキャンプが張られていた。
こんなに近くにまた攻撃を仕掛けて来るとは思えないが…、とジョーは思った。
だが、いざとなった時の移動手段は確保しているようだ。
20人程乗り込む事が出来る輸送機が準備されていた。
「おお、久し振りだね。コンドルのジョー君」
バードスタイルで現われたジョーを見て、レニックが嬉しそうに笑った。
この人は何とも不遜な態度を取って来たものだが、ジョーに対しては随分と変わって来た。
それは、ジョーの確かな腕を知り尽くしているからである。
自分以上だと認めているのだ。
「まずは冷凍光線バズーカレーザー砲を見せて下さい」
「おお、勿論だ」
レニックがキャンプの中に案内した。
殺風景な巨大なテントは野営をする時に使うものだろう。
その中に入って行くと、金庫のような銃器庫があり、その中に冷凍光線バズーカレーザー砲が20門並んでいた。
「南部博士がもしもの時の為に開発していたものだが、こんなに早く日の目を見る事になるとは思わなかった」
「試射は完了しているんですね?何か問題は?」
「1門に付き1発しか使えない事が大きなネックだ。
 本体が耐えられずに凍結してしまうのだ。
 敵の砲門の数が21以上あったら、全ての砲門を破壊する事は出来ない。
 それにこれを取り扱える部下は14名。
 君と私を合わせて丁度16名だ。
 確認出来ている砲門は16だと聴いているが、他にもまだあるかもしれない。
 そうなると、君と私とで素早く別の砲門も撃たなければならなくなる」
「今に敵のメカ鉄獣が暴れ始めれば、科学忍者隊が正確な処を報告して来る筈です。
 とにかくそれまで部下は休ませたらどうです?
 緊張感に包まれたままでいると、押し潰される」
「君でもそうなのかね?」
レニックが意外そうな顔をした。
「俺もそうだとは言ってませんよ」
ジョーは不敵に笑った。
「輸送機の操縦者は?」
「私の部下のマカランが行なう」
「ああ、マカラン少佐…」
ジョーは懐かしそうに呟いた。
「いつぞは怪我の手当をして貰ったのに、礼を言う暇もなく…」
「いや、あの時は我々が助けて貰ったのですから」
人の良さそうなマカランは相変わらず丁寧な人間だった。
「もう傷はすっかりいいようですね」
「勿論。回復力も我々には要求されますからね」
ジョーは笑って見せた。
「俺は自分のマシンで現地に行かなければならない。
 仲間達と合体しなければならないのです」
「大丈夫、輸送機に搭載が可能です。
 今の内に搭載しておくのがいいでしょう」
マカランがテントの外に向かった。
レニックも着いて来る。
「今の処、ギャラクター出現の連絡は入っていない。
 お2人とも休んでいて下さい。
 何かあれば仲間達から俺に通信が入って来る事になっている」
そろそろ夕闇が迫っていた。
このキャンプの中で一夜を過ごす事になりそうだ。
国連軍の炊き出し部隊が作った弁当が1人2食分だけ揃えられていた。
その中にはジョーの分も数に入れてあった。
バードスタイルを解く訳には行かなかったので、ジョーは彼らと離れた場所でそれを食した。
野営のテントにシャワーなどは装備されておらず、そのまま全員がごろ寝をする事になった。
ジョーはシャワーと歯磨きが出来ない事が不快だったが、そう言った事は任務でも良くある。
兵士は兵糧に文句を言うな、と言うが、寝る環境についても同様だった。
彼らだってゴッドフェニックスの座り心地の悪い椅子で仮眠を取る事もあるのだ。
夜半に入って、レニックの部下達の鼾が聴こえ始めた。
ジョーはそっと立って、テントの外に出た。
星空が瞬いている。
この美しい空が繋がる地球のどこかで、ギャラクターは何かを企んでいるのだ。
そう思うと寝てなどいられない。
健達も寝ずに待機している筈だ。
「こちらG−2号。健、どうだ?動きはねぇのか?」
『ああ、ギャラクターはやけに静かだ。却って不気味だとも言える』
「動き出したらすぐに連絡をくれよ。
 こっちは輸送機で現地に向かう手筈になっている」
『解っているさ。連絡を待って、少し休んでいろよ、ジョー。
 この後大役が待っているんだ』
「バードミサイルや火の鳥では敵わないって言うのが博士の見解だろ?
 仕方のねぇ事だが、何とも歯痒い事だぜ」
『そっちの任務は重大だ。
 国連軍選抜射撃部隊と上手くやってくれ』
「奴らの腕が本物だと信じてぇぜ」
『レニック中佐がそう言っているんだ。
 大丈夫だろう?
 俺達も交替で仮眠を取っている。
 ジョーもしっかり休んでおけ』
「解ったよ。じゃあな、連絡を待っている」
ジョーはそう言って通信を終えた。
暫くそのまま夜空を眺めていた。
テントは森の中の広場に設営されているから、木々の間から大きな空が拡がっている。
瞬く星も空気が綺麗なせいか、美しかった。
この美しい星を汚すギャラクターを決して許す事は出来ない。
ジョーは拳を握り締めた。
その時、レニックの気配を感じた。
「ギャラクターはまだ出ないようだね」
「そのようですね。仲間達もまだ待機していますよ」
「部下達の調練は完了している。
 心配は無用だ。
 問題は我々の人数以上の砲門があった場合だけだ」
「冷凍光線バズーカは20門しかねぇ。
 それを超えている場合には、効率を考えてその場で判断するしかねぇだろう」
「そうだね。さあ、君も寝たらどうかね?
 こんな場所では寝られないか?」
「科学忍者隊は必要があれば野宿だってしますよ。
 寝床が云々なんて言ってられません」
「そうか……」
「中佐こそ寝たらどうです?仲間達から連絡があったら、すぐに報せますよ」
ジョーはもう1度星空を見上げてから、大型テントの中へと入って行った。


※この話は、249◆『試射室(1)』、250◆『試射室(2)』、251◆『試射室(3)』、252◆『試射室(4)/終章』の続編的な話となります。
マカラン少佐が在任していますので、365◆『その男、マカラン(1)』、366◆『その男、マカラン(2)』、367◆『その男、マカラン(3)』、368◆『その男、マカラン(4)』、369◆『その男、マカラン(5)』、370◆『その男、マカラン(6)/終章』より前の話と言う事になります。





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