『国連軍選抜射撃部隊との共闘(3)』

大型戦車型メカ鉄獣は健達の大活躍もあって、ドーンと言う激しい地響きを立てて、彼ら国連軍選抜射撃部隊が待ち受ける盆地へと落下して来た。
マグニチュード7.0級の地震が起きたかのように、辺り一帯が暫く揺れ続けた。
『全員、散れっ!』
そんな中、レニックが部下に命令しているのが聴こえて来た。
さすがは軍人だ。
こんな事で動じたりはしない。
部下も同様だった。
ジョーはそれと同時にG−2号機を駆って、敵の眼前に飛び出した。
墜落した衝撃で動けない内に仕事をしてしまわなければならない。
内部で操縦しているギャラクターの兵士達が覚醒すれば、また動き始める可能性がある。
飛ぶ事は出来なくなっても、戦車の車輪は無傷だ。
装甲も万全な状態だった。
しかし、自分達が作戦通り火炎放射器を全部やってしまえば、そこが弱点になるに違いない。
射撃部隊もジープで近くまで移動して、それぞれがバズーカ砲を担いで降りた。
打ち合わせ通りの火炎放射器を狙って、離れて一列に綺麗に並び、基本通りにきちんと構える。
軍隊らしい処だ。
ジープで近づけた事で、射程距離内に充分入る事が出来た。
お陰で時間を短縮する事が出来ている。
ジョーはそれを横目に見ながら、自身の仕事に集中する事にした。
G−2号機のコックピットを開き、1門の冷凍光線バズーカレーザー砲を担いで立ち上がる。
残り3門のバズーカ砲もシートの上に並べてある。
ジョーは狙いを定めて、間髪を入れずに1発目を発射した。
場慣れしているだけに、狙いを決めるのが早いのだ。
彼の動きには全く無駄がない。
狙い違わず、巨大な先端の砲門に命中した。
だが、まだこの太い砲身には、冷凍光線の威力が足りなかった。
少しだけ敵の砲身の根元が凍り掛けたのみだ。
ジョーが持っていたバズーカ砲はすぐに凍結し始めた。
急いで外に放り投げた。
ジョーが1発目を撃ったタイミングで、射撃部隊の連中もバズーカ砲の発射を始めた。
ジョーはすぐに2発目に取り掛かる。
撃った時の反動が強いが、ジョーにとっては大した事ではない。
その程度で狙いがぶれる事はなかった。
出来れば何発かは残しておきたい。
他の場所の砲門の打破に失敗した場合の予備が全くないからだ。
2発目でも残念乍ら満足の行く結果は得られなかった。
(何とか後1発で終わって欲しいものだぜ……)
ジョーは思いながら3本目を担いだ。
その時、敵が動き始めた。
気絶していた隊員達が気がついたのだろう。
「行かんっ!」
ジョーはシートからヒラリと飛び降りて、素早く走った。
まるで飛んでいるかのような速さだった。
そして、彼は地面に膝を着いた。
狙いを定め、3発目を発射する。
メインの火炎放射器の砲身が大方凍結した。
ジョーはそのままG−2号機に飛び乗り、ガトリング砲で先端部分にある凍った巨大火炎放射器に弾丸をしこたま撃ち込んだ。
「レニック中佐!失敗した箇所は?
 バズーカ砲を1門残してある!」
『有難い!右最後部が失敗しておる』
「解った!俺に任せてくれっ」
ジョーはG−2号機で素早く敵のメカ鉄獣の右最後部に回り込み、バズーカ砲での狙撃に失敗して1門だけ残っていた火炎放射器が吼えているのを黙らせる事に成功した。
ジョーはそのまま周囲を1周しながら、エアガンに特殊弾を取り付けた物で1門ずつ狙い撃ちして、火炎放射器を爆破して行った。
これも南部博士が用意してくれた物だった。
残り16門の火炎放射器を爆破するその間に、敵の戦車も動いて交わそうとするので、かなり難攻したが、ジョーはそのドライビングテクニックと、射撃の腕を見事に見せた。
コックピットを閉めて、窓を開けた状態でそれをこなして行ったジョーの姿には鬼気迫るものがあった。
ミサイルでの反撃を受けながら、それを見事に交わしつつ、砲門を1門ずつ確実に破壊したのである。
見せた、と言うよりも『魅せた』と言ってもいい。
見事に全ての砲身を特殊弾で焼き切る事が出来た。
国連軍選抜射撃部隊の中から更に選ばれた筈のメンバー達が呆れる程に、その腕は一流を超えて、神掛かっていたのである。
彼の腕前はプロ集団を唸らせた。
自然に拍手が沸き起こった。
(ちぇっ、暢気に拍手なんかしている場合かよ?!)
ジョーは勝利に溺れる事はなかった。
これはまだ1つの通過点に過ぎない事を彼は良く知っている。
しかし、この任務が国連軍の協力なしには完遂出来なかった事も、彼には良く解っていた。
彼1人ではどうにもならなかったのだ。
その事はレニックに感謝していた。
「竜、俺をゴッドフェニックスに回収してくれっ!」
ジョーはブレスレットにそう叫ぶと、ステアリングを切り、ゴッドフェニックスと合体する為に移動を開始した。
「レニック中佐!早く部下を連れて避難して下さい。
 まだ奴らの動きが停まった訳ではありませんよ!」
『解っている。科学忍者隊の足手纏いにはならんよ。全員退避!』
レニックの命令を聴いて、ジョーは漸く肩の荷を1つ降ろした気がした。
これで心置きなく闘える。
ゴッドフェニックスのコックピットにジョーが上がって行くと、健が、
「ジョー、よくやってくれた」
と言った。
「いや、今度ばかりは俺だけじゃねぇ。
 国連軍が居なかったら、この任務を終える事は出来なかったぜ」
「そうだね。国連軍も役に立つ事があるんだね」
「こら、甚平!」
甚平とジュンが続いた。
「メカ鉄獣は飛ぶ事が出来なくなり、火炎放射器をやられ、満身創痍だ。
 他に武器を隠し持ったりしていねぇ限りは、バードミサイル1発で事が終わるだろうぜ…」
ジョーはそう言いながら、スクリーンを見た。
彼はこれまで地上からしか、敵の大型戦車メカ鉄獣を見ていなかったのだ。
「健!あれは何だ!?」
戦争用の戦車で言う、出入口、つまりハッチの部分に当たる場所から何やら長い物が伸びて来ている。
「まさか、もう1発火炎放射器が残っていたんじゃねぇのか?」
「ジョー、もう1本冷凍光線バズーカがあるでしょ?
 貴方が使ったのは3本だったのでは?」
ジュンが訊いた。
「いや、射撃部隊が1本失敗したので、そっちに回した。
 もう残りは1本もねぇっ!」
ゴッドフェニックスのコックピット内に戦慄が走った。
「待てよ。良く見ろ。竜、拡大してくれ。
 ……ほら、見ろ。冷凍光線の効果が少しずつだが拡がっている!」
健が叫んだ。
冷凍効果が僅かに敵のメカを浸食しつつあるのが見えた。
もう、あれではハッチを開けて脱出する事も叶わないに違いない。
ハッチの部分まで凍結して来ていた。
「本当だ!いいぞ!」
竜が声を張り上げた。
「ようし。竜、ノーズコーンを開けろ。
 拡がり切るのを待って、ガトリング砲で狙い撃ちしてやる!」
ジョーはG−2号機に再び乗り込む為にコックピット内を走った。




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