『戦闘機型メカ鉄獣(前編)』

敵兵はいきなり、国際科学技術庁のウラン貯蔵庫に現われた。
巨大な戦闘機型のメカ鉄獣を操っている。
ウランを奪い取る気なのだ。
科学忍者隊には即刻出動命令が出された。
「戦闘機型か。健の専門だぜ。
 ただ闇雲にバードミサイルで撃てばいいってもんでもなさそうだ」
「ジョーにしては賢明ね」
ジュンに揶揄されてしまったが、ジョーにとっては冗談どころの話ではなかった。
「敵のデータを取って、戦法を研究するんだ。
 攻撃はそれからだ」
健も腕を組んで言った。
「中に入り込んで爆破するのが一番手っ取り早いがな」
ジョーが呟いた。
「その通りだ。だが、敵の弱点を知ってから行くのでは数倍効果が違って来る」
健はさすがにリーダーだった。
「竜、スクリーンに敵の戦闘機型メカ鉄獣をズームアップしてくれ」
『ラジャー!』
スクリーンに拡大した巨大な戦闘機が映った。
「隙間があるとすれば……。ミサイルの射出口か。
 ミサイルを発射した直後の僅かな時間がチャンスだぜ」
ジョーが言った。
「ジョーの指摘通りだな。この仕事は俺とジョーで行なう。
 全員ゴッドフェニックスで待機していてくれ。
 場合によってはジュンと甚平には応援を頼む事になるかもしれん」
「ラジャー」
「ジョー、行くぜ」
「おうっ!」
2人はトップドームへと上がって行った。
「おら、いつも留守番で情けねぇわ」
「何言ってるの。一番重要な仕事じゃないの」
ジュンが慰めた。
「それに兄貴とジョーなら磐石だろ?」
甚平は逆に追い討ちを掛けてしまった。
「あの2人のようにおらも活躍したいぞい」
「仕方ないわ。身体能力も咄嗟の判断力も突出している2人ですもの」
「2人が背中合わせになって闘っているのは本当にかっこいいぜ」
「甚平は暢気じゃのう…」
『竜。敵に最接近してトップドームを開けろ』
ブレスレットから健の声が流れて来た。
「ラジャー」
竜は操縦桿を引いた。

健とジョーは、敵のメカ鉄獣に乗り移ると、竜に囮になって貰い、ミサイルが発射されるのを待った。
そして、タイミングを見計らい、中に潜入した。
次のミサイルが補充されるまでの僅かな時間を利用した。
中ではいきなり敵兵のマシンガンの洗礼を受ける事となったが、それは予期していた事だ。
2人とも難なく交わした。
「ジョー、司令室を探せ」
「解ってるぜ。恐らくはこの近くだろう。戦闘機の先端付近じゃねえか?」
「いや、最上部と言う可能性もあるぞ」
「そうか…。じゃあ、こいつらに吐いて貰おう」
ジョーは1人の敵兵の胸倉を掴んで、エアガンを散らつかせた。
健の予想が当たっている事が解った。
「やはり空の専門だぜ。健には敵わねぇな」
「冗談は此処までにして先を急ごう」
「おう」
2人は敵兵を薙ぎ倒しながら、目的地へと向かった。
健はブーメランで派手に、ジョーは華麗な動きと投擲武器で対決した。
健も俊敏な動きで、敵にダメージを与えて行く。
確実に敵の弱点を押さえて、気絶させている。
ジョーも同様だ。
ブーメランのような殺傷能力はないが、羽根手裏剣も喉笛を狙えば敵兵の生命を奪う事が出来る。
ジョーは羽根手裏剣を先兵として、まずは動きを停める為に使う事が多い。
マシンガンを持つ手の甲や腕を痛めつける事が多いのだ。
エアガンも三日月型のキットで打撃を与えるのに使う。
勿論撃つ事もあったが、それは暫くの間身体を痺れさせるに過ぎない。
自らの手足を縦横無尽に使って闘うその姿には全く無駄がなく、1人倒した時には、次の目標が決まっている。
そのキレと言ったら、甚平が感心するのも当然なのだ。
甚平にとっては、兄貴もジョーの兄貴も憧れの戦士だ。
今は身体の小ささをある意味武器にしているが、大きくなったら、あの2人のように華麗に闘いたいと思っていた。
今の自分が個性的な闘いをしている事にはまだ気付いていない。
ジョーは決して健程派手ではないが、着実に技を決めて行くので、結果華麗に見えるのである。
側転しながら、敵兵をその足技でどんどんと倒して行き、左手を床に着いたままで、エアガンを発射した。
脚が地に着いた瞬間には、羽根手裏剣がピシュッと音を立てて舞っている。
そしてそれは確実に敵兵の戦力を薙いでいる。
その的確さは健も一目を置いていて、ジョーになら自分の背中を任せられると信頼していた。
お互いに相手の力量を認め合っていた。
ジョーは健の戦士としての感覚だけではなく、リーダーとしての資質も認めていた。
健はジョーの闘いの中での鋭い勘や、思いつきなどを高く評価していた。
勿論その戦闘能力もだ。
実力が伯仲しているだけに、共に闘うのは張り合いがある。
闘いの最中には不謹慎かもしれないが、何とも『愉快』なのだ。
健はその事を自覚していた。
恐らくはジョーもそうだろう、と思っていた。
2人並ぶと双璧と言ってもいい。
彼らを乗り越えて行ける敵などおらぬのだ。
「健、階段があるぜ。司令室はこの上だな」
「ああ。行ってみよう」
健が先頭になって階段を駆け上がった。
ジョーは後方を守りながら、健の後ろから進んだ。
前にも後ろにも敵はいる。
時にジョーは健を狙う前側の敵にも羽根手裏剣を繰り出しながら、健に遅れる事なく駆け上がり続けた。
バズーカ砲を持った兵士が現われた。
ジョーは健の前に跳躍して行き、何と大胆にもそのバズーカ砲の砲身の上をトトっと歩き、その兵士の脳天に肘鉄を喰らわせた。
バズーカ砲は天井に向かって撃ち込まれ、瓦礫がバラバラと落ちて来た。
「幸いバズーカは1門だったようだぜ。
 だが、気をつけて行けよ、健」
「ああ、解っている。お前もな」
そろそろ司令室が眼の前に迫っていた。
敵兵の数が増えている事からその事が解る。
この拾い戦闘機型メカ鉄獣の中には、様々な仕掛けがあり、侵入者を捕らえるようなトラップが沢山仕掛けられていたが、健もジョーもそれをクリアして来た。
逆にギャラクターの隊員がお粗末にも引っ掛かったりしている。
「ふん。馬鹿め。自分らが仕掛けた罠に引っ掛かってやがるぜ」
ジョーは鼻で笑ったが、健がそのジョーの心を引き締めるかのように言った。
「まだまだこれからだ。
 司令室に行くまでに何が起こるか解らない。心して掛かれよ」
「ああ、勿論だ」
ジョーはニヤリと笑った。




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