『燃ゆるゴッドフェニックス(前編)』

ゴッドフェニックスが新しくなった時、各メカの装備や超バードミサイルだけではなく、密かに『火の鳥』も強化された。
見掛けは変わらないが、その威力が増し、その分中に搭乗している科学忍者隊のメンバーの負担も激しくなった。
機体自体にも強化はなされてのは当然の事だが、彼らが耐えるべき衝撃もまた増えたのだ。
しかし、砂漠で燃え盛るゴッドフェニックスを見た彼らの中に、その事について文句を言う者はなかった。
あの敗北感に比べたら、こんな事は微々たる事だ。
どんな辛かろうと耐えて見せる。
5人のメンバー全員が言葉を交わさずとも、そう心に誓い合っていた。
そして、その火の鳥を使う機会は思わぬ程早く訪れた。
科学忍者隊が集められたのは、ある日の昼下がり。
全員が『スナックジュン』に屯していた時であった。
『科学忍者隊の諸君。すぐに私の処に集まってくれたまえ』
南部の指示があり、ジュンと甚平はすぐに店仕舞いの準備をし、他の3人はガレージへと走った。
ジョーは竜を乗せ、ヨットハーバーへ行く事にした。
そこで合体して、基地を目指すのが手っ取り早いのだ。
基地に着くと、南部博士が苦い顔をしていた。
「今度のメカ鉄獣は厄介だぞ」
「と、言いますと?」
健が訊く。
「メカ鉄獣の周囲には放射能帯が帯となっているのだ。
 つまり君達が得意とするメカ鉄獣に侵入する作戦は使えない、と言う事だ。
 もしそれをすれば、君達が放射能に身体を汚染されてしまう。
 バードスーツを以ってしても、それは防ぎようがない」
「では、火の鳥を使って打破するしかないと言う事ですね?」
「その通りだ。今度の火の鳥は以前よりもキツイぞ」
「解っています。でも、やるしかないのでしょう?」
健は力強い眼をして南部に詰め寄った。
「そうだ。だが危険も伴う」
「どうせ、俺達の任務は危険な任務でしょう。
 今更それを嫌がると思いますか?」
ジョーが腕を組んだままで言った。
「火の鳥で放射能帯を通過し、その機能を使えなくしてしまえばいいんでしょう?」
ジョーはそう言ったが、南部は渋面を作った。
「機能を使えなくしても放射能は残る。
 火の鳥で焼き尽くす以外には手立てがないだろう」
「超バードミサイルで粉々に粉砕出来るんじゃありませんか?」
ジョーはなおも喰い下がった。
「いや、放射能帯により、超バードミサイルは敵のメカに当たる前に粉砕されるであろう」
「放射能の中和剤を用意する事は出来ないんですか?」
健が訊ねた。
「準備はさせている。だが恐らくはゴッドフェニックスへの装備は間に合うまい。
 敵のメカ鉄獣はさそり型で装甲が厚い。
 火の鳥で直撃しても1度では無理かもしれん。
 3回は体当たりしなければならないだろう」
「ええっ?そんなにやるんですか?博士」
甚平の顔が恐怖で引き攣った。
「ちょっと待って下さい。
 『ゴッドフェニックスへの装備は…』って事は、俺のG−2号機になら何とかなるのでは?
 俺だけ後から合流すればいいでしょう?」
ジョーが手を打った。
「だが、その間は火の鳥が使えないぞ」
南部が眉を顰めた。
「くそぅ。火の鳥で倒すしかないって事か!」
ジョーは別に火の鳥が嫌な訳ではなかった。
他にも選択肢が欲しかったのだ。
闘う為の選択肢は多い方がいい。
その事は他のメンバーや南部博士にも伝わった。
「とにかく、さそり型メカ鉄獣が次に出て来るまでに、中和剤を装備出来るかどうかISOで努力はする。
 君達は待機していてくれたまえ」
「ラジャー」
南部は忙しく司令室を出て行った。
「作戦を練ろう」
健が腕を上げて、司令室の一角に全員を呼び寄せた。
「中和剤が装備出来るか出来ねぇかによって、作戦も違って来るだろうよ」
「このメカ鉄獣の写真を良く見るんだ。
 弱点を見つけなければならない」
健はスクリーンを叩いた。
「放射能帯が途切れている部分はないのだろうか?」
健はそう呟き、腕を組んで睨むようにスクリーンを眺めた。
「なる程。乗り込む隙を探すって事だな?」
ジョーはニヤリと笑って、同じように食い入るようにスクリーンを見つめた。
「写真は全方向から撮られているんだろ?」
「ああ、そうなんだが…、問題は放射能は写真に写っていないって事だ。
 赤外線フィルタで撮られた写真があるといいんだけどな」
健が唸るように言った。
「敵が出て来たら、まずはゴッドフェニックスで偵察に行き、赤外線フィルタを通した写真を撮る。
 作戦はそれから練るのがいいだろう」
「だが、それでは、また街が破壊されちまうぜ」
ジョーが組んだ腕を解いて気色ばんだ。
「火の鳥1発で叩けるのならそれでもいい。
 だが、南部博士はそれは無理だと断言している。
 火の鳥が体当たりするのを3回も待ってくれる敵だと思うか?」
「健の言う事は解るんだがよ…っ!」
ジョーは右手の拳で左の掌をパンっと叩いた。
良い音が室内に響いた。
「くそぅ、手はねぇのか…?」
彼は悔しいのだ。
ただ手を拱いている事が。
「とにかく健の言う通りにするしかないわ」
ジュンが宥めた。
「そうするしかなさそうじゃわ」
竜も同意した。
ジョーの焦りを全員が理解していた。
皆、同じ気持ちだったのだ。
だが、闇雲に出撃して、またゴッドフェニックスがやられるような事になるのはごめんだ。
あの敗北感は2度と味わいたくない。
それは全員が同じだった。
スクリーンをいつまで眺めても、普通の写真では答えを出す事は出来なかった。
そんな中、メガロスティーシティーにさそり型メカ鉄獣が現われたと言う南部博士からの通信が入った。
『ギャザー、ゴッドフェニックス発進せよ!
 但し、無茶をしては行かん!』
「ラジャー」
全員がバードスタイルへと変身を果たし、部屋は虹色で満たされた。
彼らはすぐさまゴッドフェニックスの格納庫へと走った。




inserted by FC2 system