『燃ゆるゴッドフェニックス(後編)』

「科学忍法火の鳥!ジェネレーター、レッドゾーンまでアップ!」
健の掛け声と共に、ゴッドフェニックスは火に包まれた。
燃ゆるゴッドフェニックスは神々しい火の鳥となって、空を舞った。
中にいるメンバー達は歯を喰いしばって、その苦しみに耐えていた。
火の鳥はさそり型メカの尾の部分から押し込むような形で突っ込んで行った。
放射能帯に触れても火の鳥なら耐えられる。
そのまま敵のメカ鉄獣を焼きながら、火の鳥はさそりの頭まで突き抜け、放射能帯毎メカ鉄獣を消滅させた。
火の鳥が解除された時、全員がシートに縛り付けられたまま気を失っていた。
飛行状態は保てていた。
ゴッドフェニックスは火の鳥となってついに敵を凌駕したのだ。
今までよりも科学忍者隊が受ける衝撃は強かったが、彼らはそれに雄々しくも耐え切った。
南部博士がスクリーンから労いの言葉を掛けて来た。
『科学忍者隊の諸君。ご苦労だった。
 放射能帯と共にギャラクターのメカ鉄獣は綺麗さっぱり消え去った。
 だが、君達は見ている余裕がなかっただろうが、ベルク・カッツェが頭部のロケットで北西の方向に逃げ去った。
 全速で追ってくれたまえ』
「ラジャー!」
任務は終わった訳ではなかった。
負担の大きい火の鳥の疲れを癒す間もなく、彼らは逃げ出したカッツェを追った。
「北西にレーダー反応あり!あっ!」
ジュンが叫んだ。
「この先の湖で反応が消えたわ」
「するってぇと、そこが基地って事ですかねぇ」
甚平が江戸っ子のような巻き舌で言った。
この子の惚けたキャラクターは時に彼らを癒してくれる。
彼らはそれで疲れを忘れた。
「行こう!基地諸共、カッツェを叩きのめしてやろうじゃねぇか!」
ジョーが俄然張り切った。
今日は肉弾戦を演じていない。
いくら火の鳥で疲労したからとは言え、まだまだ元気が有り余っている10代の精神と肉体だ。
「竜、湖に突っ込め!」
健が冷静に指示を出した。
「まずは本当に此処に基地があるのか確認する事だ。
 陽動作戦の可能性も否定出来ない。気をつけろよ」
「解った!」
ゴッドフェニックスは水しぶきを上げながら、45度の角度で大きな湖に飛び込んだ。
「竜、水平に降下しろ!ジュンはレーダーを、他の者はスクリーンを隈なくチェックするんだ」
「あった!竜、左15度の地点をスクリーンに映して!」
ジュンがすぐに声を上げ、自身もスクリーンの前へと走った。
「あれか…」
健が腕を組んだ。
「罠の可能性もある。だが、行くしかあるまい。
 竜、ゴッドフェニックスの機首を突っ込ませろ!
 全員で突入だ!」
「え?おらも?」
竜は嬉しそうな顔をした。

ゴッドフェニックスのトップドームから5人は勇躍敵基地に踊り込んだ。
「ジュン、甚平、竜!雑魚は任せた!
 ジョー、カッツェを探せ!」
「何だおら達いいとこなしじゃわ…」
竜がぼやいているのが聴こえたが、2人は構わずに敵を切り拓いて進んだ。
「おいらもだよ。兄貴はいつもジョーを連れて行きたがるね」
「カッツェには因縁のある2人だからよ。
 さあ、私達もさっさと此処を片付けて2人を追いましょう」
ジュンが仕切ると、2人は猛烈に働き始めた。
その頃、健とジョーは先を急いでいた。
カッツェがどこにいるのか?それとも罠なのか?
まだ判断が付かない状況だった。
「健、あれを見ろ!」
進路の先に大きなハンドルが付いたドアがある。
「……行ってみよう」
健が頷き、先へと進んだ。
近づいてみると放射能を表わすマーク、『ハザードシンボル』があった。
「こんな処に放射能かよ?どうする、健?!」
ジョーは進退窮まった、と言う感じで声を挙げた。
健も同様だった。
「南部博士、応答願います!」
健は博士に意見を求める事にした。
「……そう言う訳で、基地を破壊したら、周辺の街に被害が及ぶ事になります」
『うむ。実は中和剤の準備が完了している。
 これから国連軍を向かわせるから、国連軍が到着したら、基地を破壊してくれたまえ。
 すぐに中和剤を湖の中に撒く。
 必ず時限爆弾を使い、君達はゴッドフェニックスにて湖から脱出している事!以上!』
「ラジャー!ジュン、聴こえるか?今の話は?」
『聴いていたわ』
「3人はゴッドフェニックスに戻っていろ。
 国連軍からの連絡を待ってくれ」
『ラジャー。2人とも気をつけてね』
「解っている」
「こいつは罠だな。
 カッツェがこんな危険な場所にいる筈がねぇ。
 囮だ。既に別の場所に逃げている事だろうぜ」
「ああ、そうだろうな。……ジョー!」
健が叫んだ時には、ジョーは既に天井に跳躍していた。
敵兵が現われたのだ。
だが、放射能がある部屋を前にして、敵兵は最初から及び腰だった。
そこが爆発をすれば自分達がお陀仏だからだ。
「悪いがこの基地は破壊させて貰うぜ」
ジョーがニヤリと笑った。
「そんな事をすれば貴様らだって無事ではすまないぜ」
敵が下卑た笑いを見せた。
「それはどうかな?」
健が大きく声を張り上げた。
「俺達は助かるが、お前達は助からないぜ」
そう言いながら大立ち回りを始めた。
その時にはジョーも同様に長い脚で敵兵に襲い掛かっていた。
回転して勢いが付いたジョーの脚力で、敵兵が数人薙ぎ倒された。
羽根手裏剣が宙を飛び、蒼いマントが舞う。
その時、ブレスレットにジュンからの連絡が入った。
『国連軍が到着したわ』
「解った!ジョー、時限爆弾を5分にセットして、脱出だ」
「おうっ!」
2人はそれぞれ、ブーツの踵から時限爆弾を取り出し、『ハザードシンボル』が付いた扉のハンドルの左右に1つずつ取り付けた。
ダイヤルを5分にセットする。
「よし、ジョー。脱出だ!」
「ラジャー!」
2人は息を合わせて走り出した。
敵兵は時限爆弾を剥がそうと試みたが、どう言う仕掛けか、剥がれないように出来ている。
彼らは助からない事を悟り、我先に潜航艇に乗り込もうと蜘蛛の子を散らしたかのように駆け出した。
健とジョーは応戦する手間が省けた。
「健、5分も要らなかったな」
ジョーは健に向かってニヤリと笑った。




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