『COOL PLAY』

ギャラクターの基地は海底にあった。
科学忍者隊はその基地にゴッドフェニックス毎突っ込み、全員がトップドームから跳躍して躍り込んだ。
雑魚兵達が飛び出して来る。
その場で戦闘が始まった。
ジョーの完璧な鍛え上げられた肉体から繰り出される技は、ビシビシと華麗に決まっていた。
その素晴らしさと言ったら、筆舌に尽くし難い。
甚平などすっかり見とれる程であった。
「甚平っ!」
ジョーはスコンと甚平の頭をはたき、注意を促した。
「何、ボーっとしてやがる?」
「いやぁ、兄貴やジョーの兄貴がかっこいいから、つい見惚れちゃった」
頭を掻きながらも、甚平はしゃがみ込んで敵兵を交わし、立ち上がった処でヘルメットを別の隊員のある場所にヒットさせて、痛みに縮み上がらさせると言うギャグを演じていた。
ジョーはそれを見て笑いながらも、決して気を抜く事はなかった。
落ち着いて、敵兵の動きを見切っている。
闘いの勘は実戦でどんどん磨きが掛かっていた。
闘えば闘う程、彼の身に付いて行くのである。
今の闘いもきっと後の彼の身になっている筈だ。
そう言った天性の物を、彼は持っていた。
側転しながら、長い脚で敵兵を絡め取る。
そのまま仲間達の元へと敵兵を投げ込み、混乱に乗じて、羽根手裏剣とエアガンの連携プレーで攻撃の手を休めない。
彼が回れば敵兵が周囲でバタバタと倒れ、ひと度羽根手裏剣が舞えば、敵兵が手の甲を射抜かれて悲鳴を上げた。
エアガンの三日月型キットを使った攻撃も色褪せる事はない。
肉体と2つの武器を使ったそのクールなプレイは、マントの蒼のように深く、重厚さを感じさせてくれる。
実際、彼のパンチや蹴りを喰らったものは、当分立ち上がる事が出来ない程のダメージを加えられている。
本気を出せば、その一撃で敵を殺せてしまう程の膂力を持つジョーだが、そこの辺りは南部博士の指令もあり、手加減を施している。
その匙加減をするのもなかなかの技術が必要なのだ。
敵兵の戦力を失わせる為には、立ち上がれない程度のダメージを与えなければならなかった。
上手く力をコントロールしている。
ただ、ギャラクターの隊員もそこそこには訓練されているので、その手加減の仕方が難しいのだ。
本気を出していない訳ではないが、雑魚兵については1割程は力を抜いて丁度いい。
敵が人海戦術で来るとそうも行かなくなるが、それでも『不殺(殺さず)』を心掛けている。
メカ鉄獣や基地を爆破したりする時には、結局敵兵の生命を奪っている事になるのだが、その手を直接染めるな、と言うのは南部博士の親心なのであろうか。
ジョーは眼の前の敵兵の鳩尾に、強い膝蹴りを入れた。
敵兵は一瞬にして崩れ落ちた。
そのまま長い脚を振り子のようにして、周囲の敵兵を薙ぎ払った。
1つの攻撃をしている間に、次の獲物はしっかりと捉えている。
その能力は格段に優れていると言ってもいい。
猛禽類のコンドルならでは、の目利きだった。
羽根手裏剣がまた敵兵を捉えた。
利き手を不自由にして、マシンガンが取り落とされる。
落ちたマシンガンを蹴り飛ばし、ジョーはそのまま別の敵兵へと突っ込んで行く。
また長い脚が蒼いマントと共に翻った。
敵兵が震え上がった。
ジョーの攻撃は的確に決まって行った。
体術が素晴らしい。
全身を武器として、彼は存分に働いた。
身体を動かす事が、自身の存在意義でもあるかのように。
全く無駄のない動きで敵兵を追い詰める。
彼が放つ羽根手裏剣は空気を切ってピシュッと音を立て、弧を描いて飛んだ。
それは瞬時にして敵兵を捉えている。
コンマ数秒でそれをこなす彼は、1度に何本もの羽根手裏剣を放っている。
それが無駄なく、敵兵に当たっているので、その精度は相当なものだ。
射撃の腕も超一流。
任務の為に出場した射撃大会でもタイトルを得ている程の腕前だった。
狙った獲物は逃さない。
投擲武器や銃に鋭く対応出来るのは、動体視力が優れている事に他ならない。
そして敵の動きを見切る能力。
動いている敵兵がコンマ数秒後にどの辺りにいるのか、と言った計算を一瞬の内にこなさなければ、折角の武器も当たりはしない。
これをジョーは当たり前のように行なっている。
頭の中で計算しているのではない。
身体が感覚として覚えているのだ。
その能力は科学忍者隊随一と言えよう。
でなければ、忍者隊の中で突出した射撃の能力は発揮出来ない。
敏捷な動き、武器と身体が一体化し、彼を自由に解放させている。
その時、ドドーンと言う衝撃音が発生した。
『ジョー、ジュンと甚平が動力室を爆破したぞ。
 こっちも急ごう!』
ブレスレットから健の声が聴こえた。
「おうっ!」
ジョーは中枢部にある司令室に向かっているのだ。
その為に敵兵を切り拓いて進んでいる。
ジョーは高く跳躍し、敵兵を飛び越えた。
飛んでいる間に羽根手裏剣を雨霰と降らせた。
彼の長い脚の下で、もがいて倒れる敵兵が続出した。
ジョーはそれを越えて見事に着地をし、先へと進んだ。

やがて反対側から健と竜がやって来た。
3人が落ち合った場所の前には大きな鉄の扉がある。
「よっしゃ、おらに任せとけ!」
竜が体当たりしたが、びくともしなかった。
「動力源があるに違いねぇ。探すんだ」
ジョーは既に壁を叩いていた。
「ジョー、こっちだ!」
健が開閉スイッチのある小さな扉を開けた。
ブーメランで回線を切る。
扉はゴゴーっと重い音を立てて開いた。
「行くぜ」
「おうっ!」
健に応じて、ジョーも中に入った。
竜も続いている。
そこでまた敵兵のお出ましだ。
「爆弾の設置は任せた。此処は俺が片付けるぜ!」
「俺1人で充分だ。竜、お前もジョーと残れ」
健はそう言って、先へと進んだ。
ジョーは跳躍して、敵兵の腹に鋭い膝蹴りをお見舞いした。
闘いの中に在って、彼は自由だ。
思う存分働いている。
着実に、見事な技を決めて敵兵の戦力を削いで行く。
竜は力技で敵を伸して行くが、ジョーは武器と肉体が一体化しているから、自由自在で多彩な攻撃を仕掛けられるのだ。
武器は身体の一部と化しているし、身体は武器の一部となっている。
敵兵を羽根手裏剣とエアガンで着実に薙ぎ払いながら、その身体全体で敵を凌駕して行く。
ジョーには天性の闘いの勘が備わっているのだろう。
この身体能力は、そう言った評議会でもあれば、高い評価が得られる事だろう。
そのようなメンバーが5人揃っているのが、科学忍者隊なのだ。
リーダーである健は、見栄を切ったり、武器の名前を叫んだりと、活動的だ。
対するジョーは気合を込めて、冷静に黙々と闘うのみだ。
それでいい、と彼は思っていた。
派手な部分はリーダーに任せておけばいい。
彼は2番手としての立場を楽しんでいた。
自由に闘える。
健は全体を見渡さなければならないのだ。
自分はリーダーの資質が無い事など最初から解っている。
このポジションが気に入っていた。
「ジョー、竜、脱出するぞ!」
健の声が響いた。
ジョーは今、闘っている敵兵を華麗なフォームで投げ飛ばしておいて、瞬時に走り始めた。
息も切らしてはいない。
「ジュン、甚平、ゴッドフェニックスに退却してくれ」
『ラジャー!』
残念ながら、この基地にはベルク・カッツェがいなかった。
それでも、達成感はある。
こうして1つ1つギャラクターの拠点を破壊して行く事で、その戦力は削げる筈だ。
5人は海底基地に機首を突っ込んでいるゴッドフェニックスのトップドームへと跳躍した。
ゴッドフェニックスが抜けると基地には多くの海水が流れ込んだ。
その瞬間、大爆発が起きた。
健が仕掛けた時限爆弾が爆発したのだ。
海底基地は木っ端微塵に消え去った。
こうして今日も1つの任務が終わりを告げた。




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