『マシントラブル(1)』

ジョーがG−2号機で走っていて、マシントラブルを感じたのは、レースの帰りにある街中を走っていた時だった。
「まさか、G−2号機に限ってそんな…」
と呟きながらも、彼は何とかG−2号機を操って、山道へと入り込んだ。
具体的に言うと、ステアリングとブレーキが効き難くなっている。
そんな事は今までになかった。
どんな過酷な任務でも、レースでも、なかった事だ。
しかし、山道に入るとその症状は収まった。
「どう言う事だ…?さっき走っていたあの街に原因があるのか?」
ジョーは念の為、この件を南部博士に報告した。
『こんな事は今までになかった事だ。すぐに基地に帰還せよ。
 いや、また何か起こるかもしれない。
 竜を迎えにやるから、G−5号機と合体して来なさい』
「ラジャー」
ジョーはブレスレットに向かって答え、竜の到着を待つ事にした。
そのナビゲートシートには、今回もトロフィーが置かれ、ダッシュボードには賞金が入っていた。
ジョーは賞金の札束を封筒毎、無造作に尻ポケットに突っ込んだ。
「あの街、アセット市に何かあると言うのだろうか?」
ジョーは考え込んでいた。
レース中は全く異常がなかった。
「どうした?G−2号。おめぇらしくねぇぜ」
やがてホバークラフトであるG−5号機のエンジン音が聴こえて来た。
「竜、面倒を掛けるな」
『マシントラブルじゃって?そんな事聴いた事もねぇが…。
 引き上げるぞい』
オートクリッパーが伸びて来た。

「ジョー、メカニックに整備させているが、今の処、異常は見当たらない」
南部博士が司令室に現われた。
竜も付き合って待っていてくれている。
「山道に入って暫くしたら、異常が元に戻ったんですよ。
 アセット市を走っている時にステアリングが効かなくなり、ブレーキも効き難くなりました。
 こんな事は今までのどんな任務でもなかった事です。
 普段から整備は怠っていませんし、何かあるとしたらアセット市に原因があるんじゃないかと思うんですけどねぇ」
「アセット市の地下に何かあるっちゅうかいのう?」
「アセット市の地下資源は有名だぜ?ねぇ、博士」
「然様。多くのリチウムが眠っていて、採掘場で採掘されている。
 銀白色の金属だ。戦時中は航空機の材料として使われたが、戦後は水素爆弾としての需要が高まった。
 しかし、最近では知っての通り、リチウム電池として活用されている」
南部博士は渋い声で説明した。
「とにかく今までに有り得ない事が起きたんです。
 俺にアセット市を調べさせて貰えませんか?
 ギャラクターの臭いがする」
「そうかいのう?リチウム電池の成分がそうさせたっちゅう事はないんかいのう?」
竜はいつもの通りのんびりしている。
「アセット市はレースの行き帰りに何度も通っている。
 昨日サーキットに向かった時には何の異常もなかったんだぜ!」
ジョーが竜に向かって眼を剥いた。
「確かにリチウム電池の成分がG−2号機に異常を起こさせたとは考えにくい。
 G−2号機の性能はそんなに軟ではないからな」
博士もジョーに同意した。
「何かあるにしても、ジョー、君1人では危険だ。
 科学忍者隊を全員集めよう。
 暫く待機していてくれたまえ」
「ラジャー」
そうして南部博士が他の3人も呼び集める事となった。

健、ジュン、甚平の3人は20分以内に現われた。
なかなかの速さだ。
「G−2号機がマシントラブルですか?」
健も意外そうな顔をジョーに向けた。
「アセット市内に何かあるぜ。山中に出たら何ともなかった。
 メカニカルチェックでも異常はなかった。
 だがよ、トラブルがあった事は確かに間違いねぇ」
「だとすれば、俺達のメカでもトラブルを起こす可能性は否定出来ないな。
 特にG−2号機、G−3号機は危険だと言わざるを得ない」
健が呟いた。
「その通りだ。地下資源に何らかの原因が隠されているとすれば、空から偵察するか、陸上ならメカを使わず諸君が直接偵察に行くより他はないだろう」
南部博士は健達が集まるまでに、アセット市の資料を揃えていた。
博士はスクリーンが降りて来るスイッチを入れた。
「ジョーと竜には繰り返しになるが聴いて貰おう。
 アセット市は地下資源リチウムが豊富な事で知られている。
 リチウムは今ではリチウム電池の材料として使われているが、過去には戦闘機の材料になったり、水爆に利用された事もある。
 ジョーのG−2号機は接地して走っている事から考えると、異常が出た原因にはこの地下資源リチウムに何やらの化学反応が起きている可能性が否定出来ない。
 それが道路からG−2号機に伝わって異変を起こしたのだろう。
 つまり、ジョーが主張しているようにギャラクターが関わっているかもしれないと言う事だ」
南部がスクリーンに地形図を映し出した。
「採掘場はこの山中のSX地域に設けられている。
 侵入して調べるとすれば此処がベストだと言えよう」
「解りました。やってみます」
健が代表して答えた。
「うむ。充分に気をつけてくれたまえ」
「ラジャー」
全員がポーズを取って即答した。

ゴッドフェニックスは警戒して、隣接する海の中へと隠し、全員が泳いで陸へ出た。
「バードスタイルでは目立ち過ぎる。
 各自変身を解いて、SX地域を目指そう。旅行者を装ってな」
健の指示が飛んだ。
「ラジャー」
全員が生身に戻った。
「歩いて行くんかいのう?」
竜がぼやいた。
「当たりめぇだろう?車で行く訳には行くめぇよ。
 ん?でも、待てよ。街中を走っている車は普通に走っているぜ!」
ジョーが眼を凝らした。
タイヤを取られたとか、そう言った形跡もなく、普通に走っている。
「どう言う事だ?G−2号機だけが反応したって事か?」
ジョーは考え込んだ。
「Gメカの変身に関係する、流動プラスチックが原因かもしれねぇな」
「流動プラスチックが、そのリチウムと何かの成分が化学反応を起こしたものに反応していると言うのか?」
健が眉を顰める。
「他の車にはねぇ物だ。考えられるだろう?」
「そうだな。その意見は南部博士に伝えておいてくれ」
「解った。こちらG−2号、南部博士応答願います」
ジョーは少し離れて、南部博士と交信した。
「話は伝えたぜ。博士もその可能性はあると言っていた。
 俺達が生身で来たのは正解のようだ。
 場合によってはバードスタイルも影響を受けるかもしれねぇ、と博士は言っている」
「バードスタイルも?」
「ああ…。これは危険な任務かもしれねぇな。
 とにかく先を急ごうぜ」
ジョーは健を促した。
「そうしよう。みんな行くぞ。覚悟して掛かれ」
「ラジャー」
旅行者を装っているので、適当に談笑しながらも、彼らは油断なく、敵地へと進んで行った。
1時間程歩くと、SX地域に到達した。
5人は樹の陰に潜んだ。
「あれが採掘場か。随分大規模だな…」
健がごちた。
「よし、二手に分かれよう。
 俺とジュンと甚平は西側から、ジョーと竜は東側から潜入する。
 バードスタイルにも影響を受けるかもしれないと言う話だが、このままで行く訳には行くまい。
 変身して行こう。
 何か少しでもおかしな事があったら、必ず連絡してくれ」
「解ってるぜ、健」
ジョーを始めとして全員が頷いた。
危険な任務の予感が漂っていた。
全身が虹色に包まれて変身を完了する。
「行くぞ!」
健が先陣を切って走り始めた。




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