『G−2号機での狙撃(前編)』

今回の任務はジョー1人に対して与えられた。
射撃に関する任務だ。
ギャラクターのミサイルをレッドインパルスの2人が発見したのである。
これを破壊するのにゴッドフェニックスで行っていたのでは目立ち過ぎる。
そこでコンドルマシンに特殊弾を積んで、ジョーが遥々と出掛ける事になったのである。
「コナドレ山の頂上を見よ。
 この山は目立たない低い山だが、周りは盆地でミサイルを発射するには目立たずに済む場所なのだ」
「これをガトリング砲で破壊して来ればいいんですね。
 基地はほっといていいんですか?
 山肌から出ているミサイル以外にもミサイルがあったらどうします?」
ジョーは南部博士に訊いた。
「レッドインパルスの報告によると、ミサイルは一基と言う事だ。
 そして、狙っているのは、ISO本部だ」
「何ですって?!解りました。
 早急に対処しましょう」
「特殊弾は5発あるが、例によって、出来るだけ使わないで済む方がG−2号機への負担が少ない。
 3発目までは大丈夫かと思うが、それ以上使うと機体が熱くなり、自然発火の恐れがある。
 ジョー自身にも危険が及ぶと言う事だ」
「解りました。出来る限り発射を3発以内に抑える事にしましょう。
 ただ、特殊弾が効かない場合には、危険を冒す必要も出て来るかもしれませんよ」
「解っている…。私としてもそこが苦しい処なのだが……」
「万が一G−2号機が爆発するような事があったら、どうなります?」
「すぐに代わりを作る用意は出来ている」
「そうですか。それならいいんですが…」
ジョーは博士の準備が良過ぎる事に懸念を持った。
もしかしたら5発でも危ないのかもしれない。
「で、狙撃地点だが…」
博士が地図をスクリーンに映し出した。
「此処だ」
山の麓の村落がない部分だった。
急斜面になっている山の上にあるミサイルを撃つには真下からしか場所がないと言うのか?
これもG−2号機が危険に晒されると言う南部博士の思いが良く解る。
ジョーはミサイルのほぼ真下から、山腹に乗り掛かった形でガトリング砲を撃たなければならない事になる。
それだけでも危険な事だった。
ミサイルの破片がジョーの上に降って来る。
巻き込まれてG−2号機が爆発する危険性もあった。
しかし、ゴッドフェニックスの超バードミサイルでは、近隣の村落に被害が出る事は必至。
こうするしかないのだ、と博士は心に決めたのであろう。
博士の元に呼び出されたのもジョーだけであった。
「やってくれるか、ジョー。非常に危険だぞ」
「解っています。でも、誰かがやらなければならないんです」
ジョーは踵を返した。
「きっと無事に戻りますよ。G−2号機も一緒にね」
ジョーはそう言い置くと司令室を出て行った。

問題のコナドレ山には1時間後に到着した。
ギャラクターの警備が厳重ですぐには近づけなかった。
ガトリング砲は使えない。
既に特殊弾が装備されているからだ。
ジョーはコックピットから飛び出し、敵を倒すしかなかった。
「とうっ!」
G−2号機に気づいた連中がすぐにやって来た。
それに向かって、ジョーは気合を掛けて、キックをお見舞いした。
今頃基地内では警報が鳴っているかもしれない。
この状況で狙撃をするのは、危険だ。
ジョーは二重の危険に晒される事になった。
せめて科学忍者隊全員で来ていれば、ジョーは狙撃だけに専念出来たのである。
なぜ南部博士がジョーだけにこの任務を依頼したのか?
謎のままである。
もしかしたらあのミサイルは、ISO本部ではなく、ゴッドフェニックスを狙って建てられたものではないか、と言う疑念がジョーに湧き上がった。
ジョーは一回転して、敵の身体を長い脚で払った。
そうしておいて、羽根手裏剣をしこたま与えた。
敵は羽根手裏剣の雨に撃たれて行く。
その間にエアガンの三日月型キットを飛ばしていた。
敵の顎に続けざまにヒットして行く。
ジョーはそのままワイヤーを元に戻さず、敵の首に巻いて引っ張った。
「ぐぇぇ〜」と言う声が聴こえて、ワイヤーの張りがなくなった。
ジョーはワイヤーを戻す。
とにかくこの場を早く片付けなければ、更に敵の数は増えるだろう。
博士がゴッドフェニックスを出さなかった以上、ジョー1人でやるしかない。
そこへレッドインパルスの2人が現われた。
「加勢しよう」
「ありがてぇ!」
ジョーは素直にそれを受けた。
レッドインパルスは銃器の扱いが上手い。
ジョーじゃなくてもこの任務は出来たのではないかとすら思える。
しかし、ガトリング砲に特殊弾を装備してあるのは<G−2号機だけだ。
赤い制服は頼り甲斐があった。
ジョー1人でもこなせたには違いないが、一刻を争うこの時には有難かった。
「うおりゃあ!」
ジョーは敵兵に長い脚を絡めるように首から落とす。
倒れ掛かった処に、鳩尾に重いパンチを加える。
これでは敵はひとたまりもなかった。
ジョーは攻撃の手を緩めない。
ガトリング砲で攻撃する時には、レッドインパルスにも避難して貰わなければならない。
今はその時ではないのだ。
敵兵の数は一旦減ったが、加勢が来たのか、また増えている。
それでも3人は闘った。
レッドインパルスもなかなか訓練されていて、生身だと言うのに良く闘ってくれた。
ジョーは側転をして、敵のマシンガンの銃弾を避けた。
その時、何事かが起こった。
悲鳴は上がらなかった。
鬼石が腕を撃たれたのだ。
「大丈夫か?」
「構わんから、戦闘に集中してくれ。手当は私がする」
正木がそう告げた。
鬼石は呻き声すら上げない。
ジョーは知らなかったが、ギャラクターに喉を抉られたのだ。
「さすがに豪胆だな」
ジョーは鬼石を見てそう呟いた。
「後は俺に任せてくれ。何とかする」
ジョーはそう言うと、気合を込めて敵兵にぶつかって行った。
南部博士はレッドインパルスがいるから、健達に指令を出さなかったのだ。
ジョーは孤立した。
しかし、正木が南部博士に連絡を取っていた。
漸く健達に出動要請が出された。
その事を知ったジョーはブレスレットに向かって言った。
「博士、敵の本当の狙いはゴッドフェニックスじゃないんですか?
 健達が来たらどうなる事か…?」
「然様。良く気づいたな、ジョー。
 ゴッドフェニックスではなく、皆バラバラに行かせる。
 心配はしなくてもいい。
 私が最初からそうしていれば良かったのだ」
「レッドインパルスがいるからいい、と思ったんでしょう?」
「その通りだ。だが、鬼石君が撃たれてしまった」
「彼の怪我の程度は?」
ジョーは闘いながら話をしている。
その状況は博士にも伝わっているだろう。
「正木君が応急手当をしたから心配はしなくていい」
「解りました」
ジョーは通信を切った。
戦闘中に他の事に気を取られるのは危険な事だ。
それでなくとも、この任務は危険な任務だった。
鬼石が無事で良かった。
今はその事だけでいい。
ジョーは跳躍して、敵兵の背中に膝蹴りを喰らわせた。
「ひぃぃっ」と声を挙げて敵兵が倒れた。
早くこの場所を片付けなければ。
健達の到着を待つつもりはなかった。
チャンスはいつ転がっているか解らない。
ジョーはそのチャンスを逃すような男ではなかった。




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