『if…』

ギャラクターは壊滅し、憎っくきベルク・カッツェは総裁Xに利用されていた己を呪い、自滅した。
そして、ブラックホール作戦は『何か』の力が働いた事で失敗に終わり、科学忍者隊は地球が救われた事に胸を撫で下ろして地上へと出た。
「こりゃあ、ひでぇや。生き残っとるもんはおらんじゃろ?」
後から甚平と共に上がって来た竜が呟いた。
先に出た健とジュンは呆然としていた。
荒れ果てた土地の事だけではない。
ジョーの姿が見えない事にも…。
甚平が躓いた時に見つかった健のブーメラン。
その辺りにジョーが居たのは間違いない。
しかし、そこに彼の姿は無かった。
「みんなで手分けして絶対にジョーを探すんだ!」
健の命令に4人は散った。
(ジョー、今度こそ俺が見つけてやる。待っててくれ!)
健は祈るような思いで駆け抜けた。
本部に突入する前にジョーを見つけたのはジュンだった。
健は『俺の心』として託したブーメランを置いたままで姿を消してしまったジョーをどうしても自分の手で見つけたかった。
人面像が多数ある地形だった。
それらが崩れている。
4人は瓦礫の中を探し回った。
『健!健!』
南部からの通信が聞こえて来た。
『君達のお陰で地球は救われた。今、国連軍が君達の救助に向かっている』
「ジョーが!ジョーがまだ見つからないのです。俺達に時間を下さい」
『何?ジョーが?』
「俺達に本部の入口を教えてくれたのはジョーです。
 俺はジョーをそこに置いて行く決断をしました。
 出て来た時、ジョーはその場に居ませんでした…」
『健……』
「お願いです。彼を探させて下さい。どうしても連れて帰りたいのです」
『健。残念だが、ジョーは恐らくもう…』
「解っています。それでも、もう1度逢いたいのです!」
健は一方的に通信を切った。
その時、彼の眼に瓦礫の下からジョーの長い片足がはみ出しているのが見えた。
瓦礫を取り除いてみる。
間違いない。ジョーだ。
「みんな!ジョーを見つけたぞ!」
『ラジャー!』
他のメンバーも駆け付けた。
健は大方の瓦礫を取り除いていた。
ジョーは血に塗(まみ)れ、煤だらけになってはいたが、奇跡的に五体満足の姿でそこに居た。
呼吸(いき)は既に無かった。
しかし、その表情は安らかだった。
苦悶の様子は窺えなかった。
「ジョーっ!」
健は辺りを憚らずに絶叫し、ジョーの半身を乱暴に抱き起こして、力強く掻き抱(いだ)いた。
そして、強くその身体を揺らした。
彼の身体からは何の反応も起こらない。
ジョーの身体は既に冷たくなっていた。
顔色は蒼褪め、全身の力が抜け、腕から死後硬直が始まりつつあるような状態だった。
変わり果てた仲間の姿にジュン、甚平、竜は滂沱とした涙を流す。
健の白いバードスーツはジョーが流した血に赤く染まった。
「ジョー。済まない。俺はお前を……」
「健…」
ジュンが健の肩に触れた。
「ジョーはそんな事、少しも思っていないわ…」
綺麗な涙を拭う事もせず、ジュンはジョーに取り縋って泣いた。
「ジョー…ジョー。生きていて欲しかった…。あなたの運命を呪うわ…」
ジュンの涙は慟哭へと変わって行った。
「爆風で此処まで飛ばされてしまったんだのう……」
竜が涙を拳で乱暴に拭き取ったが、後から後から流れて来て、すぐに視界が涙が歪んだ。
甚平は変わり果てたジョーの姿を見た時から膝の力を失って、立てなくなっていた。
「嘘だろ?ジョー……。おいら、あれ程死んじゃいやだって言ったろ……?」

ジョーの姿は余りにも痛々しかった。
死の間際にも大量の血を喀いたと見られる跡が唇に張り付いていた。
もう、2度とそのブルーグレイの瞳を開く事は無かった。
憎まれ口を叩く事も、時に優しい言葉を吐く事ももうないのだ……。
それが4人に叩き付けられた現実だった。
国連軍の担架が来た時、人任せにはせず、4人でジョーの身体をそれに載せた。
そして、健は甚平が拾って来たブーメランをジョーの遺体があったその場所に突き立てた。


※これは本編とは別の話となりますが、みんなをジョーの遺体と対面させて上げたくて、こんな話を書いてみました。
だからタイトルが『if…』なのです。





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