『海洋汚染博覧会(3)』

「『海洋汚染博覧会』って、まさかこの海洋科学研究所の付近の海を汚(けが)そうって言うんじゃないでしょうね、博士」
ジョーが博士にだけ聴こえるように呟いた。
「うむ。その可能性がある。
 君はそもそものブラッサム国の海洋汚染がギャラクターの仕業だと踏んでいるようだね」
「ええ、一石二鳥の作戦を練っているに違いありません」
「その時点ではこのような博覧会が催されるとは思ってもみなかっただろうと思うのだが…」
「ブラッサム国の中に内通者がいるとしたらどうです?
 そいつが、博覧会を開くように国王に仕向けた。
 最初から目立つ場所で海洋汚染をしてやろうと言う計画だったのでは?」
「ジョー」
健が平服に戻ってやって来た。
「カッツェは?」
「これから動き出す事だろう。
 『海洋汚染博覧会』の開会を宣言して消えちまった」
「一体何を企んでいるのか?」
健が呟いた時、「南部君」と声がした。
南部が出動を依頼したレニック中佐の一隊だ。
「一体何が始まると言うのかね?我々には手の付けようがないぞ」
「そのようです。国際警察と一緒に館内にいる人々を避難させて下さい。
 申し訳ないがそれぐらいしかお願い出来る事はないようです」
「解った。そうしよう」
レニックは博士のそばに健とジョーがいるのを見届けて、部下を引き連れ、散開した。
「くそぅ。ギャラクターめ。どう出て来るか解らなければ、こっちだって動けねぇ」
ジョーが悔しそうに呟いた時、ドーンと下から突き上げるような衝撃が来た。
「博士、大丈夫ですか?」
よろめいた南部を2人で支えてから、健が訊いた。
「大丈夫だが、今の衝撃は何だ?」
「博士は此処の人達と一緒に避難して下さい。
 俺とジョーで探ってみます」
「解った。頼んだぞ」
2人はトイレに行って変身をして、出て来た。
「さて、探ると言ってもどうする?」
「まずは地下だな」
健が言った。
「竜達は国王の護衛に就いているし、俺達でゴッドフェニックスを操縦しよう」
「解った」
ゴッドフェニックスは近くの入り江に隠されていた。
2人はそれに乗り込み、海の中を捜索する事にした。
ジョーが操縦を任された。
健よりは経験が多かったが、まだ慣れている訳ではない。
しかし、上手く海洋科学研究所の下の海へと下降して行った。
「海が真っ黒だぞ」
「健。ゴッドフェニックスにも付着している。
 オイルか何かだ。
 此処でミサイル攻撃でも受けたら大変な事になるぜ。
 このまま海底から基地へ戻った方がいい。
 基地に着いたら俺が博士を迎えに行く。
 ゴッドフェニックスの機体を調べれば何か解る筈だ。
 博士にそう通信してくれ」
「解った」
ジョーは操縦で手一杯で、通信しているどころではなかった。
「む?魚が全て死んで浮かんでいるぞ!
 健!やはり汚染物質を垂れ流しやがった」
「そのようだな」
健は博士と通信をした。
「博士!博士!無事ですか?」
『レニック中佐達と共にいる。
 国王も同時に襲われたそうだが、ジュン達の活躍で事なきを得た』
「国王が?!」
健とジョーは衝撃を受けた。
これでは科学忍者隊は二手に分かれるしかない。
健が状況を説明する。
「その後会場にカッツェは現われましたか?」
『いや、私達が出るまでには現われなかったので、多分出て来なかっただろう』
「とすると、後で犯行声明的な物を出すのかもしれませんね」
健が言った。
『その可能性はある』
「とにかくゴッドフェニックスはジョーの操縦で三日月基地へと帰還中です。
 ゴッドフェニックスに着いたオイルらしき物も分析して下さい。
 サンプルとして、海洋科学研究所近くの海水も採取してあります」
『上出来だ。私もすぐに戻る』
「いえ、俺が基地に戻ったら迎えに行きますから、動かないで下さい」
ジョーが言った。
『そうか。では手数だがそうして貰おう』
「ラジャー」

そうして、ジョーは基地に戻るとすぐに潜航艇に水陸両用車を載せ、基地を出た。
バードスタイルのままだった。
博士を拾うのに、苦労する事はなかった。
現地にレニック中佐達がテントを張っていたからだ。
「国王の方は大丈夫ですか?」
「怪我はなかったそうだが、怯えておられる」
「仕方がありませんね。2度も襲われたのでは」
「君にいて欲しいようだが…、仕方があるまいな。
 先程宥めに行って来たのだが……」
「そうですか。気に入られちまったみたいですね」
「君の手腕を買っておられる」
「博士、急ぎましょう。カッツェがそろそろ動き出すかもしれません」
「そうだな。レニック中佐、世話になりました」
「いや、余り役には立てんかったな。また逢おう」
そうして、博士はジョーの車に乗り込んだ。
ジョーは海岸に置いた潜航艇に車を入れて、基地まで急いだ。
博士の分析の結果、ゴッドフェニックスに着いたオイルはブラッサム国の石油だった。
海水にもその成分が溶けていた。
「これなら回復させる事は可能だ。
 前回と同じ方法を採ればいい」
「ですが、ギャラクターにしては、どうも間が抜けている感じがしますね。
 同じ事を繰り返すだなんて…」
ジョーが腕を組んだ。
「裏に何かありそうだ」
「まだこれから何か打って出てくる可能性もある、と言う事ですか?」
健が訊いた。
「その通りだ。もっと恐ろしい汚染物質を流すつもりなのかもしれない。
 これはただの手掛けに過ぎないのかもしれん」
「何とかギャラクターが動き出す前に先手を打たねぇと…」
「その通りです、博士」
「ブラッサム国王には国にお帰り戴いて、ジュン達にも戻って貰うしかないな」
博士は顎に手を当てながら、まだ憂慮している感じで言った。
「レニック中佐に直々に護衛をして貰うしかないのでは?」
ジョーが言った。
「それなら国王も安全に国に帰れるかもしれんが…。
 問題は国に帰ってからだ。
 内通者がいるとなれば、国に戻っても危ない」
「ではどうしたら…?」
健が困り果てた風に言った。
「どうも事はブラッサム国の内部にある気がする。
 海洋汚染の事は私に任せて、諸君はブラッサム国まで国王を護衛して行くのだ。
 そして、そのまま国内に留まり、ギャラクターの魔の手を防ぐのだ」
「また、あの変な民族衣装を着るのか?やれやれ…」
「ジョー。そんな事を言っている場合じゃないだろう」
健に窘められ、ジョーは溜息を吐いた。
「とにかく国王の処に向かいます。
 メカがないのが不安ですが…」
「健。ブラッサム国内でGメカで走り回る訳には行くまい」
「それもそうですね。すみません。
 G−1号、G−2号はすぐにG−3号達と合流します」
「頼んだぞ。くれぐれも国王を守ってくれたまえ」
「解りました」
健とジョーは先程の潜航艇で現地まで出掛ける事にした。




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