『海洋汚染博覧会(6)』

『ブラッサム国の首相から正式に科学忍者隊へ出動要請があった。
 どうやらギャラクターから何か連絡をして来たようだ。
 これまでは国内の事と、隠し通していたが、そうは行かなくなったと言っている』
南部博士に国王が誘拐された事を報告すると、博士からはそう返答があった。
『今すぐにバードスタイルで首相官邸に行きたまえ。
 話は通っている』
「ゴッドフェニックスは基地にあるぞい。
 メカでも出て来たらどうするかいのう?」
竜が呟いた。
「その時はその時だ。中に潜入して爆破してやればいい」
「ジョーの言う通りだ。とにかく行こう」
健が腕を振り上げて『行こう』と合図した。
ウトウトとしていた甚平はジュンに起こされて、まだ様子が呑み込めていないようだった。
すぐに首相官邸へと向かった。
首相とは即時面談を許された。
「これまで一般には隠していたのだが、我々は国王の生命と引き換えに石油資源を全部横流ししろと脅迫されていた。
 しかし、我々は応じなかった。
 国王の身辺警護を強化し、対抗しようとしたのだ。
 しかし、ギャラクターは石油流出事故を起こした。
 そして、執事に化けて『海洋浄化計画博覧会』 を開くように国王に進言したらしい。
 その後の事は解らん。
 目的はその博覧会を滅茶滅茶にして、南部博士の面目を潰す事だったのかもしれない。
 我々には全く迷惑な話だ。
 だが、今度は国王自身を誘拐して、同じ事を脅迫して来た」
首相は横柄な態度を取る年かさの恰幅の良い男だったが、健達を少年と見ているから仕方がない。
ジョーも特に反感は示さなかった。
「ギャラクターはまた石油を要求して来たのですね?」
健が訊いた。
「その通りだ。国王の身柄を確保されたとあっては、要求に応じざるを得ない。
 この国は王政を敷いている。
 いくら私と言う首相がいるからと言っても、出来る事は限られているのだ。
 国王の生命は第一に考えなければなるまい」
「解りました。我々は国王陛下の所在を捜索し、必ず救い出します」
健は断言した。
「頼む。最早科学忍者隊以外に頼れる者はおらん」
首相はそれを言うのも屈辱的だと言わんばかりの態度であったが、科学忍者隊は気にはしなかった。
「早速捜索に入ります」
そう言って首相の執務室を辞した。

「さて、どうするよ、健」
官邸を出てから、ジョーが腕を組んで言った。
「探す当てはねぇぜ」
「昨日爆破して来た基地。
 取り敢えずあそこに行ってみよう。
 もしかしたら地下通路からどこかに繋がっているかもしれない」
「成る程な。さすがは健だ」
「煽てるなよ」
「昨日は石油を流出させるコンピューター機器を叩いただけだったからな」
「俺の判断ミスだ。
 あの時もっと奥まで探ってみる必要があったのかもしれない」
「気にするなって事よ。行こうぜ」
科学忍者隊は風のようにビルの屋上を飛び始めた。

やがて石油コンビナートに到着した。
コンピューター機器を破壊された事から、管理棟にギャラクターの姿はなかった。
ジョーがエレベーターを作動させる。
「みんな、気をつけろよ。
 入口は手薄だったが、地下では意外と厳戒体制にあるかもしれん」
「ラジャー」
健の言葉に全員が答える。
昨日コンピュータールームを破壊されたばかりだ。
ギャラクターが総出で修理に当たっている可能性もあった。
エレベーターの扉が開いた。
買って知りたる敵の基地。
健とジョーはさっさと歩いて行く。
まだ敵兵には出逢わない。
だが……。
ジョーがキッと眼をキツくした。
健もほぼ同時に反応した。
その瞬間、気配を隠していたギャラクターのマシンガンの洗礼に遭った。
全員は散り、それぞれに事無きを得ている。
「やはりいやがったか…」
ジョーが呟いた。
彼は身体を開いて隙を見せておき、そこにまんまと漬け込んで来た敵兵の頭にエルボーを喰らわせた。
敵はべしゃりと潰れるような倒れ込み方をして、気を失った。
「健!先に行け。国王の身柄を確保する事が先決だ。
 此処は俺と甚平で充分だ」
「解った。頼んだぞ」
「兄貴ぃ。後からすぐに追い掛けるからね!」
甚平も余裕でアメリカンクラッカーを振り回している。
「甚平、油断はするなよ」
ジョーは調子に乗っている甚平を窘めた。
「解ってるよぅ」
甚平は意にも介してはいない。
さすがに眠気も醒めたようで、敏捷に活動している。
ジョーも安心して、自分の闘いに没頭した。
羽根手裏剣を舞わせ、エアガンの三日月型キットが敵兵にヒットして行く。
その動きは華麗としか言いようがない。
身体に染み付いている戦闘の勘は、頭で考える前に身体が反応していると言った感じだ。
科学忍者隊は全員そうだろう。
ジョーは身体を沈み込ませると、下から敵兵の脚を長い脚で薙ぎ払った。
敵が何人もどうっと倒れて行く。
これは身体が小さい甚平にはなかなか出来ない技だ。
甚平は見とれたようにそれを見ていた。
「馬鹿野郎。ボーッとするな」
「大丈夫、大丈夫。
 ジョーの兄貴はいいなぁ、脚が長くて」
甚平の頭にスコーンとジョーの拳が振った。
「闘いに専念しろ」
「はいはい」
甚平はもう闘いに飽きている。
詰まらない敵ばかりが相手だからだ。
「しょうがねぇ野郎だ。後でガツンと言ってやる」
ジョーはブツブツと呟きながらも、敵兵を確実に仕留めていた。
パッと側転をして、何時の間にか神出鬼没、意外な場所に現われて敵を混乱に陥れていた。
「健、そっちはどうだ?」
『コンピュータールームに修理に当たっている敵がいて、ジュンと竜を残して俺だけが先に向かっている。
 通路が3本あるから、真ん中以外の通路を行ってくれ』
「解った。此処が片付き次第、すぐに行くぜ。
 なぁに、もうすぐだ」
ジョーはブレスレットに向かってニヤリと笑い、振り向きざまにエアガンを撃ちまくった。
敵兵がバタバタと倒れ込んで行く。
射撃の腕も健在だ。
「甚平、行くぜ」
「あいよ〜」
凸凹コンビが飛び出した。
すぐにコンピュータールームに到着したが、ジュンが「先へ行って頂戴」と言ったので、そのまま加勢はせずに走り去った。
「甚平。右を行け。俺は左を行く」
「ラジャー」
此処から2人は分かれて、長い通路を瞬速で走りまくった。
ジョーの脚は速い。
脚が長いのもあるだろう。
健との差を縮めたいとばかりにひた走った。
やがて通路の先に光が見えた。
(あそこに何かある…)
ジョーは何かを予感していた。




inserted by FC2 system