『海洋汚染博覧会(7)』

ジョーは忍びながら、シュッシュッと先へ進んだ。
広い洞窟のような部屋が見えた。
天井が高い。
その高い天井に何と国王がぶら下げられている。
国王は失禁しそうな位に恐れ、震え上がっているのが此処からでも解る。
「健、国王を発見した。左側の道だ!」
『解った、すぐに行く』
「国王は酷く恐れている。早く救出しないと精神的に参ってしまうかもしれねぇ」
『ジョー!』
「1人で飛び込んででも何とか国王を救う。
 早いとこ応援を頼む」
『全員手が空いている。急いで向かう』
「頼んだぜ」
通信を切って、ジョーはどうやって国王を助け出そうかと考えた。
国王は臆病だ。
何かのショックで心臓麻痺でも起こされては困る。
国王は10mの高さで宙に浮いている。
鎖を付けられた両腕には血が滲んでいる。
国王は恰幅がいい。
自らの体重で、その腕を痛めつけてしまっているのだ。
下にはギャラクターの兵士達がいる。
(こいつらは無視して一か八かやってみるしかねぇな…)
傷を負う事も覚悟の上で、ジョーはエアガンを手に飛び出した。
国王の手枷をエアガンで撃ち抜き、ジャンプして出来るだけ高い段階で国王をキャッチして、床に着地する。
「国王、大丈夫ですか?」
国王は今のショックで気を失っていた。
元々気が弱いお人なのだ…。
ジョーは思った。
左腕に国王をキャッチした時の痺れが残った。
しかし、それに構っている暇はなかった。
ギャラクターの隊員達からの集中砲火から国王を守らなければならなかった。
ジョーは国王を壁際に引き摺って行き、自分が盾になるように片膝立ちをした。
「此処まで来て、国王を無事に救出しない訳には行かねぇのさ」
ジョーは不敵に笑って見せた。
『さすがは科学忍者隊・コンドルのジョー。
 見事な手腕だった。
 だがこれからどうする?
 お前は籠の中の鳥同然だ』
スクリーンの中からベルク・カッツェが嘲笑した。
「残念ながら科学忍者隊は1羽じゃないんでね」
ジョーがそう言った瞬間に、健達が躍り込んで来た。
『くそう。やってしまえ!国王の身柄を渡すなよ』
カッツェがほざいている間に、健が竜に指示をして国王を担がせた。
護衛にジュンが着いて行く事になった。
「ジョー、左腕はどうした?」
「なあに、国王を受け止めた時にちょっとな。
 痺れているだけだ。直に治るさ」
「よし、行くぞ」
「おう」
「おいらもいるぜ。ジョーの兄貴は無理しなくてもいいよ」
「馬鹿野郎。大した事ぁねぇ」
3人は分かれて、敵兵と対峙し始めた。
ジョーはいついかなる時でも自分自身の肉体を武器として使えるように訓練している。
左腕が多少痺れていようが、戦力が落ちる事はなかった。
「うおりゃあ!」
気合を掛けながら、いつもの動きで敵兵を薙ぎ倒して行く。
「健、カッツェは此処にはいないぞ」
「解っている。やはり国外に逃亡したんだ」
「国王を国内で人質にしていたのは失策だったな。
 俺達に簡単に取り返された…。
 ん?まさか、偽者って事はねぇだろうな!?」
「ジュン。首相に国王の身体的特徴を訊いてくれ。
 今、救出したのが本物の国王であるかどうか!」
健が咄嗟にジュンに通信をした。
ジョーの懸念は確かに考えておかなければならない事だった。
余りにも簡単に助け出す事が出来たものだ。
「兄貴。あそこにメカ鉄獣があるよ」
その時、甚平が言った。
別の部屋にミサイル型のメカ鉄獣があった。
この場所は石油コンビナートから随分と離れているから、上は海中かもしれない。
「甚平、でかしたぜ。国王はあの中かもしれねぇ」
『健、ジョー。国王の左腕には大きなシミがあるそうよ。
 この男にはないわ』
「ジュン、その男は偽者だ。捨て置け。
 甚平がメカ鉄獣を発見した。
 全員で乗り込むぞ」
『ラジャー』
「また、ジョーの勘が当たったな」
「どうせならもっと早く気づくべきだったぜ…」
ジョーは敵兵にパンチを喰らわせながら、まるで痛恨のミスをしたかのように呟いた。
「見ろ。あそこにバズーカ砲を担いだチーフ級の隊員がいる。
 丁度5人だ。最初から俺達を狙い撃ちにするのが目的だったんだ。
 すまねぇ。俺が罠に嵌る切っ掛けを作ったようなものだ」
「気にするな、ジョー。甚平、しっかりやれよ」
健はそう言って、跳躍した。
やがてジュンと竜も合流した。
5人は5人のチーフに囲まれたが、ジョーが1人のバズーカ砲の銃口に楔を撃ち込んで、口火を切った。
バズーカ砲は暴発した。
それを皮切りに科学忍者隊の反撃が始まった。
健はブーメランでバズーカ砲の銃口を切り裂き、ジュンは銃口をヨーヨー爆弾で巻いて電流を流した。
バズーカ砲はその場で爆発だ。
甚平はアメリカンクラッカーで銃口を巻き取って混乱させて暴発を引き起こす。
竜はその混乱に乗じて自分の力1つで敵のバズーカ砲を奪い取り、脅しに1発天井に向けて発射する。
これだけでギャラクターは手も足も出なくなった。
そこで健が全員に命じた。
「メカ鉄獣に乗り込むんだ!」
「ラジャー」
全員が健に続いた。

ミサイル型メカ鉄獣はやけに静かだ。
まだ乗組員は乗り込んでいないのかもしれない。
「もしかしたら自動操縦で国王と俺達を宇宙にでも飛ばそうと企んでいるのかもしれねぇぜ」
ミサイルを見上げながらジョーが言った。
「それは否定出来ないな」
健も頷いた。
「だが、俺達は行かねばならない。
 国王を必ず守ると約束して来たんだ」
「解ってるぜ、健」
「私、健に生命を預けるわ」
「おいらも」
「おらもじゃ」
健は決意を込めた眼で全員を見回し、最後にジョーと目線を合わせた。
お互いに頷き合う。
「行くぞ!」
ミサイル型メカ鉄獣は、乗り込み口が開いていた。
如何にも怪しい。
誘い込むようだ。
しかし、そんな中を危険にも顧みず乗り込む5人であった。
恐れる事はない。
科学忍者隊は5人で1人なのだから。




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