『海洋汚染博覧会(8)/終章』

「こいつはミサイルそのものだぜ。メカ鉄獣じゃねぇ」
乗り込む寸前にジョーが言った。
「しかし、行かねばなるまい」
「解ってるさ」
ジョーは率先して中へと飛び込んだ。
5人が乗り込むと、途端に乗降口が閉まった。
「やっぱりな…」
ジョーはちぇっと舌打ちをした。
「俺達を罠に掛けて国王共々宇宙にでも飛ばす気だぜ」
「とにかく国王を探そう」
「ラジャー」
ミサイルが発射するゴゴゴゴゴ…と言う音を聴きながら、全員が走り始めた。
「南部博士。国王と共にミサイルに閉じ込められました。
 ミサイルの軌道を調べて下さい」
健は博士に通信する事も忘れなかった。
『何?解った』
南部博士は博覧会を後から襲った海洋汚染の処理で忙しい処だった。
だが、科学忍者隊の危機に黙っていられる筈はなかった。
「健、あれは何だ?」
ある部屋に石油を入れる容器のような物が山積みされていた。
「何かの手掛かりになるかもしれねぇ。
 邪魔だが少し戴いて行こうぜ」
ジョーがそう言ったので、健もジャンプして1つそれを手に持った。
「何やら液体が入っているな」
「海洋汚染と関係があるかもしれねぇぜ」
「ああ」
2人は1人1つずつの容器を手に、国王の捜索を再開した。
『健。ミサイルは火星に向かっているぞ。
 全員バードスクランブルを発信するんだ。
 その電波を使ってミサイルを安全な場所に誘導するから、その間に国王を探し、救い出すのだ』
「ラジャー」
「さて、国王がどこにいるかだな…」
「ミサイルの先端なんか怪しくない?」
ジュンが言った。
「よし、行ってみよう」
健がすぐさま答え、ミサイルの中の円筒形の通路を進んだ。
国王はミサイルの先端部分の部屋に椅子に縛り付けられていた。
これは怖い思いをした事だろう。
「気を失っているのが不幸中の幸いか…」
ジョーが呟いた。
戒めを解き、国王は竜が担いだ。
出口を探す。
『着地点は海だ。5分後に墜落する』
「解りました。国王は無事に救出しました。
 後は任せて下さい」
健が答えた。
「健、出口はさっき侵入した場所しかなさそうだな」
ジョーが言うと、「みんな急げ!」と健が叫んだ。
健とジョーは例の容器を抱え持っていた。
バードスクランブルを発信するには不便だったが、持ち帰らない訳には行かなかった。
ジョーが言うように何かの手掛かりになる可能性がある。
敢えてミサイルに積んであったのは、もしかしたら浄化剤なのではないか、とジョーは直感したのである。
「後、1分!出口から飛び出すぞ!
 国王をマントで浮かすんだ。
 ショックを与えないようにな」
健の指示が飛んだ。
全員がマントを広げ、国王の身体を支えて出口から飛び出した。
海へと軟着陸する。
その直後にミサイルが海底へと突っ込んだ。
爆発による被害は多少あったが、海が汚染される事はなかった。
やはりジョー達が持ち出して来たあの容器は汚染剤ではなく、浄化剤だった可能性が高い。
健がその事を南部博士に告げた。
「良く国王を助けてくれた。
 国連軍の救助隊が向かっているから待っていてくれたまえ」
博士はまだ忙しそうだった。

こうして科学忍者隊は三日月基地へと戻った。
博士に例の液体を見て貰うと果たして浄化剤だった事が解った。
「ジョー、でかしたぞ」
博士達が苦労して開発していた浄化剤が此処にある。
後は成分を調査して大量生産すれば良い。
「国王も無事に国に戻られた。
 諸君に礼を言っていたぞ」
「国王は気が弱いお人でしたから、心臓麻痺でも起こされやしないかとヒヤヒヤしましたよ」
ジョーがホッとしたように言った。
「うむ。大事を取って入院されているそうだ」
「やはりそうですか」
健が答えた。
「まあ、無事とあれば俺達は約束を果たした事になる。
 あの鼻持ちならねぇ首相も満足だろうよ」
「はは、ジョーの兄貴やっぱり腹を立ててたんだ」
甚平が笑った。
「それにしては黙っていたのは上出来だったな」
健にまでネタにされた。
「くそったれ。俺にだって配慮ってもんはあるんだよ」
「ほぇ〜。知らなかったわ〜」
竜までが参加して来て、ジョーは顔に手を当てた。
「ジョー。国王が君に逢いたがっているがどうする?」
博士が言った。
「此処でのうのうと逢いに行ったら、俺は科学忍者隊です、って言っているようなものですよ。
 何かの任務があって行けないと断っておいて下さい。
 あ…、お大事に、と……」
最後の一言はおまけのように付け加えたが、ジョーにとっては本心だった。
博士もその辺りは汲み取ってくれたようだ。
「ああ、確かに伝えておこう」
にんまりと笑った博士は忙しそうに出て行った。
これからギャラクターによって『海洋汚染博覧会』にされてしまった会場を、旧に復する作業があって、博士も本当に大変な事だ。
ジョーは少し同情した。
「こう言った後処理も全部南部博士が押し付けられるんだからな。
 国際科学技術庁の総力を上げて、なんて言っていても、本当に動いているのは南部博士だけだ」
ジョーは吐き捨てるように言った。
「何とも後味が悪い事件だったな。
 結局カッツェは何をしたかったんだ?」
健が言った。
「一石二鳥を狙って、結局二兎を追う者一兎をも得ずになったって事だろ?」
ジョーはふてぶてしく言った。
それだけ腹を立てていた。
ギャラクターの奴ら、特にベルク・カッツェは絶対に許せねぇ。
そんな思いが再燃する任務後であった。




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