『世界で3人(1)』

『科学忍者隊の諸君。至急私の元に集まってくれたまえ』
南部博士の呼び出しで全員が風のように三日月基地へと集合した。
「この写真を見て欲しい」
そこに映し出された映像に現われた人物の姿は衝撃的だった。
「ぶはっ!ジョー、何て格好してるんだよ」
「博士、こんな合成写真をなぜ俺達に見せるんです?」
竜と健が違う反応を示した。
ジョーも驚いたが、彼は鋭く言った。
「これは俺じゃねえ。眼つきを見てみろ」
スクリーンに映し出された人物は、どこぞの国の王子と見える。
ヒラヒラとした衣装を纏っていた。
ジョーにそっくりなのだが、眼つきは柔らかかった。
「その通り。この方はアルベニア王国のシルベスタ王子だ。
 たまたまだが、ジョーに良く似ている」
「驚いたなー。世界には自分にそっくりな人間が3人いると聴いた事があるが…」
健が呟いた。
ジョーはいけ好かないと言った顔でそっぽを向いた。
自分とそっくりな人間が着ている衣装は反吐が出るようだった。
中世的な衣装で、腰には一応剣を下げていたが、遣えるのかどうかは解らなかった。
形式上の事かもしれない、とジョーは思った。
「このシルベスタ王子がギャラクターに狙われている」
南部博士の一言に、ジョーは全てを察した。
「まさか、このヒラヒラした衣装を俺に着せて身代わりにする気じゃないでしょうね」
「まさにその通りだ。勘がいいな」
竜が遠慮なくジョーを指差してゲラゲラと笑った。
「竜、そんなに笑うなんて酷くてよ」
ジュンが窘めた。
「勘弁して下さいよ。護衛でも何でもしますから、あの衣装だけは……」
「博士。なぜシルベスタ王子が狙われているのですか?」
ジョーの言葉に被せるように、健が言った。
さすがはリーダー。
そちらの方を気にした。
「アルベニア王国では、今、内乱が起きている。
 その首謀者がシルベスタ王子なのだ」
「どう言う事です?」
「父親である国王が、国民を顧みずに国の金銀財宝をギャラクターに横流ししているようだ。
 この国は金銀が採れて豊かな国だったが、ある時を境にそれを国が独占してしまっているのだ。
 シルベスタ王子はその父上に対して反乱を起こした。
 ギャラクターにとっては、邪魔な存在だ」
「成る程。骨のある奴ですね」
「ジョー、仮にも相手は王子だぞ」
健が窘めた。
「そこで、ジョーに王子に成り代わって欲しいのだ」
「そんなに骨のある王子がそんな事を望みますかね?」
「いや、側近から護衛の依頼があった」
「やっぱりそうですか……」
ジョーは顎に手を当てた。
どう譲歩してもあの衣装は着たくない。
「今は戦闘中だ。あんな派手な衣装は着ておられないに違いない」
南部博士がジョーを取りなすように言った。
「そうだよ、ジョーの兄貴。この写真は少し前のだよ」
「そう、だな……」
ジョーは顎から手を外した。
「解りました、博士。とにかくアルベニア王国に行ってみましょう」
「やってくれるかね?」
「王子が拒否するかもしれませんがね」
ジョーは王子の骨のある処が気に入ったらしい。
「アルベニア王国に入る事は問題ないのでしょうか?」
と健。
「国王の軍が警護をしている。
 ゴッドフェニックスで領空内に入るのは危険だろう」
「解りました。陸地続きの隣国から国境線を越えるしかないって事ですね」
「そうだ。諸君なら忍び込めるだろう。やり方は任せる。
 隣国のスコール国には私から協力を依頼しておく事にしよう」
「ラジャー」
こうして、科学忍者隊の5人はアルベニア王国へと向かう事になった。

「国境警備隊がいるぜ。どうやって侵入するかだな」
ジョーが言った。
「甚平のG−4号機なら穴を掘れるだろう」
健が事も無げに言った。
「成る程。夜半にそうして穴から入り込むって訳だ」
健はアルベニアとスコール国の国境近くの詳細な地図を取り出した。
航空写真と重ねてあるので、精密に場所が解る。
「此処から穴を掘って、此処まで出る。
 国境警備隊にも気づかれまい。
 甚平、大役だぞ」
「へっへ〜。おいらに任せておきなって!」
甚平が自慢げに鼻を擦った。
「調子に乗るなよ。国境警備隊には多分ギャラクターが紛れ込んでいるに違いねぇ」
ジョーが甚平のヘルメットに軽く拳を落とした。
「今夜出発だ。全員仮眠を取るように」
健の指示で、全員が自席で仮眠を取り、夜に備えた。
そうして、彼らは計画通り、アルベニア王国へと忍び込んだ。
甚平のG−4号機は森に隠し、彼らは平服に戻って、街中を歩く事にした。
ジョーだけはサングラスをした。
王子に似たマスクでは支障があると思われたからだ。
それでも時々、「お忍びですか?王子様」とそっと声を掛けられるのには閉口した。
その度に「人違いだ」と言わなければならなかった。
その声がまた王子に似ているらしい事が解った。
「顔が似ていると声も似ているんだな。体格も殆ど変わらないしな」
健がまじまじとジョーの姿を見た。
「仕方がねぇだろ。俺のせいじゃねぇ」
ジョーはぶんむくれた。
今回の事件はどうもいけ好かない。
「とにかく王子はどの辺で自分の軍を取り纏めているのか。
 それが解らないと困ったぞ。
 聞き込みをする訳にも行くまい」
健が言った。
「闘いの気配を感じ取るしかねぇだろ」
ジョーが言った時、激しい銃声が聴こえて来た。
「いいタイミングだ。行ってみようぜ」
「ああ」
ジョーの後に健達も続いた。

辺りは血で血を洗うような惨状だった。
闘いが終わって五分と五分。
引き上げようとする反乱軍の中に、ジョーとそっくりな男を見つけた5人はそっと近づいた。
側近が邪魔に入ったので健は、
「国際科学技術庁の南部博士からの依頼で来た者です」
とそっと言った。
「ほう。科学忍者隊が来るものかと思っていたのだが…。
 こんな若者で大丈夫なのだろうか?」
「何をしておる?」
王子が振り返った時、ジョーはサングラスを外した。
周囲の者が息を呑んだ。
「こりゃあ、生き写しだわい」
竜が呟いた。
「彼が王子様に成りすまします。
 王子様はギャラクターに狙われていると聴いています」
健が説明した。
「そんな事を頼んだ覚えはない」
王子はジョーとそっくりな声でそう言った。
「我々が依頼したのです」
側近の中でも一番年嵩の男が言った。
「こんなにそっくりな男が来るとは思わなかった。
 しかし、これは渡りに船だ。
 王子。影武者も必要ですぞ」
側近はそう言って、王子を説得に当たった。
納得が行かないような顔をして、王子はジョーを見た。
眼つきは柔らかい。
本来は武闘派ではないのだろう。
父親の変貌振りに止むを得ず銃を取ったのだ、とジョーには解った。




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