『救出』

濃い目の琥珀色の髪が風に靡いた。
ジョーは高台からギャラクターの基地を見下ろしている。
この中に仲間達が捕虜にされている筈だ。
G−2号機にはフォーミュラカーとしての威力はあるが、如何せん飛ぶ事が出来ない。
どんなにジョーが飛ばしても、居場所によっては出動に間に合わない事があるのだ。
G−2号がゴッドフェニックスに合体出来ないまま撃墜されてしまい、4人は白兵戦に出たが、戦闘中の通路に罠が張られていて、その下部にある監禁部屋に纏めて落とされてしまっていた。
南部から4人が行方不明と聞いて、ジョーはアクセルを踏み込んだ。
もう少しで合体出来る処だったのに、彼は間に合わなかったのだ。
(くそぅ…。みんな無事でいろよ!)
ジョーは唇を噛み締めた。
途中の山中でゴッドフェニックスを発見すると、彼はG−2号機を乗り捨て、バードスタイルを解いて、生身の姿になって基地へと近づいた。
基地は死火山の火口にあった。
ギャラクターの警戒はそれなりにあったが、そこまでは羽根手裏剣で敵を沈黙させて潜入して来た。
幸いにして、彼が此処まで来ている事は敵に悟られていないようだ。
「バードGO!」
ジョーは再びバードスタイルに変身して、身軽に跳躍した。
侵入する場所は決めてあった。
火口である。
ジョーは躊躇う事なく、そこへと飛び込んで行った。

案の定、警備は厳重だった。
マシンガンの集中攻撃に遭う。
しかし、簡単に撃たれてしまうような彼ではない。
素早い動作で避けながら、エアガンと羽根手裏剣で的確に攻撃手を倒して行く。
(先を急ぐんだ。てめぇら雑魚を相手にしている場合じゃねぇ!)
その時、健からのバードスクランブルを受信した。
彼が近くまで到達した為、キャッチする事が出来たのだろう。
「地下だな…」
ジョーは身を翻して、地下通路へと進んだ。
ブレスレットが確実に仲間の元へと近づいている事を示している。
「此処だ!」
その部屋の前には敵兵がぞろぞろと揃っていた。
インディアンのような姿をした屈強そうな隊長が仁王立ちになって待ち構えていた。
がっちりとした体躯で、ジョーの筋肉質な身体の2倍はありそうな力自慢のタイプだ。
「おう。最後の1人が来たようだ。お前も一緒に5人纏めて焼き鳥にしてくれようぞ!」
その隊長は大きなバズーカ砲を肩に軽々と担いでいた。
動きが意外と素早い。
ジョーは健達が監禁されている部屋を前にして、大格闘を演じる事になった。
隙を見て部屋のドアをエアガンで焼き切って仲間を救い出したい処だが、そのような余裕は全く無かった。
中から爆破する事は既に健達が試している筈だろう。

ジョーは地を蹴り、天を蹴り、機敏に動き、羽根手裏剣を雨あられと降らせた。
雑魚が全部倒れて行く。
「へへへ。これで邪魔者は居なくなったな」
彼は不敵に笑った。
「撃つなら撃ってみな。俺のエアガンの方が発射までコンマ数秒早い筈だぜ」
隊長がバズーカ砲の照準をジョーの心臓に合わせた。
ジョーは身動(じろ)ぎもしない。
動いたのは、右腕だけだ。
引き金を引いたのは同時だった。
ジョーは引き金を引くと跳躍して通路の天井に張り付いた。
バズーカ砲が右足首を掠ったが、ジョーのエアガンの方は着実に敵の隊長の心臓を貫いていた。
右足に焼け付くような痛みが走った。
しかし、無事に通路に着地した。
(歩くのに少し支障があるが、大丈夫だ…)
ジョーは傷の具合を確認すると、隊長が持っていたバズーカ砲を手に取った。
幸いにして砲弾が1発残っていた。
「健!聞こえるか?」
『ジョーか?有りっ丈の爆弾を使い果たしたんだが、ビクともしないんだ』
「此処にバズーカ砲がある。1発だけだが、動力源を見つけて破壊すれば何とかなるだろうよ。
 少し待ってろ!」
ジョーはドアの周囲の壁を叩き始めた。
ドアの右横にそこだけ音が違う場所があった。
(此処だ!)
「健!みんな!バズーカで動力源を破壊する!全員天井に張り付いて爆風を避けるんだ!」
言うや否や、ジョーは片膝を付いてバズーカ砲を肩に構えた。
狙い通りに自動ドアの下の部分が解放された。
半分だけだが、支障は無い。
此処は力自慢の竜の出番だ。
通れるだけのスペースを彼が開けてくれた。
「ジョー、助かった」
4人が無事に救出された。
「遅れて済まなかったな…。俺が間に合っていれば、こんなに手間取る事は無かった。
 急ごうぜ!カッツェの奴をとっ捕まえてやる!」
逸早く走り出そうとしたジョーだが、右足首に激痛が走り、膝を付いた。
「ジョー!」
ジュンが駆け寄る。
「大丈夫だ。バズーカ砲が少し掠っただけさ。とにかく急ごうぜ!」

仲間達は無事に救出出来、敵基地の中枢は爆破した。
しかし、ベルク・カッツェはまたしても脱出に成功するのであった。
科学忍者隊は歯噛みをしながらそれを見送った。




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