『誕生日プレゼント』

※この作品は1/20の南部響子さんのお誕生日に寄せて書かせて戴きました…。
 お祝いとして響子さんに捧げたいと思います。



「ジョー。何を思い悩んでいるんだ?」
いつもの如く、『スナックジュン』のカウンターに3人が屯している。
健がさっきからジョーの様子を気に掛けていた。
ジュンと甚平はカウンターの中。
ジョーはメンバーの会話にも入らず、1人何かを考えあぐねている。
竜もそれを見咎めて言った。
「そうだよ、お前らしくないわな」
「そうよ、ジョー。どうしたって言うの?」
ジョーはある女性への誕生日プレゼントを何にするかを考え込んでいて、彼らの他愛も無い会話に上の空だった為に逆に見咎められてしまったのだ。
「別にいいって事よ。構わねぇでくれ。おめぇ達に相談してもまともな答えは期待出来ねぇからな」
「何だよ、ジョー、その言い草は?」
竜が切れ掛かったのを健が諫めながら、「珍しいじゃないか?どうしたって言うんだ?」
「自分で考えるから構わんでくれ!」
「解ったわ。大方女性へのプレゼントでしょう?」
ジュンの勘は鋭かった。
「う゛っ」
ジョーは言葉に詰まった。
「案の定ね…」
ジュンが微笑んだ。
「どんな方かは知らないけど、顔を見せて上げる事が一番じゃない?」
「綺麗な女性なんじゃろうのう…。いいのう。ジョーは何でそんなにモテるんかいのう?」
ジョーではなく、ジュンの鉄拳が竜の脳天に炸裂した。
「少し黙ってらっしゃい!」
健と甚平がたじたじとなって、「おお、こわっ…」と小声で呟いた。
「どんなプレゼントよりも、好きな男の人と一緒にいる時間程女性にとって嬉しい事はないわ。
 悩む事なんかなくてよ、ジョー」
これはそのまま健に向かって言っている言葉でもあったが、健には全く響いていない。
「プレゼントなんて物は後から付いて来るものよ。一番のプレゼントは貴方自身なのよ。
 その日に出動がない事を祈っているわね」
ジュンがウィンクをした。
「んじゃ、ジョーをラッピングしてゴッドフェニックスで届けるとするかのう?」
「馬鹿!」
竜と健が漫才を演じている。
「ジュン……、ありがとよ」
ジョーは代金をカウンターに置くと颯爽と出て行った。
彼は科学忍者隊の中で一番大人なのは、ジュンだと言う事を知っていた。

ジョーは柄に合わねぇ、と思い乍らタキシードに着替え、その女(ひと)を夜景が綺麗な高級ホテルの最上階にあるレストランに呼び出した。
ちょっと値が張ったが、個室を予約していた。
そして、彼の懐には綺麗にラッピングされた細長い箱が……。
レースの賞金が入ったので、少し気張ってみた。
ジョーの隣の椅子に置かれた大きな薔薇の花束が、向かい側の席にやって来るであろう相手に手渡されるのを今か今かと待っていた。






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