『海洋科学研究所(7)』

チーフを倒したジョーは、また雑魚兵達との闘いに戻った。
健が1人で大分活躍してくれていたが、まだ一掃とは行かない状態だった。
その時、ジュンから電力室を爆破すると連絡が入り、すぐさま爆発が起きた。
照明が揺らぎ、そして消えた。
敵兵はざわざわとした。
「これじゃ何も見えないぜ」
健とジョーには思う壺だった。
彼らは暗かろうが何だろうが、思いっきり闘う事が出来る。
暗い中でも闘えるように訓練されていた。
特にジョーは個人的にも1人訓練室に入り、暗闇で戦闘ロボットと闘う訓練を積んでいた。
健もそれに勝るとも劣らない能力を身に付けている。
科学忍者隊で実力が伯仲している2人は、お互いにその力を認め合っていた。
暗闇でも、敵兵の悲鳴が上がり続けた。
健もジョーも傷ひとつ負っていない。
敵はマシンガンを持ってはいるが、ただのめくら撃ちになっていて、全く役には立っていない。
同士討ちを引き起こすだけだから、やめればいい。
ジョーはそう思いながら闘っていた。
暗闇の中でも、羽根手裏剣は思うように決まった。
夜目が効くようになったし、気配だけで闘う事が出来る。
それが強みだった。
ジョーは回転して長い脚で敵兵を薙ぎ払った。
思い通りに技が決まって行く。
気持ちが良い程だ。
敵兵はなされるままに倒れて行く。
「中枢コンピューターに爆弾を仕掛けなければ」
健が言った。
「この部屋は講堂として使われている。
 司令室を見つけ出さなければならねぇ」
ジョーが呟いた。
「この部屋のコンピューターも破壊して行こう」
「おう、そうだな」
ジョーは健とタイミングをずらして踵から爆弾を取り出した。
2人は闘いながらも手分けをして爆弾を仕掛けた。
敵兵が剥がそうとするが、剥がす事が出来ない。
剥がせないと解った途端に腰が引けている。
「ジョー、此処はもういいだろう。
 司令室を探そう。
 ジュン達も探している筈だ」
「解った!」
2人は並んで走り始めた。

司令室に行くまで、敵兵はわらわらと現われ出て来た。
しかし、2人の敵ではない。
闘っている最中に、講堂が爆発した。
そこから逃げ出して来た敵兵が2人の後方から迫っている。
「挟み撃ちだな…」
ジョーが呟いたが、恐れてはいない。
「健、後方の敵は俺に任せろ」
「解った!」
2人は背中合わせになった。
お互いの背中を守る格好だ。
安心して背中を任せられる相手である。
それだけ互いの力量を認め合い、信頼していた。
司令室での事を考えると此処で体力を使いたくなかったが、人海戦術で来られてはそうも行かない。
ジョーはジャンプして、敵兵の渦の中へと飛び込んだ。
長い脚で敵を足払いし、その隙に羽根手裏剣を浴びせて行く。
敵兵の意表を突く場所へと素早く現われては、肘鉄やパンチ、キックを与える。
それが悉く重い。
敵が受けるダメージは相当なものだった。
また、ジョーは人体の急所を知り尽くしている。
その為、より効果的に敵を倒す事が出来るのだ。
今、鳩尾に重いパンチを浴びた敵兵がジョーの眼の前で崩れ落ちた。
健も同様に敵兵を倒して、再び2人は横に並んだ。
「行くぜ、ジョー」
「おう」
2人は通路を先へと進んで行った。
途中で別の通路からジュンと甚平が現われた。
通路が合流する地点だったのだ。
「どうやら司令室はこの先のようだな」
健が呟いた。
「行こうぜ。こんな処にのんびりしているより、南部博士がどうなっているかが心配だ」
「ジョーの言う通りだ。
 早い処、片付けよう」
健は唇をキッと結んだ。
全員が決意を新たに、走り始めた。
敵兵は相変わらず溢れるように現われて来る。
しかし、こちらの人数は倍増した。
4人が自由に闘った。
怖いものなどなかった。
敵兵は恐れ慄き、信じられないと言った顔をして通路へと倒れて行った。
「科学忍者隊を舐めるからだぜ」
ジョーが捨て台詞を残して科学忍者隊は走り去った。
通路の先に自動扉が見えて来た。
「敵兵の出入りが激しい。
 あそこが司令室だろう」
健が言った。
「そうだな。どうせカッツェはいねぇ。
 さっさとやっちまおうぜ」
ジョーは逸る気持ちを抑えられなかった。
ギャラクターの基地を1つ1つ叩き潰して行く事が、奴らの壊滅に繋がって行くのだと信じている。
ギャラクターは次から次へと秘密基地を作り出しているが、そうだとしても、限界はある筈だ。
いつかはイタチごっこも終わる。
その日が遠くないと思いたい。
ギャラクターの本部を見つけ出し、壊滅させる日も必ずやって来る。
いつもいの一番に敵兵の中に飛び込んで行くジョーは、そう考えていた。
だからこそ、敵兵1人1人を倒す事を急ぐのだ。
役立たずであっても、1人でも多く倒す方がいい。
ギャラクターの戦力は少しでも削いでおかなければならないからだ。
愚かな組織に入ってしまった敵兵に同情などしない。
やっている事は卑劣極まりない。
「よし、飛び込むぞ。
 みんな、覚悟はいいな?!」
健が全員の眼を見た。
「勿論だとも」
今回は妙に張り切っている甚平が答えた。
特に理由などないのだろう。
体力と気力が充実しているに違いない。
健を先頭に司令室の扉を抜けた。
今回は自信ありげに自動扉になっている。
そこに異常を感じるべきだったかもしれない。
「待て!罠かもしれねぇ。みんな気をつけろ!」
ジョーが叫んだ。
「油断のならない小僧どもだ」
低い声が頭上から聴こえた。
シャンデリアの上に何かいる。
それは鳩のような面を被った隊長だった。
「また、新たな敵さんのお出ましか…」
ジョーが敵愾心を剥き出しにして、呟いた。




inserted by FC2 system