『装甲車型メカ鉄獣(1)』

ジョーは今日も南部博士を公用車で別荘に送り届ける任務をしていた。
ギャラクターは卑劣にも博士まで狙って来るようになっている。
科学忍者隊の頭脳とも言うべき人物だ。
潰しておけば、科学忍者隊の力も半減すると思っているに違いない。
ジョーにはそれが許せなかった。
科学忍者隊の力を見くびられている事ではなく、博士の生命を狙われている事に対してだ。
博士は国際科学技術庁の宝とも言える人物だ。
絶対にギャラクターの手に掛けては行けない。
ジョーの力も自然と入った。
本当ならこのような公用車ではなく、G−2号機で護衛したい処だ。
しかし、レース用に改造したストックカーに南部博士を乗せる訳にも行かない。
行った先で礼を失するからだ。
仕方なく、ジョーは黒塗りの公用車を運転している。
今日もギャラクターが現われるような予感がしてならなかった。
「ジョー、どうした?今日は険しい表情だな」
南部博士が言った。
「ええ。何だか嫌な予感がしてならないんです。
 俺の勘は当たるんですよ」
「健から聴いている。
 ギャラクターが襲って来ると言うのかね?」
「その可能性はあります。
 勿論杞憂に終わればそれに越した事はないですけどね」
「その通りだな、ジョー」
南部博士は持っていた資料に眼を落とした。
「今日も仕事を持ち帰り、ですか?」
「うむ。どうしても会議で結論が出なかった事があってね」
「少しは休んで下さいよ。
 俺達全員心配しています」
「有難う。休むように心掛けよう」
「そうして下さい」
ジョーはそう言いながら、後方に目線を走らせていた。
「やっばり来ましたね。
 シートベルトを発動しますよ」
「解った」
南部博士の身体はジョーがボタンを押した事で、シートベルトに固定された。
「身を低くして、銃弾に気をつけて下さい。
 防弾ガラス位は、破って来るかもしれません」
「うむ」
南部は言われたように、身体を2つに折り、外から姿が見えないようにした。
ジョーが急にステアリングを切った。
どうやら車が尾けて来ているようだ。
「装甲車で来るとは、大胆な奴らだ」
ジョーの言葉に南部は肝を冷やした。
自分1人を殺す為に、装甲車を寄越すとは…。
「博士。山間に入ります」
「そうしてくれたまえ。
 此処では被害が大きくなる」
一般車が走っているこんな中を装甲車が走って来るとは驚きだった。
路面にはヒビが入っている。
それ程に重い装甲車なのだ。
「健!装甲車に襲われている。
 援護を頼む!」
さすがのジョーも、仲間達を呼ばずにはいられなかった。
こんな公用車では後部から追突されただけで、一溜りもない。
「待てよ……。
 こいつは装甲車型のメカ鉄獣では?」
ジョーが呟いたのを聴いて、南部博士が頭を上げて振り返った。
「どうやらそうらしいな」
「竜!装甲車はメカ鉄獣だ!
 俺のG−2号機を積んで来てくれ」
『解った!おらに任せとけ』
竜の明快な答えが帰って来た。
「博士。ゴッドフェニックスが来たら、この車は捨てましょう」
「うむ。仕方がないな」
「装甲車では俺にも攻撃を避ける位しか出来ませんよ」
「解っている。
 それは無理な相談だ。
 ギャラクターめ、何を企んでおる?」
「俺達を踏み潰した後、そのまま街を破壊するつもりなのでは?
 つまり、行き掛けの駄賃って事ですよ」
ジョーは激しくステアリングを切りながら、そう言った。
装甲車の全面には対戦車砲がある。
そんな物を撃たれては、公用車では一溜りもないが、敵は撃つ気満々で狙って来ていた。
ジョーはそれを素早く察知しては、公用車を蛇行させて、間一髪爆発から逃れていた。
「健達が来るまでは、弾切れを待つしか道はありません」
「恐らくは中に弾丸の倉庫がある。
 弾切れは有り得ないだろう。
 少しの間は出来る事があるかもしれんがな」
「そうですね……」
南部の言葉に納得したジョーであったが、今は一瞬たりとも気が抜けなかった。
ゴッドフェニックスの勇姿が空に見えて来た。
ジョーが居なくても、G−2号機を格納しているので、バードミサイルは使えた。
健がバードミサイルで敵の装甲車型メカ鉄獣を牽制している間に、ジョーは変身を遂げて、南部博士を抱え、トップドームへと跳躍した。
竜がすかさず低空飛行してくれたので、無事にコックピットへ到着する事が出来た。
「ふう〜。助かったぜ。間一髪だった…」
ジョーは額に汗を滲ませていた。
「ジョー、一旦上空へ離れるぞ」
健がそう言い、竜が操縦桿を操作した。
「奴ら、どこに行くつもりなのかな?」
甚平が呟いた。
「どうやら飛べねぇらしいな…」
ジョーは装甲車の姿を上空からじっくりと見た。
砲門は左右に4つずつある。
そして、何より先端の対戦車砲が、問題だった。
自由に動かす事が出来る。
「あの対戦車砲の射程距離が問題だな」
ジョーの言葉に健が頷いた。
「ああ、だから一旦上空に逃れたんだ」
「奴ら、このまま行くと、国際科学技術庁の第四ウラン貯蔵庫の方面に向かってねぇか?」
ジョーが緊張した声で言った。
「やっぱりだ。南部博士を襲ったのは、たまたまウラン貯蔵庫を襲いに行く時に、姿を見たからだな」
ジョーは悔しげに健の座席を叩いた。
自分には成す術もなかった。
仕方のない事だが、公用車ではどうにもならなかった。
「ジョー、あの公用車で良く無事に切り抜けたな」
健が感嘆した。
それ程に装甲車の威力は凄まじかった。
「あの対戦車砲が気になって仕方がねぇ。
 実際に攻撃を受けたが、爆発の規模が半端じゃねぇぞ。
 ウラン貯蔵庫を襲って、ウランを爆発させるつもりか?」
「今日、私が会議をしていたのは、その第四ウラン貯蔵庫のウランを平和的に利用する為の会議だった。
 ギャラクターはそれを嗅ぎつけたのかもしれん」
「また邪魔しようと言うのか。相変わらず汚い連中だ」
健が呟いた。
「これからどうするんじゃい?」
上空から装甲車型メカ鉄獣を追いながら、竜が訊いた。
「勿論、追って行って阻止しなければならない」
健が当然のように答えた。




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