『装甲車型メカ鉄獣(2)』

ゴッドフェニックスは街を破壊しながら進む装甲車型メカ鉄獣を追い、空を滑空した。
「くそぅ。ビルに乗り上げて潰していやがる!」
ジョーが歯軋りをしそうな表情になった。
「バードミサイルを撃ち込んでやるっ!」
ジョーは赤いボタンの前に進み出たが、健に止められる前に躊躇した。
「駄目だ…。逃げ惑う街の人々を巻き込んぢまう」
「ジョーもあれを見てさすがに冷静さを取り戻したな」
健が言った。
「俺達には何も出来ねぇって事か…」
ジョーは歯噛みをするように悔しがった。
「街中ではなく、どこか人気のない処に誘い込むしかあるまい」
健が腕を組んだ。
それを南部博士はじっと見ている。
科学忍者隊の知恵を信頼しているのだ。
「これからウラン貯蔵庫を襲おうとしている処で、ゴッドフェニックスの誘いに乗って来ると思うか?」
ジョーが訊いた。
「解らん。でもやってみる価値はあるだろう」
「そうだな…。やらない手はねぇな」
「竜、敵を煽るんだ。
 出来るだけ低空飛行してな」
「解った!任せとけ!」
「博士、シートに座ってベルトを締めていて下さい」
健はそんな処に気を遣う程、冷静だった。
「解った。私の事を気遣う必要はない。
 普段通りにやってくれたまえ」
「ラジャー」
博士はジュンが導いて、彼女が普段座っている席へと座った。
ゴッドフェニックスは反転を繰り返しながら、アクロバティックに操縦がなされた。
科学忍者隊は慣れているので、立ったままでも平気でいる。
だが、博士は大丈夫か?
ジョーは少し気になった。
普段、ジョーの護衛で乱暴な運転には慣れているが、飛行物体でこう言った経験はないに違いない。
博士の様子をチラリと見たが、顔色を悪くしている様子はない。
ジョーはさすがだ、と思った。
まさか、南部博士が若い頃、健の父親・鷲尾健太郎の操縦による飛行機に乗り慣れているとまでは、彼の知る処ではなかったからだ。
まだ彼らが生まれるか生まれないかの頃の話だった。
「乗って来たぞい」
竜の声が上がった。
「よし、10時の方向の山脈に突っ込むようにして、敵を引き付けろ」
「解った!」
竜が操縦桿を操作した。
ゴッドフェニックスは低空飛行と反転を繰り返して、敵を見事に思った場所へと誘い出していた。
「ジョー。あの先端の砲門を狙うんだ」
健がジョーに命令した。
「解ってる。やってやろうじゃねぇか」
「頼むぞ。あれが最大の武器だ。
 破壊すれば、少なくともウラン貯蔵庫への攻撃を中止せざるを得ない筈だ」
「ああ、引き付けて確実に狙ってやるぜ」
ジョーは自信満々だった。
健も彼に任せておけば大丈夫だ、と言う安心感を持っていた。
何しろ射撃の名人なのだ。
問題はバードミサイルが通用するか、と言う事だった。
「ジョー、あの装甲をバードミサイルで破れると思うか?」
健は訊いてみた。
「いや、1発や2発じゃ無理だろうぜ。
 いざと言う時に役に立たねえバードミサイルだからな」
「ジョー!」
南部博士がいる事に気を遣って、ジュンが窘めた。
「だが、事実だろ?
 あの装甲はバードミサイルでは破れねぇと踏んでいる。
 砲門だけは何発でも喰らわせて破壊して見せる」
「出来るか?ジョー」
「バードミサイルに訊いてくれ」
ジョーは赤いボタンに指を掛けて、構えた。
タイミングを計る。
「竜、横っ腹から突っ込んでくれ」
「解った!」
竜は旋回して、ゴッドフェニックスを敵のメカ鉄獣の横側へと回した。
「行くぜ!」
ジョーは的を見極めて、バードミサイルのボタンを押した。
彼が狙っているのは、砲門の根元だ。
連続してボタンを押す。
南部博士も止めはしなかった。
もう何時の間にか科学忍者隊の独断でバードミサイルを撃てるようになっている。
「やはり何発もぶち込まなきゃ駄目だ」
ジョーは額に汗を滲ませながら、ボタンを押し続けた。
「早く壊れてくれねぇとこっちが弾切れになるぜっ!」
ジョーが悲鳴のような声を上げた時に、敵の砲門が大爆発を起こした。
砲門にあった弾がついでに暴発してくれたのだろう。
「やった!少なくとも最大の攻撃拠点を破壊したぜ。
 左右の砲門も狙い撃ちするか?」
このメカ鉄獣には、左右に4門ずつの砲門がある。
「いや、敵を見ろ。方向転換している。
 様子を見るんだ」
健が言った。
「どうやらウラン貯蔵庫の攻撃を諦めたか?」
ジョーが呟いた。
「だが、今度はきっと砲門を強化して再びやって来るぜ」
ジョーは不安を口にした。
「そうだろうな……」
「こっちも何か策を考えなければならねぇだろうぜ。
 だが、その前に奴を追い掛けて基地を突き止めよう」
ジョーは積極的だった。
「竜、上昇しろ。空から敵を追おう」
「ラジャー」
ゴッドフェニックスは追跡を諦めたかのように見せ掛けて、上昇した。
「一旦基地を突き止めたら、三日月基地に帰ろう。
 南部博士をゴッドフェニックスに残しておくのは危険過ぎる」
健が熟慮の末、そう言った。
「そうね。私も賛成よ」
ジュンもそれに同意した。
「だが、敵にメカ鉄獣を修理する時間を与える事になるぜ」
ジョーが言った。
「此処は甚平に働いて貰って、博士を基地に送り届けたらどうだ?
 勿論、敵の基地を発見してからだがな」
ジョーは名案を提示した。
「そうだな。それはいい。
 甚平、頼んだぞ」
「ええ?おいらは戦線離脱かい?」
甚平は不満そうだったが、メカの機能を考えると彼が適任なのは明白だった。
「甚平。私は基地に帰って、敵のメカ鉄獣の弱点を探ったり、ウラン貯蔵庫側の対策を練らねばならない。
 すまんが、やってくれるか?」
南部博士が甚平に向けて言った。
さすがは博士だ、と健とジョーは思った。
納得が行くように説得するのが上手かった。
「解りました、博士」
甚平は力強く頷いた。
「竜、敵を見失うなよ」
健が竜に振り返った。
「大丈夫よ。私もレーダーを追っているわ」
ジュンが言った。




inserted by FC2 system