『装甲車型メカ鉄獣(4)』

「私はウランがその砲弾に使われているものと考えている」
基地に帰還して、砲門の写真を見せると、南部博士はそう一言呟いた。
「だから、ウラン貯蔵庫を狙っていると?」
健が訊いた。
「その通りだ」
「ジョー、どう思う?」
健はそのままジョーの方を振り返った。
ジョーは砲台の写真を凝視していた。
「そりゃあ、可能性としては否定出来ねぇ。
 俺が気になるのは、此処だ」
ジョーはスクリーンの前に出て、砲台の発射口を指さした。
「発射口の縁の内側、ギリギリの処に何かギザギザとしている物がある。
 こんな物を取り付けたら、砲弾は発射する前に砕けちまう」
「うむ。確かにジョーが指摘する通りだ。
 これはおかしい」
南部博士も腕を組んで考え込んだ。
「砲弾自体に何か細工があるんですかね?」
ジョーが言った。
「このギザギザがある事で、例えば砲弾を散弾銃のように使えるとか……」
ジョーは思いついた事を言った。
「それだ!ジョー、それだぞ。
 だとすれば、射程距離はそれ程ない筈だ。
 近くでないと、すぐに爆発するからな」
博士が手を叩いた。
「何の為にそんな事を?
 それもウランが使われているかもしれないと言うのに」
健が呟くように言った。
「ゴッドフェニックス対策だろう。
 近場にゴッドフェニックスを引き寄せる物が仕掛けられているのかもしれねぇ。
 例えば激しい磁場とかな」
ジョーは腕を組んで、指をとんとんと動かした。
苛々しているのだ。
こんな恐ろしい事をしやがって!
その為にどれだけの街が犠牲になったと思ってるんだ?
ジョーの怒りは既にMAXまで達していた。
況してや行き掛けの駄賃に南部博士まで襲ったのだ。
「全く馬鹿にしてやがる」
「しかし、どうやってそれを防ぐのかが問題だ」
健が尤もな事を言った。
「磁場を作ろうとしているのであれば、それを防ぐ方法はある。
 だが、ゴッドフェニックスを使わないであの場所に辿り着くのが一番安全な方法だと言える」
南部博士がそう言った。
「歩いて行くんかいのう?」
竜が不服そうに呟いた。
「でも、確かにそれが一番安全よ」
ジュンは納得が行ったと言う顔になっている。
「俺もそう思う。敵の基地の場所はもう解っている。
 ある程度の場所までゴッドフェニックスで行って、後はレーダーに掛からないように歩いて忍び込む」
健が決意を込めた顔で言い切った。
「俺も賛成だな」
ジョーが言った。
「あの砲門を破壊してやりてぇ処だが、中からやった方がいい。
 それに行くのなら早く行かねぇと、メカ鉄獣の方を修理されちまうぜ。
 それも機能を強化されかねねぇ」
「確かにそれは言えている」
健も頷いた。
「では、諸君。気を付けて出動してくれたまえ」
「ラジャー」
全員がポーズを取って、それに答えた。

ゴッドフェニックスは、氷の地域にギリギリ入る前の地点に着陸した。
「おら、留守番かいのう?」
竜は留守番を希望する、とばかりに言ったが、健は、
「全員で出動する」
と答えた。
期待外れの答えが返って来た格好だが、竜も渋々ゴッドフェニックスから降りた。
「気付かれるなよ。これからこの氷上を走って、あの基地まで辿り着く」
健が全員の顔を見た。
「あの砲台があった氷山の位置は解っている。
 砲門の出て来る隙間から入り込む事が出来るに違いない」
健は言った。
「ああ、やってやろうぜ。俺はあの砲門を何とかしてぇ。
 百害あって一利なしだからな」
ジョーが憎々しげに呟いた。
「どうやって潰すつもりだ?」
走りながら健が訊いた。
「あの砲台は、何発か撃ったら自然に破壊するだろうぜ」
「だが、ウランの砲弾を撃たせる訳には行かないぞ」
「解ってるって!砲弾を抜いた上で、爆破してやるしかねぇだろう」
「ジョーが解っていて良かったよ」
「馬鹿にしてやがるのか?」
健とジョーは軽口を叩いていた。
まだ余裕がある。
走っている内にやがて例の氷山が見えて来た。
「あれだな」
健が呟いた。
「行こう。みんな、気を付けろ。
 万が一気付かれたら、機銃掃射ぐらいでは済まないだろう」
「あの砲台でも解るように、鉄壁の守りを誇っているようだからな」
ジョーも言った。
そう言いながら、双眼鏡を覗いた。
「カメラなどはパッと見では見当たらねぇが、どこに隠してあるかは解らねぇぜ」
「とにかく行くぞ」
「ラジャー」
ジョーは邪魔になる双眼鏡を氷の岩山に置いて、突入に備えた。
氷山の麓まで無事にやって来た。
「地割れに気を付けろ。氷山は移動するかもしれない」
健が注意を促す。
「あそこから入れるな」
近くで見ると、砲門のある処をカモフラージュしている氷の岩の間に隙間がある事が良く解る。
「竜、あそこに入れるかい?」
甚平が揶揄するように言った。
「やってみなけりゃ解らんわい」
竜は少し苛々したかのように言った。
此処まで来るのに、決して疲れた訳ではない。
彼も科学忍者隊だ。
ただ、確かにその隙間は彼の身体には狭い可能性があった。
竜はその事を言わずに、何とか入り込もうと決意していた。
健が一番に氷山に登り始めた。
ジョー、ジュン、甚平、竜の順で続く。
目前で見ると、氷の岩は浮いているかのように隙間だらけだった。
健が中を覗くと警備兵はエスキモーが着るようなコートを羽織っていた。
基地の中は暖房が効いているのだろうが、この場所だけはどうにもならないのだろう。
下手に暖め過ぎれば、氷山の鎧が溶け出してしまう。
健は反対側に回ったジョーに目配せをした。
ジョーは頷いた。
2人同時に隙間から中へと飛び込んだ。
仲間達も後に続く。
どうやら竜もお腹を引っ込めて無事に入り込む事が出来たようだ。
エスキモーのような敵がマシンガンを撃ち放ち始めた。
科学忍者隊の5人は素早く散った。
こんなマシンガンにやられる彼らではない。
ジョーはチラッと砲台の内側を確認した。
砲弾は人力で入れるようになっていた。
これなら素早い連射は出来ない。
だから、連射すれば爆発するような砲台でも良かったのかもしれない。
これでゴッドフェニックスを狙おうとは大胆な奴らだ。
ジョーはそう思ったが、今は戦闘に専念する事にした。
敵兵がわらわらと現われていた。




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