『装甲車型メカ鉄獣(5)』

砲門を隠す為の隙間から入り込んだ科学忍者隊は早速敵兵のマシンガンの咆哮に迎えられた。
ジョーは右腕で敵兵の首を引っ掛けながら力尽くで走った。
巻き込まれた敵は、そのままズルズルと引き摺られて倒れ込んで行く。
彼の膂力は相変わらず大した物だ。
そのまま回転して、ジョーは長い脚で敵兵を総ざらいした。
彼の周辺でバタバタと人が倒れる音がした。
綺麗な円を描いたかのように、そこには人が居なくなった。
羽根手裏剣の鋒(きっさき)を使って、敵兵のマスクを破って行く。
敵は何が起こったのか解らないまま、鼻血を出して気絶している。
ジョーの動きは生き生きとしていた。
闘いの中でこそ、自分の生きる意味がある。
彼はそう思っていた。
ギャラクターに両親の復讐を誓った身だ。
生命を賭けて、敵と闘い抜く。
そして、いつの日か、ベルク・カッツェを斃すのだ。
彼の悲願が達成される日はいつになる事か。
それさえ叶えばこの生命、捨てても構わねぇ。
彼はいつだってその覚悟を胸に闘いに挑んでいた。
だが、無駄死にはしたくない。
どうせならカッツェを斃して死ぬ事だけを考えていた。
生きて帰れるのなら、尚更それに越した事はないが、カッツェと総裁Xはそれ程甘くない、と彼は見ていた。
しかし、雑魚兵相手に遅れを取る事はなかった。
問題なのはチーフや隊長だ。
おかしな仕掛けをしている輩が多い。
それを倒すのに時間を要したりすると、装甲車型メカ鉄獣の修理の時間を与えてしまう事になる。
あの前方にあった砲門をパワーアップされては敵わない。
それは科学忍者隊全員の思いでもあった。
素早く事を済ませなければならないのだ。
「ジュンと竜は装甲車型メカ鉄獣を探して、爆破してくれ」
「ラジャー」
健の指示に2人が動いた。
2人の影が消えて、科学忍者隊は3人になった。
健とジョー、そして甚平。
この3人で攻めて行く。
健はジョーの実力を認めている。
ジョーも健には背中を預けられると信頼している。
甚平は小さいが頭の回る子だ。
機転が利く。
動きもすばしこいし、小さいなりに役に立っている。
大人顔負けの働きをするのだ。
ギャラクターの雑魚兵など、甚平にとっては大した相手ではなかった。
身体の大きさで苦戦する事は稀にあったが、捕まりさえしなければ大丈夫だ。
3人は先を切り拓きながら、闘いを進めて行った。
ジョーはジャンプをして、敵兵の中に突っ込んで行く。
エアガンが尖兵だ。
三日月型キットを繰り出して、敵の後頭部に当てて行った。
「うぎゃあ!」
悲鳴が上がって、敵兵が倒れて行く。
そのまま別の方向へとエアガンを向け、マシンガンで健を狙っている連中に向け、同じように三日月型キットでタタタタタっと小気味良いリズムで顎を砕いて行った。
三日月型キットを戻している間に、羽根手裏剣がピシュっと音を立てて舞う。
狙い違わず、敵兵の手の甲や喉笛にヒットして行く。
取り落とされたマシンガンが暴発して、更に敵兵が巻き込まれるのはいつもの事だった。
ジョーは自分が巻き込まれないように計算して、立ち位置を計っている。
「馬鹿な奴らだ」
思わず呟く程、自分達のマシンガンでの被害が続出した。
勝手に撃たれて倒れて行く分には、どんどんやってくれ、と言う感じだ。
ジョーは長い脚を振り子のようにして、勢いを付け、バレエダンサーのように華麗に回転した。
上から見るとマントが拡がって、弧を描いている。
そのマントの拡がりの下で、また敵兵がバタバタと倒れて行った。
ジョーの働きは留まる事を知らない。
エアガンや羽根手裏剣を見事に無駄なく使って、敵を倒して行く。
その肉体もまた武器その物だ。
長い手足が華麗に舞う。
ジョーはジャンプをして、離れた場所にいた敵兵の鳩尾に膝蹴りを喰らわせた。
そして着地をして、また身体を回転させる。
その勢いで彼の脚に倒されて行く敵達は、成す術もなく、床へと倒れ込んで行くしかなかった。
「ジョー、甚平、先へ進むぞ」
健の声がした。
「おうっ!」
「合点だいっ」
2人が健に応じて、敵兵を切り拓きながら、通路を前へと進んだ。
司令室か機関室、電力室を破壊したい処だ。
果たしてこの基地にはカッツェがいるのか。
その点も気になる処だ。
3人が進んで行くと、通路の左側に扉が見えた。
ジョーがエアガンを抜いて、体当たりをして転がり込む。
「機関室だな…」
「よし、甚平。爆弾を仕掛けてから俺達に着いて来い」
健が命令した。
甚平はジュンと一緒に行動する事が多いせいか、爆弾の扱いにも結構長けている。
この命令は適材適所と言う処だ。
「あいよ」
甚平も不平を言う事なく、軽く請け合った。
「おいら、すぐに追い付くよ」
ブーツの踵から爆弾を取り出して、彼はそう言った。
その時には健とジョーはもう風のように走り去っていた。
「兄貴もジョーの兄貴も、せっかちだねぇ…」
甚平は独り言を言いながら、爆弾の設置を始めた。

「ジョー。何としても司令室を見つけ出そう。
 あの巨大な砲門も気になるが、ゴッドフェニックスが現われない限りは、動く事はあるまい」
「まあ、そうだとは思うがな。
 国連軍でも来ねぇ限りは大丈夫に違いねぇ」
「国連軍に出動を要請したりする事はないだろう」
「奴らが街で悪さをしていなければ、な」
ジョーは未だにジュン達から装甲車型メカ鉄獣発見の知らせがない事を気にしていた。
「まさか、もう強化が済んで、基地の外に出ていなけりゃいいんだがな」
「成る程。確かにそれも考えられるな。
 まだジュンと竜はメカ鉄獣を発見出来ていない」
「そうではねぇ事を祈るぜ。
 あの破壊力は半端じゃねぇからな。
 また街に出てウラン貯蔵庫を狙っているとなると、こんな基地で闘っている場合じゃなくなるぜ」
「だが、まだ博士からは何も連絡がない。
 今の処は大丈夫だろう」
「そうだといいんだが……」
「……また、お前の嫌な勘か?」
「そんな処だ」
ジョーはそれっきり口を噤んだ。
嫌な予感が当たらない事を祈りたい。
もし、既に敵のメカ鉄獣がこの基地にいないとなったら、ゴッドフェニックスに取って返して、追わなければならない。
そして、強化されたと見られるあの先端の砲門と再び相対さなければならないと言う事になる。
今度は簡単には行かないだろう。
バードミサイルでは、無理がある。
南部博士が何か開発してくれていればいいが…。
健とジョーは顔を見合わせた。




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